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農政.農協ニュース
全農に6度目の業務改善命令
子会社が偽装業者と取引 (10/23)

 鹿児島県鹿屋市の豚肉加工販売業(有)大隅産直センターが、カナダ産の黒豚肉を同県産と偽装表示していた事件にJA全農の子会社である(株)組合貿易(組貿)が関わっていたという疑惑について農水省は10月23日、組貿が直接関与していた事実は確認されなかった、との調査結果を発表した。
 鹿屋の業者代表は不正競争防止法違反と詐欺罪で7月に有罪判決を受けた。偽装の手口は、白地にカナダ国旗と黒豚の図柄を印刷した梱包から中身を取り出して、「産直かごしま豚」とか「おおすみ産直黒豚」などと記載した段ボール箱に詰め替える“ケース替え”だった。
 組貿は平成12年6月からスポット取引でカナダ産黒豚肉の輸入を始め、東京都内の中間業者(食肉商社)を経て鹿屋の業者に販売していた。鹿屋に届いた肉は、輸入梱包のままだったとの証言があり、組貿が詰め替えをしたなどとは考えられない。また業者代表は「偽装は自分でやった。中間業者と組貿は知らない」と証言している。
 農水省は▽業者代表と従業員が詰め替え作業をした▽その場所は鹿児島県内のと畜業者の敷地内や、貸倉庫など▽同県産の証明書や出荷シール、段ボール箱を偽造して使った、ことなどを確認した。
 全農は他の子会社の不祥事で13年4月から5度にわたり農協法にもとづく業務改善命令を農水省から受けている。同省は改善状況を監視する立場から、鹿屋の偽装事件が発覚したあと、7月14日から組貿の関与を調査し始めた。
 その結果、今回の調査に限っては、直接関与は確認されなかったものの▽組貿と鹿屋の業者と中間業者の間には一定の協力関係が認められる▽地元新聞の報道など業者の偽装を疑ってしかるべき客観的情勢があった▽にもかかわらず業者との取引を昨年3月まで3年半も続けたなどの問題点を指摘。
 改善命令で指示したコンプライアンス(法令順守)強化や、子会社管理の徹底が不十分であるとして、事実関係を確認の上、全農に対して6度目となる業務改善命令を出すことにした。
 調査では、組貿と中間業者を通じた鹿屋の業者との取引はカナダ産(1243トン)だけでなく、米国産黒豚肉(1413トン)でも行われていたとわかった。
 また組貿は11年7月から13年11月初旬まで金融取引の形で、自己資本の乏しい鹿屋の業者の資金繰りを助け、中間業者を含めた循環取引をしていた。同省は、これが結果的に偽装の拡大につながっていたと考えている。
 さらに組貿は鹿屋の業者をカナダの業者との取引に同行したりもしている。
 取引契約については社長決裁とすべきものを部長決裁で処理したり、必要な書類が保存されていないなどの事例もあった。
 全農は組貿から、輸入黒豚肉の在庫が膨張していると報告を受け、15年2月にカナダ産の輸入中止と在庫処分を指示し、組貿は約1億500万円の損害を出したが、全農は、これを同省に報告せず、3月に同省に提出した「事業総点検」結果でも触れていなかった。こうしたことから同省は(1)真相究明と責任の所在の明確化(2)組貿と全農の責任者への厳正な対処(3)再発防止の取り組みと、その徹底を求めて6度目の業務改善命令を発出する。

(2004.10.25)


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