農業協同組合新聞 JACOM
   
農政.農協ニュース

厳しい環境下でも堅実な経営内容を示す
JA共済連15年度決算 (7/30)


◆堅調に推移した事業推進 LA実績が50%を超える

 総代会で承認された15年度の決算の主な内容をみると、まず、事業推進については既に報じたが、改めて特徴的なことを列挙すると次のような内容となる。
 新契約高は、長期共済が6年連続、年金共済が4年連続して事業量目標を達成し、短期共済もほぼ前年並みの水準を確保し、堅調に推移した。表は、主要生保会社9社とJA共済の15年度業績を比較したものだが、新契約高は、少子高齢化の影響や死亡保障市場の縮小などによって生保9社中6社が前年度よりも2桁の減少。9社合計で20.4%の減少となり、前年度末の6.6%減を大きく上回る減少となっている。
 とくに、朝日の55.5%減を筆頭に、三井、日本、住友の各社が20%以上の減となっている。そのため朝日は解約・失効率が改善されたにもかかわらず保有契約高が10.9%減少。日本も解約・失効率増、新契約高減という悪いパターンで保有契約を5.6%減少させるなど、株価の回復などによって財務面での健全化が進んでいるのに、本業での苦戦が続いている。
 こうした中でJA共済は、新契約高を前年度より0.2%減に止めており、善戦したといえるだろう。また、「ひと・いえ・くるま」の生活総合保障の確立をめざして14年4月から導入した「JA共済しあわせ夢くらぶ」の登録が764万件にのぼったこと。長期共済新契約高に占めるLAの実績が前年度よりも4.9%アップの53.9%と、初めて50%を超え、提案・相談型推進がJA共済の普及推進の太宗となるなど、ここ数年進めてきた方向が定着してきているといえる。

JA共済と主要生保9社の平成15年度業績概況

◆保有契約減少にどう歯止めをかけるか

 また、解約・失効率(表の計算方法は決算書とは異なる<表の注)・3参照>)も前年度より改善されているが、長期共済の保有契約高は、前年度より7兆円強の1.9%減となっている。これは生命共済の満期が1兆7695億円あり、生命共済の保有契約高が3.6%減少したことが大きな要因だといえる。生保各社に比べて減少幅は小さく、保有契約高の水準は依然として高いが、保有契約高の減少はJAの付加収入の減少となりJA経営に大きな影響を与えることになる。
 全国を詳細に見れば、保有契約を純増させている県やJAもある。満期対策や次世代対策、あるいは早期解約をなくすための対策などをしっかりとたて、「保有を減らさない」ための戦略・戦術を各JAがそれぞれの実情に合わせて早急に確立する必要があるのではないだろうか。

◆経営の健全性を示す各種指標

 財務面では、総資産が前年度より2.9%増加して42兆1410億円となった。
 有価証券売却損益などを除いた共済事業本来の期間損益を示す指標である基礎利益は、費差益1801億円、利差損5824億円、危険差益8167億円、合計4143億円となった。前年度より10.7%の減となるが、これは保有契約の減少と事故共済金の増加によって、費差益・危険差益が減少したことによる。いわゆる逆ザヤといわれる利差損は105億円と大幅に改善された。
 ちなみに、事故共済金が増加したのは、15年5月の三陸南地震(約65億円)、7月の宮城県北部地震(約197億円)、9月の平成15年十勝沖地震(31億円)などによって建更共済の事故共済金が前年度よりも約218億円増加しているためだといえる。
 時価評価した資産から異常危険準備金などみなし自己資本を除いた「実質純資産」は、金利上昇による債権評価益が減少したために前年度より1兆2100億円減少し、6兆1762億円となった。実質純資産はマイナスとなれば債務超過となり早期是正措置の判断要素となるように、経営の健全度をみる重要な指標だが、表のように総資産に占める比率も14.7%と、日本に次ぐ高い水準を確保し経営の健全性を維持している。
 生保各社の実質純資産が大きく改善されているが、これは前年度決算時に株価が急降下して大きく落ち込んだのが、株価が回復したことでほぼ13年度並みの水準に持ち直したためだといえる。生保各社は保有株を売却するなどしてリスクの低減化をはかっているが、株の含み損益がゼロになる株価水準は必ずしも下がっておらず「リスクの減少は限定的だ」という指摘もある。今後も生保各社は株価の動向に一喜一憂する体質が続くといえそうだ。

◆異常危険準備金の積み立てなどで支払余力829%に

 JA共済連は、利差損の拡大や巨大災害リスクなどに的確に対応し、経営の健全性を維持・向上させ、強固な経営基盤を確立するために次のような積み立てを行なった。一つは、予定利率リスクに備える「異常危険準備金」で1585億円の積み立てを新たに行なった。これによって同準備金の期末の残高は5045億円となった。もう一つは、巨大災害に対する支払担保力を確保するために、共済事故リスクに備える「異常危険準備金」1042億円を新たに積み立てた。これによって同準備金の期末残高は1兆6471億円となった。
 こうした異常危険準備金の積み立てによって、ソルベンシー・マージン総額が増加。さらに建更共済などにかかる海外再保険の回収範囲を拡大したことで巨大災害リスクが減少したことにより、支払余力(ソルベンシー・マージン)比率が前年度より76.5%増加して829.5%とより高い水準を確保し、先にみた実質純資産と合わせて経営の健全性を示した。

   ×  ×  ×

 このように、事業推進面では連続して目標を達成、財務面では経営の健全性を示し「厳しい環境下にもかかわらずまずまずの決算」だといえる。しかし、保有契約高の減少など、今後のJA共済にとっての課題もまた明確になったともいえる。今後、上原新理事長の下で進められる3か年計画のスローガンである「絆の強化と仲間づくり」をどう実践し、次世代層を含めた利用者ニーズに応えていくかが大きなテーマとなるだろう。 (2004.8.3)



社団法人 農協協会
 
〒102-0071 東京都千代田区富士見1-7-5 共済ビル Tel. 03-3261-0051 Fax. 03-3261-9778 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。