◆競争が激化するなか、順調に実績を確保
JA共済連(新井昌一会長)は、5月25日に平成11年度のJA共済普及推進実績の概況を発表した。
上原寿宰JA共済連常務は、「金融共済事業を取り巻く環境は、想像を上回る変化」が起き、競争がますます激化してきている。それは、
1. |
料率・掛金・サービス内容などの「比較競争の激化」 |
2. |
インターネットなども利用した「販売推進力の競争の激化」 |
3. |
保険会社の経営破綻・倒産などによって、消費者から「信頼がおけるのか」という「安全への不安の激化」 |
であり 「今後も続くと想定している」と語った。 「競争激化」 の影響はJA共済にもあったが、「協同組合保険としての推進をした結果、ほぼ順調に実績を確保することができた」
としている。
そして12年度以降は、JAの組合員であっても、生・損保と比較して契約する時代になっているので、「組合員がJA共済に何を期待しているのか、そのニーズを正確につかみ、生・損保に負けない仕組みやサービスを提供して」いくことと、「統合がスタートした12年度は、@事業量を確保することと、A合理化・効率化を進めて、統合効果を具現化する」ことが課題だと語った。
◆長期共済新契約、短期共済とも伸長−−11年度の成果
そして11年度の成果としては、
1.長期共済新契約実績(保障共済金額)が前年度比101.3%伸展し、30兆3868億円と30兆円を超えた(目標達成率103.5%)。
表1 平成11年度長期・年金共済新契約実績 <長期共済> |
事業種類 |
契約件数
(件) |
満期共済金額
(億円) |
保障共済金額
(億円) |
共済掛金
(百万円) |
|
対前年
度比 |
|
対前年
度比 |
|
対前年
度比 |
|
対前年度比 |
終身共済 |
442,390 |
77.3 |
6,117 |
69.6 |
89,984 |
75.0 |
91,969 |
77.0 |
養老生命共済 |
486,861 |
73.5 |
8,723 |
72.6 |
59,294 |
73.2 |
146,684 |
77.2 |
こども共済 |
99,041 |
84.9 |
2,074 |
80.9 |
8,598 |
81.5 |
12,524 |
83.3 |
定期生命共済 |
17,140 |
109.9 |
- |
- |
2,563 |
127.8 |
1,096 |
113.6 |
生命共済計 |
1,045,432 |
76.5 |
16,915 |
72.4 |
162,266 |
75.4 |
252,273 |
77.5 |
建物更生共済 |
1,049,234 |
139.6 |
16,902 |
95.7 |
141,602 |
167.1 |
155,547 |
102.9 |
長期共済計
(普及推進実績) |
2,094,666 |
98.9 |
33,817 |
82.4 |
303,868 |
101.3 |
407,820 |
85.5 |
注1.普及推進実績には財産形成貯蓄共済、農機具更新共済等を含まないので決算の数字は若干変動。
2.終身共済の満期共済金額欄は終身共済金額、保障共済金額欄は終身共済金額と定期共済金額を加えた額。 |
2.短期共済が、件数(前年度比101.6%)、掛金(同101.7%)と前年実績を上回った。とくに、新車販売台数が低迷するなか、損保商品の自由化・サービス内容・販売チャネルの多様化など、競争が激化する状況下にある自動車関係では、自動車共済が契約件数855万(同101.4%)、共済掛金3241億円(同101.9%)、自賠責共済が件数336万台(同103.0%)、共済掛金720億円(同103.3%)と件数・掛金とも前年度実績を上回った。
表2 平成11年度短期共済新契約実績 <短期共済> |
事業種類 |
契約件数(件) |
共済掛け金(万円) |
|
対前年度比 |
|
対前年度比 |
火災共済 |
1,421,281 |
101.6 |
1,346,930 |
97.1 |
団体建物火災共済 |
404,786 |
104.2 |
637,623 |
99.8 |
定額定期生命共済 |
11,628 |
93.2 |
24,068 |
95.1 |
団体定期生命共済 |
189,280 |
100.2 |
87,438 |
104.0 |
傷害共済 |
11,584,570 |
101.3 |
1,574,313 |
95.0 |
自動車共済 |
8,556,687 |
101.4 |
32,413,661 |
101.9 |
自賠責共済
|
3,361,541 |
103.0 |
7,203,295 |
103.3 |
短期共済計
(普及推進実績)
|
25,673,520 |
101.6 |
43,314,098 |
101.7 |
注: 短期共済計には賠償責任共済を含む。
3.年金共済で例年通りの実績を確保したこと
をあげた。
◆長期共済保有が前年割、建更の比重高まる−−残された課題
だが、新たな課題も生じている。それは
1.県によって違いはあるが、全国レベルでみると、建更10型の発売で建更は前年度比167.1%(保障共済金額)と爆発的に伸びたが、生命共済は同75.4%と落ち込んだこと(表1参照)。
2.長期共済保有契約が件数(同97.9%)、保障共済金額(同99.9%)と、前年度を割り込んだことだ。
解約・失効率も前年度の3.91%から4.67%へ増加している。
建更が大きく伸び、生命共済が落ち込んだ理由について、JA共済連は次ぎのように分析している。
1.小さな掛金で大きな保障をする建更10型は、JA共済の長年の懸案だった。それが実現したので、建更10型に多くのJAが力を集中した。
2.JA段階では、共済種類別に長期共済の目標管理をしていないところが多く、待ち望んでいた建更10型に集中した。
3.したがって、建更への集中は「流れとして一過性のもので、1〜2年でもとのペースに戻るもの」とみている。
また、県によって長期共済の種類別目標管理の取り組み姿勢に違いがあるので、今後は、生命共済と建更など種類別目標管理を徹底していくとしている。
長期共済保有契約が前年度を割り込んだことについてはすでにいくつかの県域では取り組まれているが、全国本部としても「12年度は保有の純増への取組みと管理体制」をとることにしている。
長期共済の保有を純増するためには、新契約の獲得と、満期・失効対策の両面での取組みが必要だが、満期対策としては新たな仕組みを提供して継続への努力をすること。解約・失効対策としては、解約者リストをつくり、LAなどがその1人ひとりに対して、「大きな保障に切替えたのか」「解約した理由は何か」を確認し、継続を促す行動を積み重ねる活動を行う。また、スライドやポスターなどを作り、「もう一度、契約者に考えてもらうチャンスをつくることも検討している」と上原常務。
◆総資産約35兆円に
11年度末の推計総資産(全共連・都道府県共済連)は、34兆9182億円となり、前年度末の33兆8765億円から約1兆円強の増となった(前年度比103.1%)。
総資産の構成比は表の通りとなっている。
表3 平成11年度末資産運用状況(全共連・都道府県共済連計) |
|
11年度末 |
10年度末 |
残高 |
総資産比 |
前年度比 |
残高 |
総資産比 |
現金・預金 |
21,830 |
6.3 |
115.0 |
18,982 |
5.7 |
(系統預金) |
(21,662) |
(6.2) |
137.2 |
(15,794) |
(4.7) |
コール・ローン |
5,848 |
1.7 |
54.6 |
10,704 |
3.2 |
金銭の信託 |
1,851 |
0.5 |
51.6 |
3,584 |
1.1 |
金銭債権 |
3,412 |
1.0 |
35.2 |
9,694 |
2.9 |
有価証券 |
275,603 |
78.9 |
111.8 |
246,508 |
74.0
|
(公社債) |
258,049 |
(73.9) |
114.6 |
(225,198) |
(67.6) |
(株式) |
6,368 |
(1.8) |
98.8 |
(6,443) |
(2.0) |
貸付金 |
35,633 |
10.2 |
92.5 |
38,539 |
11.5 |
(一般貸付) |
(16,776) |
(4.8) |
85.1 |
(19,719) |
(5.9) |
運用不動産 |
1,093 |
0.3 |
107.3 |
1,019 |
0.3 |
運用資産計 |
345,295 |
98.9 |
104.9 |
329,058 |
98.7 |
その他資産 |
3,887 |
1.1 |
40.0 |
9,707 |
1.3 |
総資産 |
349,182 |
100.0 |
103.1 |
338,765 |
100.0 |
注:11年度末は決算前の仮締めによる |