虚報−背景に金融界のモラルハザード(倫理喪失) 百貨店そごうに対する新生銀行(旧日本長期信用銀行)の債権を国(預金保険機構)が買い取って放棄するのは農協金融を救済するためであるとする一部報道があったが、民事再生法適用申請後は、農協金融のピンチか、といった論調に変わった。しかし公的資金を投入するシナリオの背景に農協系救済があったとする記事の基調は変わらない。 |
● 引き当てと担保で−−系統金融 影響は限定的 「全国の信連の決算内容をみると98年度までに不良債権処理を前倒しで行った信連が多く、このため99年度決算は全体として経常利益が前年度より72%と大幅に伸び、内部留保も厚くした。不安説など、どこから出てくるのか。騒ぐほうがおかしい」(永井和夫全国信連協会専務)というのがまず概括的な状況だ。 JAグループのそごう向け貸出残高は合計667億円(3月末)。内訳は農林中金が420億円、6信連が計100億円、JA共済連(全共連と旧4県共済連の合計)が147億円だ。 そごうは、かつて各地に別会社をつくって巨大店舗を建てた。地元金融機関の多くが、これに融資した。店舗所在地の6信連もおつき合いをした。 ところが、そごうは、その再建路線を民事再生法適用による法的処理の手続きに突然、転換した。 一方、主力銀行である興銀のそごう向け貸出残高は3630億円。そごうの放漫経営を後押しした罪は大きい。同行には大阪の一料亭に巨額を融資した尾上縫事件などの前科もある。次いでそごうの準メーン新生銀行(旧日本長期信用銀行)は2050億円。 以上、どうみても、そごう問題を種にした系統信用事業のクローズアップは無理な話。にもかかわらず農協系が引き合いに出されるのはなぜか。 ●源流は住専処理問題 −−系統への責任転嫁 源流はやはり住専処理問題にあるようだ。当時、母体行責任を主張するJAグループに対して母体行側は貸し手責任を唱え「公的資金の投入は系統金融救済のためだ」と合唱した。 ところがスキあらば系統に責任を転嫁する住専処理時の銀行パターンは消滅していなかった。そごう処理でも、その機能が働いた。 一方、系統は「公的資金による救済を一切受けずに協同組合の力でやってきた」(角道謙一農林中金前理事長の退任あいさつから)。
これに対して「やがては農協系も公的資金を受けるだろう」といったリークが流されている。 つぶれて国有化された日本長期信用銀行の不良債権は3兆6000億円の血税で穴埋めされ、さらに外国投資グループに二束三文で売られ、新生銀行になった。 |