自由貿易協定(FTA)を核としたアジア諸国との経済連携協定(EPA)締結を推進するため、農水省は11月12日、「みどりのアジアEPA推進戦略」と名付けた新たな方針を打ち出した。これまでの交渉は貿易事項を念頭に置くあまり、「農水省が交渉の足を引っ張っている」といったマイナスイメージを招く姿勢もあったため、推進戦略では、EPAの目標を明確に整理して、その実現に向けた積極姿勢をアピールできる方針とした。
戦略の重要ポイントは6点で、第一には、食料の輸入総量を増やさずに、輸入先国を増やす方針を含めた「食料輸入の安定化と多元化」という目標を掲げた。
現実には米国などからの食料輸入が多いが、こうした輸入先の集中を改め、地理的に近いアジア各国にも輸入先を求めていく。
当然、輸入量の減る国からの反発が予想され、難しい作戦になる(農水省大臣官房国際部国際政策課)が、食料輸入の安定化のためにはバランスをとって多元化をはかりたいという。
第二は「安全・安心な食品輸入の確保」で、EPAを通じて、お互いの実情の理解に努め、アジアの衛生水準の向上に貢献していくという方針だ。
第三は「ニッポン・ブランドの輸出促進」。アジア諸国の経済発展で増えてきた富裕層などをねらい、EPAを通じて高級な日本の農林水産物・食品の輸出促進を支援していく。
第四には「我が国食品産業のビジネス環境の整備」を掲げた。ここでも食品産業の原材料輸入先が特定の国に偏らないようにして輸入の安定化を図る。
第五は「アジアの農山漁村地域の貧困解消」だ。EPAの成果が相手国の大資本にとどまることなく、農林漁業者の所得向上につながるように市場アクセスの改善などに努める。
第六は「地球環境の保全と資源の持続可能な利用」となっており、EPAを通じて、森林の違法伐採をなくし、また科学的な水産資源管理などの取り組みの推進に努力する。
「アジア各国との経済連携協定の締結に積極的に取り組む」ことは小泉改造内閣の基本方針の一つ。11月下旬にはAPEC首脳会議などが予定されている。こうしたことから進行中のEPA交渉を加速化する必要があるとして、農水省は推進戦略を決めた。
同省は6月にEPA・FTA交渉における農林水産物の取り扱い基本方針を決めているが、これはそのまま生きているという。
なお「農水省はコメなど一部を除く農産物の関税を幅広く、撤廃・削減する方針を固めた」と一部の新聞が報じたが、島村宜伸農相は12日、これを「悪質な誤報」として否定した。
◆EPA戦略に全中会長が積極支持を表明
「みどりのアジアEPA推進戦略」についてJA全中の宮田勇会長は「JAグループの基本的考え方と共通の認識に立ったものであり、積極的に支持したい」と概要次のようなコメントを12日発表した。
東アジア諸国とのEPAについては「アジアとの共生」をさらに発展させる機会であると認識している。
アジア諸国の農村の貧困などを踏まえれば、わが国の重要品目に対する例外措置などを前提に、小規模農業者の所得向上につなげるため、自由化と農業協力とのバランスを確保することが重要である。 |