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農業の将来像、共通認識が必要−基本計画見直しの議論がスタート (1/30)

 平成16年度末に新しい食料・農業・農村基本計画を策定するための本格的な議論が1月30日、食料・農業・農村政策審議会第3回企画部会で始まった。
 当日の会合では部会長に生源寺眞一東大大学院教授を互選し、農水省が基本計画見直しの方向について説明した後、意見交換した。
 安高澄夫JA遠賀郡組合長は、主要検討項目で「食料産業の持続的発展」とされていることについて、「基本法では『農業』の発展をうたっている。食料産業ではモノだけしか見ておらず、有機的な仕組みのなかで食料を作るという農業がみえない。政策がますます地域と人から離れていくのではないか」と指摘。「プロ農業経営」に施策を重点化する方針について「脇役がしっかりしていれば主役は育つ。主役だけでいいのか。また、支援策の対象にはハードルを設定するというが、ハードルの超え方を示すのが農政の役割ではないか」と強調した。
 農水省は「食料産業」について「農業と食品、流通産業を含めて総括したいい方。農を切り捨てているわけではない。脇役が必要との指摘はそのとおりで地域全体での農地など資源保全への取り組みへの支援策も提案している」と説明した。
 プロ農業経営に施策を集中することについては「支援が集中されたプロ農家どうしで競争が起きるかどうかが問題。(新たな施策によって)農業経営が安定するとそれを保護するだけにならないか」(安土敏・サミット最高顧問)との指摘もあった。
 株式会社の農業参入については構造改革特区でリース方式で農地貸付が認めれているが「農村には参入についてアレルギーがある。どういう現象が起きているか、検証が必要」(永石正泰福井県農林水産部経営支援領域総括参事)、「特区方式の全国展開には1、2年での検証は困難。慎重に検討すべき」(中村裕全国農業会議所専務)などの指摘が出た。
 農業の構造改革実現に向けては立花宏経団連常務理事が「農業後継者の実態を国民全体で共有することが健全な危機感となり改革のベースとなる」と後継者の実態を広く知らせることを提唱。また、海外との生産条件の格差を埋める直接支払いの導入を視野に政策転換を図ろうとしている方針について「一方で消費者は国際価格で食料を入手できるという方策を講ずることを示すことが必要。そうなれば国民全体で負担するという議論になる」と指摘した。
 米国でのBSE発生や鳥インフルエンザの発生を受けて消費者委員からは「輸入依存がいつまでも続くのか」と自給率向上が必要との意見もあった。

■集落営農をベースに改革を

 (社)日本農業法人協会顧問の坂本多旦・船方農場グループ代表は「地域農業の支援策は、必要な時にどう政策が打ち出せるかが課題」とし、また、農地制度の見直しについては「所有と利用の分離も検討すべき」と指摘した。
 JA全中の山田俊男専務は「わが国の農業は、どう工夫しても新大陸型の農業にはならない。農業の将来像をどう描くかの共通認識を持つべき」としたうえで、今回の改革の焦点は水田、土地利用型農業の改革にあると強調。「担い手は1集落にかろうじて1人という実態。主業農家でも農業でまともに生活できない。水田農業が小規模分散ほ場になっている現状をどう農地制度の見直しで解決するのか」とし、「農地を共同で集めて活用する集落営農をベース」にした農地の利用集積のあり方を検討すべきと問題を指摘。
 また農地取得については、多様な担い手確保の観点から規制緩和する方向が打ち出されているが、いわゆる「出口規制」で「農地が農地として利用できるのか」と疑問を示した。
 さらに検討課題として、水田で米以外の作物を定着させる所得保障も含めた政策が必要と指摘した。
 次回は2月12日に「品目横断的政策への転換」をテーマに開催される。 (2004.2.4)



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