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担い手限定の直接支払いを提言
−審議会が中間論点整理 (8/10)


 食料・農業・農村政策審議会は8月10日、審議会企画部会がまとめた新たな基本計画に向けた中間論点整理を了承した。担い手に政策を集中的に実施する政策への転換を打ち出し、品目別の経営安定対策から農業経営に着目した直接支払い制度の導入など提言した。具体的な施策づくりはこの秋以降に議論が本格化するが、担い手に施策を集中することで基本計画の見直しのもっとも中心的な柱である食料自給率問題に応えられるかどうかなど論点は多い。

■コメは対象外の直接支払い

あいさつする亀井農相
あいさつする亀井農相

 企画部会では、食料・農業・農村をめぐる情勢分析と(1)品目横断的な経営安定策、(2)担い手と農地制度のあり方、(3)農業環境・資源保全政策の確立をめぐって今年初めから15回の会合を開いてきた。8月6日に素案が提示され一部字句修正が加えられて審議会で了承された。
 中間論点整理では「担い手」を「効率的かつ安定的な農業経営及びこれをめざして経営改善に取り組む農業経営」と定義。認定農業者を基本とし、経理が一元化され将来法人化する計画を持っているなどの一定の条件を備えた集落営農も含めた。
 こうした担い手に限定して経営安定対策を実施。内容は複数の作物を組み合わせた水田作や畑作に経営全体に着目した品目横断的な政策の導入を提起した。施策の仕組みは(1)諸外国との生産条件格差の是正、と(2)収入・所得変動緩和対策の組み合わせだ
 生産条件是正格差対策の対象となる品目は現在、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ。これらの品目の過去の作付け面積に対して助成する。ただ、必要な生産量を確保するため生産量・品質に基づく支払いも加える。
 水田に作付けされている麦、大豆はこの制度の対象となるが、米は今のところ関税によって生産条件の格差が是正されていることから対象にならない。
 この生産条件格差是正対策を経営安定対策の柱にし、収入・所得変動緩和対策も導入する方向を示したが、導入の必要性は今後検証していくことになっている。
 また、同時に野菜、果樹、畜産なども対象経営を明確にした品目別対策となるよう検討することを提起している。

■環境政策で農家に規範求める

 中間論点整理では農地や農業用水など資源は「社会共通資本」だと定義し、その維持についての支援策が必要と新たな政策構築を提起した。
 ただ、資源保全活動について地域が最低限度取り組むべき規範を決め、地域住民も含めて取り組みに参加するなどの組織があり、さらに規範を超えるような取り組みがある場合を支援対象とするという考え方を示している。
 支援の対象には担い手以外の農家も含まれると考えられるが、支援する資源保全活動に高度な取り組みを求めるなど地域が限定される可能性もある。
 当初は、担い手に限定した経営安定対策を打ち出す代わりに、他方で担い手を支えるとともに地域の農業生産全体を下支えする施策としての位置づけで議論されてきたが、その点は不明確になった。
 また、日本の農業全体を環境保全重視に転換することを打ち出し、農業者が最低限取り組むべき規範を16年度中に策定、各種支援策を受ける要件として検討することを提言した。
 農地制度のあり方では(1)優良農地の確保、(2)農地の効率的な利用の確保を課題として掲げ、農水省に早急な検討を求めるにとどまった。株式会社一般の農地取得については、両論併記になっている。
 今後の議論は秋に再開されるが、最大の課題は自給率目標。6年連続カロリー自給率が40%の状況のなか、これから示される具体策が自給率を向上させるような日本の農業像となるのかどうかが問われる。

■思い切った転換を、宮田JA全中会長が談話

 中間論点整理を受けて、JA全中の宮田勇会長は「主要3課題について一定の方向性は打ち出しているものの、今後の検討にゆだねている点が多く、早急に施策の具体像を明確にしていく」必要があるとの談話を発表した。
 具体的には、「多様で幅広い担い手」を育成するため、担い手に対する農地の面的な利用集積を徹底できるよう農地制度を見直し、担い手の水田作・畑作経営に「日本型」の経営所得安定対策を導入し、担い手を支える取り組みに支援策を講ずること、を挙げた。
 また、今後は食料自給率目標や、水田農業への新たな作物の導入などが検討されるものと期待。WTOでは協定全体の合意が進むことも念頭に「これらに対応できる施策の展開と必要な予算の確保をはかるなど、生産者の不安を払しょくできる思い切った政策転換が必要である」と強調。
 さらにJAグループとしては「地域農業のビジョンづくりを基礎に、担い手の育成・確保や、農地を農地として利用する取り組みに全力をあげるなど、農政改革を自らの課題として受け止め」ていくとした。 (2004.8.11)



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