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希望価格の設定は慎重にーJA全農が自主米入札で見解


11年産米の販売残の可能性も

 8月8日に実施された12年産自主流通米第1回入札の結果を受け、JA全農米穀販売部が今後の対応について見解を発表している。
 第1回入札の平均指標価格は、1万5984円で前年同期の1万7285円を1301円下回った。また、落札比率も82.1%と前年同期の89.2%を7.1%下回った。

 今回の入札をめぐる状況についてJA全農では次のように分析している。
 @12年産米の作柄が豊作基調で推移している。A11年産の販売は3月以降回復してきたが10月末までの完売が難しい状況になってきている。B長引く景気低迷の影響から消費者・実需者の低価格米志向が続いている。C政府米の販売不振により12年産米の政府買い入れがゼロになり全量自主流通米で販売せざるを得ない状況が懸念されること。
 こうしたことから、「過剰感・先安感が先行し卸の応札意欲が低いなかでの入札」だったとしている。

 今後の対応では、まず11年産米の販売について@8月9日時点で未契約数量が27万トンとなっておりこの販売に全力で取り組む。A販売残が発生した場合は対策を講じる必要があることから銘柄別販売残数量をとりまとめる。B11月以降古米として卸が必要とする米は相手先を結びつけて計画的に販売するため持ち越しとする。Cさらに残る米については加工用米と交換するなどの対策を検討する、としている。

ミニマム・アクセス米の処理、根本的な検討が必要

 さらに12年産米については先に全中が提起した緊急対策の検討メモをふまえ、@政府の在庫処理対策、A政府米の買い入れ、B11年自主流通米の在庫対策、C豊作の場合の別途処理対策、D稲作経営安定対策の充実、EMA米対策、などを国に求めていく方針を打ち出した。
 JAグループは、これまで国との協議と指導のもとに計画的生産や生産オーバー分の飼料用処理など需給対策に取り組んできたが、現在の米過剰と価格下落は、「これまでの枠組みとルールを超えたものであり、JAグループの努力だけでは解決できない異常事態」だと捉えている。

 このためとくに「政府米の買い入れ」、「別途処理策」、「MA米対策」に対する国の取り組みを重視していく。
 政府米の買い入れについては、生産オーバー分は飼料用処理分として政府が買い取り、政府古米と交換することになっているが、それ以外にも買い入れを求めるものだ。また、別途処理対策については国の負担額の増大を求める。
 さらにMA米対策については、「主食用の需給に影響を与えていないはずがない」との認識から、SBSを含めMA米全体の扱いについての検討が必要との意向もある。

 一方、JAグループとしては、@計画流通米の確実な集荷と計画外流通米の圧縮、県間競争の排除と入札のおける希望申出価格の慎重な対応、を確実に実践する方針だ。

この秋、米政策の抜本的な見直しも

 農水省は、今後、まず12年産米の緊急対策を決めその後13年産以降の対策を詰めていく方針だ。ただ、米政策の抜本的な見直しを図る観点から、緊急対策の議論の際に、生産調整のあり方など含めた政策の全体像を示すことが必要との考えがある。そのため政策全体の検討方向、論点などを8月22日の自民党農業基本政策小委員会に示し議論を始めた。
 今後、最大の焦点になりそうなのが、生産調整のあり方。13年産では現在よりもさらに拡大せざるを得ない可能性も高いが、面積ではなく“量”の調整をいかに図るかが課題になりそうだ。

 一方、JAグループなど生産者団体には、需給の見通しがこれほど頻繁に狂うのは、米価を市場原理に委ねる新食糧法そのものの欠陥という指摘もある。とくにMA米が需給と価格に影響を与えていることをまず問題にすべきだという声は根強い。米価安定のために生産調整を拡大するにしても、MA米対策が明確に打ち出されなければ、ウルグアイ・ラウンド合意以来の「輸入しながらなぜ減反するのか」という不満はますます募るばかりだ。

 ただし、当面の米価の確保のためにはJAグループにも課題がある。なかでももっとも重要とされるのが、入札時の希望申出価格の設定だ。第1回入札では、卸サイドも驚くほど低価格での希望価格申出があったとされる。
 JA全農によると11年産自主流通米の販売は8月に入って1日に1万トン程度の引き取りという好調なペースで推移している。これは卸の在庫量がかなり少なくなっているためとみられ、決して米が売れない状況ではないという。

 こうしたなかで8月29日には第2回入札を迎え、本格的な通年玉の価格形成が行われることになる。
 JA全農の鈴木郭史常務理事は本紙記者のインタビューに答え「ここで米価を守るんだという決意が関係者には必要だ」と希望価格の申出についての慎重な対応を求めていた。        



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