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シリーズ 卸売市場を考える(2) 座談会−1
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◆「流通革命」で必要になった「建値」
―産地の大型化、量販店の成長
藤島 卸売市場は全国に何カ所もできて、それぞれがセリを行っていましたが、それはそれぞれの卸売市場で価格形成をする必要があったからだと思います。そのなかで建値が出てくるわけです。どうして出てきたのかは議論があるところですが、一般的にいわれているのは、転送とのからみですね。つまり、東京の市場へ大産地から荷が入って、その荷が他の市場へ転送される場合、東京の市場価格が基準になって他市場でも価格が決まるわけです。そういう意味で、東京の市場が建値市場といわれるようになったということです。 原田 建値は参考価格ということですね。ところで森口さん、卸売市場を通さない市場外流通で価格を決めるときにも、大田市場や大阪本場の価格を参考にして決められていますよね。 森口 取引形態はいろいろありますが、指標価格としては、市場価格がきわめて重要な意味をもっています。他に依拠するものがありませんからね。 ◆市場流通があって成り立つ市場外流通
原田 大田や本場の価格が基準になったのはなぜですか。 藤島 規模が大きく全体的な需給関係のなかで取扱量が多い中心的な市場ですから、そこを中心に考えていくということではないでしょうか。それから首都圏には9つの青果物市場がありますが、ここでは大田市場の価格を見ると同時に隣の市場を大変気にし、互いに牽制しあっている面もありますね。 原田 卸売市場は需給を反映した公正な価格ということになっていますが、最近は出荷量が少なくても必ずしも価格はあがりませんね。需給の反映という点でどう考えればいいんでしょうね。 森口 私は市場外流通は市場流通があってこそ成り立っていると考えています。もし市場がなかったら、買い手と産地の売り手は利害が相反するわけですから、どう価格を形成するかということは容易ではないですね。市場の建値があるから、市場外流通でも価格が決められていると思いますね。 藤島 市場外流通が増えているのは間違いないことですが、それは卸売市場が扱わない加工品が増えているからだということも忘れてはいけないと思います。 ◆セリは世界的には例外的な存在
―食文化の違いも重要
原田 世界的にみて、公設の卸売市場がセリで価格を決めるというのは例外的な存在だといえると思いますが、他の国での価格形成のルールはどうなっているのでしょうか。 藤島 日本の場合は中央卸売市場はすべて公設ですが、外国の主要卸売市場は国立もありますが第3セクターとかいろいろあります。しかし、根本的な違いは、価格形成の仕方が、相対取引きだということです。ただ、大変興味深いのは、日本も外国も共通している点があるということです。それは、競争を通して価格を決めているということです。日本ではセリによる競争がありますが、欧米の卸売市場の場合には、卸会社の数が大変に多く、売り手とは相対ですが、卸売同士の競争があるので、だいたい妥当な価格になっていると思います。相対であっても、競争関係で価格がつくられていますから、その競争関係をどう維持していくかが大事なことだと思いますね。 原田 欧米の場合は、買い手も多数、売り手も多数という競争によって妥当な価格がきまってくるわけですね。日本の場合にはどうですかね。 森口 外国と比較する場合に考えておかなければいけないのは、日本の食文化の特異性を考慮すべきだと思います。米国のように貨車ごとレタスをバキュームクーラーにいれてしまうという日本では想定できないようなロット単位の取引きが行われる国では、セリではなく相対で買い手と大農場が結びつくと思います。しかし日本では品揃え、季節感とか品質・鮮度、そして出所にこだわる買い方が随所にみられますから、相対だけで取引きがうまくいくとも考えられません。確かに日本でも大きな取引きができる条件が整ってきていますから、必ずしもセリにこだわることはないと思いますが、食文化の差もおさえておかないといけないと思いますね。 ◆妥当な価格形成には競争関係が必要
―国・行政の役割 原田 日本の場合にはセリの価格を基準に考えてきましたから、相対になじみがないことと、相対だとバイイングパワーに押されてしまうという現実もありますね。 藤島 日本でも相対であっても、卸売市場間の競争もあるわけですから妥当なところに落ち着くと思いますね。だから、セリと相対とどちらがいいかということにはならないと思います。 原田 最近、大田でも相対が増えているようですが、一番の要因はなんでしょうか。 森口 買い手側からみればセリは安定した価格や量が確保されず、振れすぎるということは、仕入れのコスト管理をきちんとして安定的な仕入れをし、計画的に販売したいところには、致命的ですね。100店舗分同じ品質のものを揃えたいと思えば、セリだととんでもない価格を出さないといけなくなりますね。そうなると相対で、量は保障するからこのくらいの価格で欲しいと交渉することになると思いますね。もしセリを温存するとしたらそのリスクをどこかが負わなければ、いまの流通とは合わないですね。現実的に仲卸さんなどがそれを負っているわけですよ。 原田 公正な価格を形成するためには、競争の条件をどうつくっていくかということですね。 藤島 そうだと思いますし、それこそ国とか行政の役割ですね。いろいろなことを規制するよりも競争関係をつくることが一番考えるべきことですね。 原田 具体的にはどういうことでしょうか。 藤島 従来は、競争関係を維持し、公正な価格形成のためにセリを原則としてきたわけです。しかし、いまや相対でも大丈夫だというわけですから、相対での競争関係はどうあるべきかを、行政としても検討して、今後の卸売市場のあり方として出していくことが必要だと思います。 原田 生産者にとっても消費者にとっても、基準となる価格は競争の中でつくられることが基本ですから、そういうものを行政が用意をすることは大事だということですね。
原田 日本の場合には卸売会社は少数ですが、競争条件を考えるときにもう少し幅広く考えた方がいいわけですね。 藤島 流通の効率性と競争関係を一緒にして考えていかないといけないと思いますね。 原田 森口さんが言われたように食文化をベースにおいて、日本にあった競争条件をどう確保するかが、卸売市場のビジョンをつくるときには大事だということになりますね。 藤島 行政で改革案をいろいろ検討していますが、競争の視点が不十分だと小手先の改革に堕する恐れがあります。 (2003.4.8) |