食料・農業・農村基本計画の見直しを議論している審議会企画部会の生源寺眞一部会長は7月30日の会合で中間論点整理の素案を示した。
政策改革の方向は、△担い手政策、△経営安定対策、△農地制度、△農業環境・資源保全政策の4つの柱で構成している。
■集落営農は経理一元化が要件
担い手政策では、農業の構造改革を実現するため、施策の対象を「担い手に明確に絞ったうえで集中的・重点的」に実施すべきとしている。
その理由として(1)担い手にとって中長期的視点で安心して経営に取り組むことができる、(2)担い手を中心に地域農業の再編が期待できる、(3)施策への国民理解が進む、などの点で有益とした。ただし、施策の集中化と重点化を進めるには、地域で担い手とそれ以外の農業者との役割分担について合意形成が必要と指摘している。
担い手の対象には認定農業者とともに集落営農も位置づけた。ただし、条件として経理が一元化され法人化する計画を持っているなど将来、効率的・安定的な経営への発展が見込まれることをあげている。
また、作業受託組織や畜産関係のコントラクターなどサービス事業体も担い手として位置づけるよう提案している。
■日本型直接支払いの導入
品目横断的政策では、(1)諸外国との生産条件格差の是正のための直接支払い、(2)収入・所得の変動による影響緩和対策、のふたつを組み合わせることを提案した。
直接支払い制度は、過去の一定期間の対象面積に対して支払われる。対象は全経営面積ではなく、関税水準が低く諸外国との格差が大きい品目。品目ごとの格差をもとに支払単価を設定する。ただ、日本では今後とも規模拡大が求められることから、支払い基準となる期間以降に規模拡大した場合も支払いの対象となるような工夫が必要とした。
また、捨てづくりなどを防止し、需要に応じた国内生産を確保するため、品目ごとの生産量や品質に基づく支払いも導入し「日本型直接支払い」とする必要があるとしている。
施策の対象は担い手。また国民の理解を得るために、耕作放棄を行わないことや、持続的な生産のための輪作や土づくりなど適切な営農に取り組むことなどを支払い条件とすべきしている。
農地制度では、優良農地の面的な確保や担い手への利用集積の加速化が必要だとしながらも、具体策については農水省に検討を委ね、その結果を企画部会で議論するとした。
農業環境・資源保全策では、地域での資源保全のための取り組みをモデル的に検証し、一方で資源や農村環境の保全活動の最低規範を決め、その規範を超えた活動への支援を行う方針などを示している。
■米改革の着実な実践が重要
この日の企画部会では、素案が施策の対象を「担い手に明確に絞る」との方針ついて、「兼業農家が対象外になれば麦・大豆づくりをやめて米づくりをするのではないか。将来のビジョンとしては大事だが現場では混乱が起きる」(森本一仁委員)、「施策の重点化・集中化という言葉の一人歩きが心配。需給調整ができなくなれば大混乱になる。そのリスクを覚悟しないま農政を展開することになる。米政策改革を進めているなか、答申は米政策改革にも責任を持つことを明確にすべきだ」(安高澄夫委員)など生産者委員から懸念の声が上がった。
企画部会は8月6日に会合を開き再度中間報告について議論し10日の本審議会でまとめることになっている。 (2004.8.3)
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