12年産第4回自主米入札(10月27日実施)の全体の落札加重平均価格(指標価格)は前回の第3回入札の指標価格(1万6070円)比212円下落の1万5858円となったが、各卸では概ね「これで12年産自主米価格の底値を打った」と評価。多少の紆余曲折はあるかも知れないが今後は米価安定、若しくは若干の反転局面に入っていくだろうとの見方をしている。
@確かに今回の入札では全体の指標価格が下がったが、これは前回1万4513円の価格だった北海道きららが724円下げの1万3789円、同じく1万4701円だった北海道ほしのゆめが720円下げの1万3981円と大幅に下落。この値下がりに連動するように安い北海道銘柄の落札数量が増えた事が原因であり、A第4回入札で上場された73産地銘柄中、前回比100円以上の値下がりになったのは前述のきららなどを含めても7銘柄に過ぎなかった、B北海道を除く主要産地銘柄で見た場合、例えば秋田あきたこまちは前回比7円下げの1万5778円、宮城ひとめぼれは前回と全く同額の1万5500円、岩手ひとめぼれは同2円下げの1万5855円、山形はえぬきは12円下げの1万5783円、新潟一般コシヒカリが1円下げの1万9001円などと総じて横這いの展開になった、Cごく一部の銘柄だけであるが、石川コシヒカリ(前回比209円上げの1万6350円)、大分ヒノヒカリ(同47円上げの1万5351円)等のように逆に値上がりに転じてきた事例もあった――からだ。
◆北海道銘柄の下落は「戦略の違い」から
また北海道銘柄の大幅下落が目立つような格好になったが、これは売り手である各経済連の「戦略」の違いから生じた「時差」であり、別に北海道銘柄が12年産で際立った値下がりをした訳でない事も理由。
なぜなら、@収穫期が早い産地銘柄ほど新米の上場開始時期も早くなるため、市場価格を反映するのも前倒しになってくるが、12年産もご他聞に漏れず(九州の早期米に引き続き)9月末には概ねの刈り取り作業が終了する関東や北陸のコシヒカリなどが真っ先に下落し、これを東北の各産地銘柄が後追いする形となった、A北海道銘柄も出回り開始時期としては東北各産地とそう大きく変わる訳ではないから、前回の第3回入札で既に下落していてもおかしくなかったのだが、第3回入札の実施時期(9月29日)がコメの緊急需給対策の決定直後である事などを勘案。価格が下がるよりは落札残が発生してもやむなしとする対応をホクレンが選択していた(具体的に言うと、売り手の権利である入札での指し値を11年産米並に設定。絶対、価格の値下がりが起きないようにしていた。ただ、その反動として市場の評価と価格が折り合わないのだから当然、落札残が多発する事になる)、Bだからと言って北海道銘柄に対する市場の評価が12年産米で急激に上がったのではなく、遅れ馳せながらも今回の第4回入札で先に下落した他産地銘柄に合わせた居所修正を行う必要があったと思われる――からだ。
つまり、第4回入札に於ける全体の指標価格の下落は主に北海道銘柄の値下がりによるものだったが、これは売り手の戦略の関係で下落がワンテンポ遅れになっただけの事であり、裏を返せば今回の北海道銘柄の値下がりで12年産米の各産地銘柄の居所修正がひと通り終了したと考えられる事がポイント。
◆実質的には昨年を上回る需給調整か?
また、各卸が「第4回入札で12年産自主米価格の底値を打った」としている事には他にも理由がある。
これも北海道を例に出して説明すると分かりやすいのだが、@緊急需給対策に基づき農水省は11月1日、13年産米で行う25万t(約4万7000haに相当)分の生産調整面積拡大の都道府県別配分(ガイドライン)を発表したが、これで北海道の生産調整面積は1万1826haの上乗せの13万2350haになる事が確定した、Aこの結果、減反拡大の見返り条件とされた12年産政府米特例買入れ数量25万tのうち6万2204tが北海道に割り当てられる事も自動的に決まった(25万tの特例買入れの配分数量は、今回の各県別の減反拡大面積に各産地の12〜14年産米の平年単収を掛けて弾き出すルールになっている。北海道のケースなら今回の拡大面積である1万1826ha×北海道の12〜14年産米の平年単収である526kgで計算する)、B今後、更に12年産政府米買入れ数量40万tの残数である15万tの主食用以外への処理(通称、エサ米処理)、12年産自主米で実施される事になった24万tの市場隔離(正式名称は玉揃調整特別政府売渡枠)の各県別配分が行われた暁には北海道の12年産米市場隔離数量は合計8〜10万tには上るだろうと推定される、Cこれは北海道の11年産政府米買入れ数量(10万t)に匹敵する市場隔離である≡また北海道の12年産米は品質は良いが、やや小粒のために選別時に2mmの網下に落ちるコメが多く、自主米集荷数量としては11年産を下回ると見られている事も併せて考えると、実質的には昨年を上回る需給調整が行われる事を意味する――からだ。
◆期待した埼玉や群馬雑銘柄などが低下
今回の第4回入札までは不透明だった緊急需給対策の効果がジワジワ利き始めている構図である。ちなみに全農では11月中に15万tの主食用以外への処理、24万tの自主米隔離の県別配分も打ち出す予定と言われ、今月28日に行われる第5回入札までには各種対策の具体的な中身が概ね固まってくる見込み。
関東の複数の卸によると、消費者が安価なコメを求める傾向が強まった近年、業務用販売を中心に価格が安い北海道銘柄の重要性が増してきている部分があるが、「業務用販売のコメとして期待して待っていた埼玉、群馬などの12年産雑銘柄の品質が今夏のフェーン現象などの影響で低下(高温障害によるシラタなどの多発)した事もあり、その分の需要が今後、北海道銘柄にシフトしてくる気配がある」と指摘している。
関西のある大手主要卸では「北海道きららの価格は第4回入札が底値だろう。早ければ今月か12月の自主米入札から北海道銘柄の反転が始まる可能性がある」とも述べている。
◆何百円もの値上がりを期待するのは誤り
それでは第4回入札で各産地銘柄の居所修正が概ね終了、これとタイミングを合わせるように緊急需給対策の隔離効果などが出始めた事もあって12年産自主米価格は今後500円、1000円程度の反発局面に入るのだろうか。前述の関西のある大手主要卸では次の通り分析している。
「12年産自主米の需給が今後、締まってくるのは恐らく間違いないが、数年前までのように何百円もの値上がりが発生すると思うのは誤りではないか。せいぜい100円以内の値上がりにとどまると見るのが妥当だろう。@需給対策が発動されたと言っても、国の需給見通しでも来年10月末の国産米在庫数量は172万tに上る、A不景気の中、厳しい販売競争を展開している量販店や各種の外食関係者から見れば、これでは末端のコメの販売価格を大幅に値上げする理由にはならない、B新米需給が多少締まってくると言っても、コメ全体から見るとまだまだ在庫数量が多い訳であり、特に業務用関係筋は必ずしも新米にはこだわらない(仮に12年産自主米価格が大幅反発した場合、業務用米の少なくない部分が古米にシフトし、12年産価格の反発を抑制する可能性)、C今やコメの価格形成の主導権を握った量販店や業務筋が高い12年産米は買えないと言っている以上、中間の各卸も高くは12年産米を入札などで落札する事は出来ない(高値落札しても末端販売価格が上がらない以上、その負担が全て中間の卸にかかってくる恐れがあるという事)――からだ。
◆「適正な米価」で消費者への問いかけも
つまり、12年産自主米価格が反転する環境は整いつつあると思われるが、コメの価格形成は最早、消費者や量販店の意向を無視しては成り立たず、すぐには需給対策の効果などが出ないような構造になってきている事が特徴。
本当の意味で値上がりするとすれば、減反拡大効果も出る来年の13年産からではないだろうか」。
ただ最後にこうも付け加えた。「過去数年のように毎年、米価が下落し続けたのでは生産者も流通業者も潰れてしまう。そういう意味では今回の米価安定は歓迎しているし、期待もしている。コメ業界全体としても、米価安定に向けた総意は得られているのではないか。あとは適正な米価とは一体何なのか。消費者に問い掛けていく事が大切になってきていると思う」。
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