「農」と「共生」の世紀づくり −第22回JA全国大会組織協議案のポイント− JA全中組織経営対策部長 森澤重雄 今年、10月12日に開催の「第22回JA全国大会」に向け、各段階で組織協議案の論議が進められている。全国大会が開催される今年は、新たな基本法にもとづく基本計画が実践に移されていく初年度、JAグループが取り組んできた組織整備の目標年度、産業組合発足100周年目など今後のJA運動の展開にとって大きな節目の年にあたっており重要な大会議案となる。そこで、協議案のポイントを中心に述べてみる。 |
協議案では、今後の社会・経済の大きな潮流を5つのキーワードでとらえている。「グローバル化による大競争時代の到来」「IT(情報技術)革命の進展」「少子・高齢化の本格到来」「環境を大切にする循環型社会」「地域重視」である。 ●
生産・消費の両面から食料自給率の着実な向上を 以上の基本に添いながら、組織協議案は3つの大きな柱で構成している。 ―自給率向上をはかる地域農業戦略― また、農業面では、このままでは担い手の減少、耕作放棄地の増大などが進み、農業の持つ力が最大限発揮されないことが懸念される。そこで、全JAで自給率の向上をめざす地域の生産・販売計画、農地利用、担い手の明確化と育成・支援の具体策を盛り込んだ5年間の「地域農業戦略」を策定し、確実な実践に取り組んでいくことを提起している。こうした取り組みにあたって、地域農業のマネジメント機能を発揮するJAの営農センターの強化が不可欠であり、マーケティングに重点を置いた営農指導の展開、JAグループの販売力の強化などの取り組みが重要になる。 さらに、農村分野において「農」と「共生」の地域社会づくりに取り組んでいくことである。そのため、農村地域の総合的な土地利用計画策定にJAが積極的に参加していくことや、組合員や地域の高齢者が老後を安心しておくれるJAの総合的な高齢者対策の取り組みが重要となっている。 ● 事業改革に果敢にチャレンジ ―広域集中システムの構築による生産資材コストの低減― 第二の柱は、「JAグループの経営・事業・組織の改革」に取り組むことである。 経済環境が大きく変化している一方で、2000年を目標としてきたJA合併と連合会の組織整備が進展し、新たなJAグループの姿で組合員・利用者の期待に最大限応えていくことが重要になっている。このためには、事業改革を果敢に進め、組合員・利用者に最適なサービスを提供する事業システムを構築していかなければならない。 そこで、経済事業においては5つの重点を提起しているが、とくに担い手農家から、支持される改革を進めるため、業務・物流改革に最重点を置いて取り組んでいくこととしている。具体的には、農家が大きく期待する生産資材価格のコスト低減に取り組むため、受注から供給までを一貫した情報と物流による「広域集中システム」(サプライチェーン)を構築し、事務と配送・在庫管理のコスト低減を図り、利用者にメリットを還元していくこととしている。また、供給価格についてもあらかじめ利用量や利用形態など、取り扱い条件を踏まえ価格体系を明示し取り組んでいくことを提案している。 ―利便性の高い信用・共済事業サービスの提供― 大競争、IT革命、ペイオフに代表される金融環境の激変に対していくため、組合員・利用者に他業態に負けないサービスの提供と、JA事業への「信用」「信頼」を確保した取り組みが重要となる。 また、共済事業は統合連合組織のもと事業展開が進められていくが、あらゆる生活保障ニーズに応えられる品揃えや、いつでも・どこでも受けられる各種サービスの提供を実現していくこと等を提起している。 ―徹底した収益改善と新たな事業創造― 以上のような、事業改革を進めることと関連し、90年代に入り最悪になっているJAの収益改善策に取り組むことが喫緊の課題である。このため、支所・支店・施設・店舗の機能再編や統廃合対策、部門毎の「収支目標」の設定にもとづく要員配置の適正化に果敢に取り組んでいくことが必要となる。 ―合併JA・連合会にふさわしい機能・体制整備― 激変する環境変化に対応するとともに組織整備のメリットを発揮していくため、トップマネジメントの充実をはじめ、合併JA・連合会にふさわしい機能・体制整備が重要となる。このため、トップマネジメント対策については、「経営管理委員会」の積極的な活用や役員定年制・任期制の検討・実践等を提案している。また、組織整備関連では合併助成法期限内の最大限の取り組みや中央会の機能・体制整備に取り組むことを提起している。 ● 新たな参画によりJA運動の強化を 第三の柱は、「参加・参画・連携の促進による農業協同組合運動の展開」である。 ● 大会議案と関連する2つの動き 組織協議案の主なポイントは以上の通りであるが、現在、全中の総合審議会に2つの事項を諮問し検討を進めている。「経済環境の変化に対応したJAグループ全体としての総合力を向上させる事業機能のあり方」と「中央会事業・組織のあり方」である。事業機能のあり方については、金融環境の激変のもとで信用事業のあり方が大きな課題である。組織協議案では、大きな方向性の考え方を提起し、具体的な仕組み・システムについては総合審議会の答申(8月末予定)を踏まえ、大会議案を充実していくこととしている。 また、来年春の通常国会での制度改正をにらんだ農水省の「農協系統の事業・組織に関する検討会」での検討も進められている。既に、関係者からのヒアリング等も行われており、8月上旬には検討会として一定の論点整理が行われる予定である。 以上のように、大会議案とも関連し2つの大きな場での検討も進んでおり、21世紀の農業・農村そしてJA運動を方向づけていく重要な大会議案となる。「農」と「共生」の世紀づくりに向け、各段階で闊達な論議をお願いしたい。
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