厚労省と農水省は10月15日、BSE検査の対象を21か月齢以上とすることなどの対策見直しを食品安全委員会に諮問した。
諮問は前日の自民党の了承を受けて行われたもの。自民党の動植物検疫及び消費安全に関する小委員会は12日に開かれたがその場では「なぜこの時期に見直すのか」、「安全よりも安心。消費者に不信が残るだけ」などの強い反対の声が相次いだが、再度開いた小委員会では現場の混乱を防ぐため、自主的に全頭検査を継続する自治体には、検査体制見直し後も3年間は経費を全額補助するなどの条件をつけて容認した。
また、生産者、消費者などに理解を得るため全都道府県とおもな産地でリスクコミュニケーションを行うことも政府に求めた。
食品安全委員会は諮問を受けてプリオン専門調査会で検討するが、自民党は答申を出す前に全都道府県といくつかの産地でのリスクコミュニケーションを行うことを求めている。また、かりに検査対象の見直しについて諮問どうりに答申されても、その後、省令の改正についても厚労、農水両省は国民の意見を聞くことにしており検査体制が変更されるのは早くても来年の春ごろになると見られている。
◆問われる食品安全委員会
国の補助を受けて多くの自治体が自主的な全頭検査体制を続けると考えられるため少なくとも3年間は検査済みの牛肉と無検査のものが混在して流通することは避けられることになる。
しかし、なぜこの時期に見直すのか。
小委員会で自民党の農林幹部が強調したのは、「食品安全委員会が科学的な根拠にもとづいて出した中間報告をないがしろにはできない」ということだった。
3年前のBSE発生で、消費者の信頼を取り戻すためには行政や政治が安全性を強調するのではなく、英国を参考に科学者による独立した機関を設置して判断することが必要との考えから食品安全委員会への発足へとつながった。こうした経過から、同委員会の判断を受け止めなければ「政府自体が食品安全委員会を信頼していないことになる」(野呂田芳成総合農政調査会長)と強調した。
また、米国産牛肉の輸入再開問題では「小泉首相は輸入再開を迫るブッシュ大統領に政治的ではなく科学的に検討すると回答した。科学者の知見に基づいて見直しをしなければ、日本こそ政治的に対応した、といわれることになる」(松岡利勝議員)との説明もあった。
しかし、食品安全委員会の中間報告は現在の日本のBSE対策についてのリスク評価を行うはずだが、結論には20か月齢以下からは感染牛が見つかっていないことや検出限界があることについて「今後のBSE対策に十分考慮されるべき」とリスク管理の方向を示すような記述がある。この点については中間報告をめぐるリスクコミュニケーションの場でもリスク評価する機関がなぜここまで踏み込むのかと批判が出た。
今回の政府の対応を米国産牛肉の輸入再開に向けた拙速な動きと批判している民主党「次の内閣」農水大臣の鮫島宗明氏は「食品安全委員会は行政主導の審議会化している。結局は死産だった。食品安全委員会の結論を科学的だというほうが政治的だ」と批判する。
松岡氏は食品安全委員会の機能についてどう評価しているかとの問いかけに「われわれには評価するデータがない。全幅の信頼をするしかない」と答えた。BSE検査体制に限らず、同委員会は食の安全に関わるさまざまな課題を検討している。同委員会の独立性も含め、その機能、役割について検証することも政治に問われている。
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