農業協同組合新聞 JACOM
   

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JA山武郡市組合員の声を聞く
自民農政調査会が現地視察 (5/18)

 新たな「食料・農業・農村基本計画」策定に向けた与野党それぞれの検討が本格化する中で、自民党総合農政調査会の国会議員は精力的に全国各地の現地視察や生産者との意見交換を進めており、5月10日には千葉県の農家などを回ったあとJA山武郡市の本店で組合員らの意見を聞いた。千葉県の農業産出額は北海道に次いで全国2位、野菜に限れば日本一だ。そうした県内にあって、JA山武郡市は最初に「千葉エコ農産物」の販売を始めている。そこで、この地域の声を、環境保全型農業の問題を重点にピックアップしてみた。
「基本計画」見直しで自民党総合農政調査会が現地意見交換会(5月10日、千葉県のJA山武郡市本店) 山武郡意見交換会
「基本計画」見直しで自民党総合農政調査会が現地意見交換会(5月10日、千葉県のJA山武郡市本店)

■環境保全型農業の現状を語る

 「有機栽培、特別栽培は人件費がかかり過ぎる」、と問題点を挙げたのは同JA有機部会の綿貫直樹さん。「輪作体系による多品目栽培は大規模で効率的な作付体系がとりにくい。出荷量は慣行栽培の7割以下にとどまる。また有機肥料は土の管理がしにくく、作物育成のコントロールができないし、病害虫に対する手だても限られる」という。一方、利点もいくつか挙げながら農政への不満では「環境保全型農業に対しては規制や罰則のムチばかりでアメがない」と厳しかった。
 要望では▽環境保全型農業者の所得保障につながる直接支払い、▽所得控除などの優遇税制、▽一般消費者にわかりやすい有機栽培農産物(有機JAS)の広報活動、などを求めた。
 また農薬の原体名まで記載する特別栽培農産物のガイドラインは非現実的であり、栽培履歴JASも畜産ならよいが「農産物に取り入れるのはナンセンス」と批判。「何にでもJASをつけようとする安易な考え方とさえ思える」とした。

■消費者教育も大切

 女性の立場からは、ドイツの有機無農薬野菜農家で1年間研修してきた今関百合さんが「政府が『消費者に軸足を移した農政』をうたっても有機と減農薬の区別さえつかない消費者が多い中では、やはり生産者側からの提案が重要で、そのために資格試験の制度を設けるなどして農家の人材育成を図ってほしい。消費者教育も必要」と提起した。
 担い手づくりでは「新規就農を目ざす人が多いが、農地が借りられない。また就農しても技術力不足で普通の農家ならやらないような失敗もするから、地元農家との連携が大事。農家側には担い手を地域で育てていくという意識改革が求められる」と強調した。

■流通問題にも着目

 意見交換では生産者側数人が発言。流通関係では、小売店の過当競争による安売り合戦の問題検討を望む声もあった。一方、生活クラブ生協代表の発言もあり「株式会社が農業参入すればコスト重視で、安全が軽視されるのではないか」などの声が出た。
 これらの意見に対し自民党農林水産部会の岩永峯一部会長代理は「安全安心な農産物づくりに取り組んでいる現場の努力に見合う価格を保障するのは政治の役割」と述べ、同党基本政策小委員会の松下忠洋委員長は「きょうのご意見を今後の検討にしっかり組み入れていきたい。流通問題にも着目している」と語った。
 これよりさき冒頭のあいさつで同党総合農政調査会の谷津義男顧問(元農相)は「実効性のある新たな政策の確立」を強調した。 (2004.5.18)



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