農水省の食料・農業・農村政策審議会は11月30日の企画部会で、食料自給率問題を中心に議論した。同省は、新たな基本計画の中で▽望ましい食料消費の姿▽農業生産の努力目標▽食料自給率の3つを設定し、それを実現していくために(1)食育の推進(2)農業構造改革の加速化(3)新技術の開発と普及(4)食品産業と農業の連携強化という4つの施策を掲げる枠組みを示した。
また担い手に対して▽品目横断対策などによる経営安定対策の確立▽農地の利用集積の促進などの施策を集中する方向を強調した。
意見交換では、自治体の委員から「日本農業がなくなったら大変だという認識で、市町村段階でもそれぞれの自給率目標を掲げて取り組むべきだ。国民全体の目標値にしなければいけない」、小売業の委員からは「理念によって自給率を向上させるにはムリがある。やはり安くて良いものが必要で、結果的に国産品を食べるように仕向けていく政策が重要。ファッション化で消費が急に伸びた商品の例も見習う必要がある」などの発言があった。
現行の基本法には自給率に関わる地方公共団体の役割が示されているが、今後はさらに「国民全体で取り組みができる手法を検討する」と同省は答えた。
経済団体の委員は「自給率の向上は財政負担をともなう。そこまでにらんで考えるべきだ。農業構造改革を成し遂げてこそ自給率目標は達成される」と主張。省側は「その通りだが、財政負担には必ずしもつながるものではない」とした。
生産者委員は「食料を安定供給するために自給率目標が掲げられた。とすれば安定生産のための構造展望や農業経営安定の展望が具体的に描かれなければならない。JAを中心に地域水田農業ビジョンの策定と実践に取り組んでいるが、地域農業の展望が現場に見える政策が必要だ。例えばJAの営農指導員に理解できる政策にしないと自給率向上は実現できない」と同省の資料に不満を示した。
また臨時委員の山田俊男JA全中専務は、JAの課題に触れた他の委員の発言にも答え「JAグループは自給率向上への役割を自覚して全力を挙げている」とし、その一環として、県の普及員が減らされる中で、全国約900のJAは営農指導員約1万6000人を擁して活動を続けており、その負担額は年間約1400億円にものぼっているなどと説明。さらに委員提出資料として、基本計画策定に向けたJAグループの要請具体策を示した。
このほか小売業の委員から「補助金の使い方を変え、商品開発などを支援すれば自給率が上がるはず」、学識者委員から「自給率を金額ベースにしたらどうか」、消費者委員から「国産品の消費拡大のために、女性の社会進出なども考慮して消費モデルをつくることが大事」などの発言があった。
一方、同省は先の中間論点整理をもとに、担い手政策は産業政策であり、地域振興政策とは明確に区分するという改革方向や地域農業の展望などを示したが、山田専務は「この資料では地域政策の全体像が見えにくい」と指摘した。
また消費拡大策でも有効な対策は示されなかった。
企画部会は次回に中間論点整理以後の議論をまとめ年明けからは基本計画そのものの議論に入る予定。 |