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農林水産業のビジネスモデルづくり目指して「国民会議」設立 (6/7)

「農林水産業から日本を元気にする国民会議」設立総会

 「農林水産業から日本を元気にする国民会議」設立総会。左から榊原英資教授、宮沢元首相ら=6月1日、慶応大学・会議室

 新しいビジネスモデルを生み出すことなどを目的に「農林水産業から日本を元気にする国民会議」という集まりが6月1日、東京都内で旗揚げし「田園からの産業革命」をスローガンに掲げた。代表幹事は宮沢喜一元首相、共同代表幹事は井植敏・三洋電機会長と梶原拓・全国知事会会長(岐阜県知事)。幹事会は52人で企業トップが多い。農業界からは花元克巳JA全中副会長らが名をつらねた。
 設立総会では榊原英資・慶応大教授が「異なった立場の人が農業を論じていく風変わりな会議だが、合意できるところからサクセスストーリー(成功事例)をつくりたい」と説明。
 具体的な活動では▽先駆的な起業の資金と経営を支援する農林水産業投資ファンドの創設▽災害や市況、小規模輸出など農業リスクに対する安全網の構築▽生産、流通、販売、経営を総合的に調整し、支援する会社の創設(農業フランチャイズ・システム)▽アグリロボットの開発ーなどのテーマごとに15の作業チーム(ワークショップ)を設けて事業化を検討する。

■政策提言もめざす

 チームのメンバーは農業者や企業、団体から募集、大学も参加する。事業化は参加企業などが進める手法をとる。一方、これらの実現に必要な制度やインフラの見直しもやり、その結果をまとめて提言していくが、見直しのテーマには、農地利用や、協同組合と株式会社のあり方などがある。
 また投資ファンド創設のテーマ設定には、農林水産業向け融資の現状は農協系統と政府系の金融機関による実行が圧倒的で、新しい起業の資金確保が難しいという認識がある。
 国民会議の設立趣意書は▽農林水産業に技術と人材を集め、先進産業に育てよう▽農林水産業は競争原理の発想を当てはめることが必ずしも適切でない性格を持っている▽農業に係る補助金は3兆1000億円に上り、その多くが農業土木に使われている。これを農業に関する教育、ノウハウ習得にも使うような仕組み作りを目指す、などとなっている。
 宮沢元総理は設立総会とその後の会見で「日本の農林水産業は自立した産業になっていない。食料自給率の低下もこのまま放置できない問題だ」と指摘した。

■製造業と農業の連携を

 また三洋電機の井植会長は次のように語った。
 21世紀には食料不足の時代がくるだろう。数年前にアルゼンチンに行った時、ジョージソロス氏が農地を買い集めていることを知った。食料を取り扱えばビジネスのプラスになると見通したのだろう。以来、私は農業に強い関心を持つようになった。
 当社は先ごろ、中国の大連で取締役会を開いたが、大連では、今後、工業用地を増やさない、これ以上、農用地を減らさない政策をとっていた。中国全体としても、その方針で、農業問題が大きなテーマだった。
 兵庫県の淡路島にある当社の工場は従業員約5000人で、その多くは兼業農家だ。だから従業員が専業農家になってしまうと私どもとしては困ったことになる。また農業をやめて島から出ていかれても困る。島の人口は約15万人だから、当社が成り立たないことは地元にとっても大問題だ。
 そこで製造業としても農業を兼業にしてはどうかといった発想になる。製造業と農業の一部がユニットになるビジネスモデルも考えられる。すでに水耕栽培もあることだし、国民会議のプロジェクト(作業班)に参加して農業との融合事例を早く成功させたい。
注 ジョージソロス氏=ヘッジファンドなどでかせいだ大富豪)

(2004.6.7)


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