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19年産から直接支払い導入
−亀井農相が改革基本構想示す (5/24)

 政府は5月24日、第3回食料・農業・農村政策推進本部を開き、亀井農相が基本計画の見直しのなかで政策全般を改革するとした「農政改革基本構想」(亀井構想)を説明、小泉首相をはじめ閣僚の了承を得た。
 同推進本部は基本計画見直しが始まった昨秋に政府全体としてこの問題に取り組むことや改革の基本的な方向を確認するために開催されたが、今回は食料・農業・農村政策審議会が中間論点取りまとめに向けて議論の整理を行う時期に来たため農相としての方針を示したもの。また、今年度予算や来年度以降の行財政改革についてのいわゆる゛骨太方針゛が決定されることもふまえ、農政改革の考え方が十分に反映されることも意図した。

■日本型直接支払いに異論出ず

 亀井構想の柱は(1)消費者が真に安心し納得できる食生活の実現、(2)食料自給率向上の前提となる人(農業経営)と資源(農地・農業用水など)の確保、(3)農業者・農村の創意工夫の発揮や挑戦を後押しする基盤づくりの3つ。改革の視点として強調しているのが「選択と集中」、「グローバル化のなかの農業・農政」だ。
 柱のうち(2)は、基本計画見直しの主要3課題の実現をめざすことを強調したもので、とくに「担い手」を対象にした品目横断的政策については、△構造改革の推進、△需要に応じた生産の確保、△経営規模拡大、などをふまえた「日本型直接支払い制度の導入」を検討すると説明した。
 直接支払い制度は、生産増加にならないよう過去の作付け面積に対して支払われるなど、いわゆる生産刺激的でない政策としてWTO協定では削減対象外の「緑」の政策と位置付けられている。
 日本も「緑」の政策に転換することをめざしているが、欧米では大規模経営が実現し、しかも生産過剰が貿易摩擦を生んだことから、生産増にリンクしないよう過去の作付け面積に対する直接支払いを導入した。
 しかし、わが国は食料自給率が低いことから生産振興が課題となっており、また、競争力をつけるため経営規模の拡大も求められている。こうしたことから、「緑」の政策に対応する政策体系に転換するといっても、欧米型の直接支払い制度をそのまま導入したのでは課題が解決しないことから日本型の方式を検討しなければならないことを表明したもの。生産刺激的ではない政策という「緑」の政策の考え方にどう対応するかが課題となる。
 推進本部の会合では他の閣僚から直接支払い導入についての異論はなかったという。

■今秋から具体的方式を議論

 基本構想は「守りの農業から攻めの農業」がキャッチフレーズ。輸出振興策などの力を入れる方針を明らかにしたほか、地域自らが取り組みを行っている例を「立ち上がる農山漁村」として支援していくことなども盛り込んだ。「立ち上がる農山漁村有識者会議」を6月中にも設置して具体的な事例の検討を行う。
 また、今回の基本構想では改革のスケジュールも明示したのが特徴。今後、可能な政策から実行に移し、17年度の概算要求に含る。さらに必要な法律改正については18年通常国会までに順次法案提出を行う方針を示した。農水省はこのスケジュールのもと「19年産の作物から直接支払い制度の導入に転換したい」としている。
 米改革では18年度までの3年間の実践を検証し、20年度または19年度に農業団体が主役となる需給調整システムに移行するとされているが、亀井構想では19年産から畑作だけでなく水田農業についても品目横断的な政策の導入を目ざしている。農水省では、「17年の畑作物価格交渉の議論では(直接支払い制度の)単価なども含めた合意がなければ関連法の改正案を18年通常国会に提出できない。そのためには今年秋の畑作物価格交渉で直接支払い導入に向けた議論をする必要がある」としている。 (2004.5.25)



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