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全農が初めて農薬登録したMY-100 (オキサジクロメホン)
 農家に自信を持って提供できる 21世紀にふさわしい除草剤


 JA全農(大池裕会長)は9月7日、JAビルにおいて新規ヒエ剤・オキサジクロメホン(MY-100)を含有する水稲用除草剤の上市記者会見を行った。生産資材費低減を推進するJA全農にとって戦略品目に位置付けられ、販売に大手有力企業5社を起用していることからも、除草剤事業が急旋回を迎えることになる。
 そこで、MY-100の開発経過と特徴を紹介するとともに、JAグループ農薬事業の現状とこれからの課題、そこで果たすMY-100の役割りを取材した。また、MY-100の委託試験を実施し、13年度から防除暦にMY-100剤を取り入れることにしているJA千葉経済連にも話を聞いてみた。

    ◇ 「長期の効果で安全な農薬」を積極的に推進− JA千葉経済連
     ◇ 21世紀にふさわしい除草剤と確信 − 松尾英章JA全農常務
記者会見

●○● 新登録制で系統水稲用除草剤事業が急旋回へ ●○●

環境への負荷が少なく高い除草効果

 オキサジクロメホン(試験名=MY−100)は1992年に発見され、JA全農とアベンティス クロップサイエンス ジャパン(株)が共同開発した新規オキサジノン系の除草成分であり、その登場が早くから待たれていた。

 オキサジクロメホンは、ノビエの発生前から2.5葉期までの処理適期幅を持ち、かつ約50日以上の残効を示す優れたヒエ剤であり、しかも、10a当たりの投下薬量は4〜8gと既存のヒエ剤の中でもっとも少ないレベルであり、さらに土壌吸着力が強いため地下水や河川への流出が少ないなど、環境に優しい除草剤として注目される。
 特に、本剤は高い除草効果に加え環境への負荷が少ないという優れた特性を保有していることから、農林水産省の「新農薬開発促進事業」に除草剤としてはじめて取り上げられ、21世紀の大型水稲用除草剤として国からも大きな期待が寄せられている。
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◆販売目標は水稲向け普及面積を約60万haに

JA全農の松尾英章常務 販売目標については、系統独自品を中心とした流通(水稲分野)及び販売各社の市場調査結果などから、2003年には水稲向け普及面積目標を約60万ha(約150億円)、日本芝向け(注)普及面積目標を約3万ha(約16億円)としている。

 記者会見席上、JA全農の松尾英章常務は「当会が海外原体メーカーと本格的に共同開発に取り組んだ初めての農薬」と位置付けるなか、「農家に対して自信を持って提供できる、21世紀にふさわしい除草剤としてご利用いただけるものと確信している」(詳細)、と力強く語った。

アベンティス クロップサイエンス ジャパン(株)デュピュイ社長 また、共同開発したアベンティス クロップサイエンス ジャパン(株)のジャック・デュピュイ社長は、これまでの開発経緯を説明、「このように短期間で農薬登録を取得できたことは、JA全農はもとより関係会社の多大なご尽力によるもの」として、今後はJA全農および関係会社とともに強力に普及展開をはかっていくことを鮮明にした。

 本年12月より上市されるオキサジクロメホン混合剤はいずれも、その優れた効果に加え水稲への安全性も高く、使用場面に合わせてさまざまなバリエーションが取り揃えられている。さらに、系統自ら開発に携わることで、低コスト化に成功しており、経済性でも農家組合員が十分に満足できる除草剤に仕上がっている。

 JA全農では、事業の目標である「低コスト・省力・安全」のコンセプトにマッチした剤として、これらオキサジクロメホン混合剤を大きく育てていきたい考えだ。なお、オキサジクロメホンを有効成分とする除草剤のチラシ等には、[MY−100(オキサジクロメホン)入り]を示すロゴが入っている。
   (注)フルハウスフロアブル(製品名)。販売会社は(株)理研グリーン、(株)ユニカスの2社。

◆オキサジクロメホン混合剤はさまざまな特長が

 オキサジクロメホンにはその優れた特性を活かし、幅広い草種に効果を示す各種スルホニルウレア(SU)系除草剤との混合剤を中心に、さまざまな特長を持った混合剤が取り揃えられている。また、剤型も粒剤、フロアブル、ジャンボ、顆粒と、ほとんどの剤型を準備しており、使用場面によって除草剤を選択できるのが大きな魅力だ。

◆生産資材費低減を推進する系統農薬事業の求心力に

 オキサジクロメホン(MY-100)は、JA全農とアベンティス クロップサイエンス ジャパン(株)の共同開発によるが、農薬原体の保有が懸案であったJA全農にとって初の農薬登録の取得であり、この意味ではJA全農にとって歴史的な瞬間だ。
 JA全農の農薬事業の中心となっているのは水稲用農薬であり、とりわけ水稲用除草剤はその核にある。JA全農が除草成分オキサジクロメホンを保有したことの意味は極めて大きく、今後の系統農薬事業の求心力となってくるのは必至と見られる。

 バリエーションに富んだオキサジクロメホン混合剤は、生産資材費低減を推進するJA全農にとって大型の戦略品目であり、販売会社に有力大手企業5社を起用したこともインパクトがある。この中で「全ては価格政策に左右されてくる」、というのが本紙の見解。

◆10万haを超えるのは5剤のみ――除草剤の現況

 一方、除草剤の現況を見ると、現在の推定延べ水稲防除面積は約306万haとなっている。水稲用除草剤の品目数を見ると約200剤強となっており、剤型別には1kg剤約60品目、3kg剤約70品目、ジャンボ剤9品目、フロアブル剤約40品目、乳剤約10品目、その他茎葉処理剤の構成になっている。
 そのうち、一発剤だけの面積は約50〜60%だ。また、防除回数は、ピーク時の2.8回から現在では1.6回と減っており、全体の使用量を下げている。因みに、10万ha以上の防除面積を超える薬剤はザーク、ウルフエース、ソルネット、クサトリエース、ジョイスターの5剤のみ。  (水稲除草剤使用面積の推移

 この状況下、北を中心にSU(スルホニルウレア)抵抗性雑草が問題となっている。各県はこの対策に「有効な成分の入った一発剤の利用や、初期剤と中期剤の体系処理を指導」するなどに注力しているところだ。オキサジクロメホン混合剤ではクロメプロップ、ブロモブチドなどSU抵抗性雑草に有効な薬剤も取り揃えており注目したい。
 さらに、特記したいのはジャンボ剤の動向であろう。現在ある9剤のうち実質的に市場にあるのは4剤。2002年には約30剤に拡大するものと見られ、日植調の委託試験のうち約40%がジャンボ剤であることからも、将来の展望ができるのではないか。もちろん、オキサジクロメホン混合剤も多くのジャンボ剤がそのステージにある。

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資料提供:(財)日本植物調節剤研究協会

◆各販売会社の期待とその周辺   MY-100含有除草剤一覧

 

イヌホタルイ
アゼナ

 クミアイ化学工業(株)の「パットフル」は、業界初の”豆つぶ除草剤”として他製品と差別化でき、その使いやすさに魅力がある。粒剤は軽量、少量、簡便、安全性と環境問題に広く対応できる製剤であり、ジャンボ剤はこの豆つぶ剤をパック化した。
 武田薬品化学工業(株)の「サラブレッド」は、低コスト薬剤として注目したい。本紙推定で約20%の低廉価格になるものと思われ、JA全農の低価格資材の普及路線にマッチする。また、近年普及拡大しつつある省力散布技術「田植同時散布」にも適している。
 日本農薬(株)の「サムライ」は、「非SU型」除草剤として異彩を放つ。最近各地で問題化している雑草に対しても卓越した効果が期待される。同社では、効果と経済性を両立させた水稲用除草剤として、全国的な普及推進活動を強力に展開していく。
 日産化学工業(株)の「トレディ」は、省力・省資源の水稲用除草剤として定評がある。本剤は、加圧散布機・田植同時散布装置などを利用することにより、除草剤の散布労力の軽減と散布時間の短縮を果たした。将来的には、粒剤にも期待が寄せられている。
 北興化学工業(株)の「ホームラン」は、「MY-100」混合剤の中で、業界評として大本命とされている。特に「ミスターホームラン」は、問題雑草に十分対応できる農家のニーズにあった除草剤であり、同社除草剤事業の回転軸となるのは必至だ。

●○● JAグループ農薬事業構築の起爆剤に ●○●

◆「混迷期にある」農薬事業

松尾常務とデュピュイ社長 JA全農がMY-100の農薬登録を取得し、これへの期待が高まっているが、最近の農薬市場はどうなっているのか。JAグループの農薬事業の現状はどうか、それにどう対応しようとしているのかなどをみながら、そのなかでのMY-100の果たす役割を考えてみたい。

 国内の農薬事業は、強化される減反政策などによって、その需要は年々縮小傾向にある。それに加えて、再編によって巨大化した海外原体メーカーの直販志向が強まり、国内農薬メーカーの経営は大きく疲弊してきている。そのことは、いままで系統を支える製剤メーカーとの提携によって進められてきたJAグループの農薬事業にとっては、その根底が大きく変化しているということであり、それにどう対応していくのかが問われているといえる。  

 また組織的には、JAの合併、連合会の統合などが進み、JAと連合会の関係も変わってきている。生産者との関係も従来のような指導購買では維持できなくなり、予約率の低下や購買力の分散がおき、組織結集力が弱体化し、JAグループの取扱実績も減少傾向にあり、組合員との具体的な絆を価格でしか示せないという状況も生まれている。

 こうした状況を、簡潔に一言で表せば「農薬事業は混迷期にある」といえよう。こうした状況にJAグループはどう対応していこうとしているのだろうか。そういう点からみれば、価格問題をどうするのか、という重たい課題もJAグループにはあるといえよう。

◆予約運動の再構築を柱に―「農薬新運動」

 JA全農は、こうした状況変化に対応して、JAグループの農薬事業の再構築とシェアの拡大をはかるために、この12月からの13農薬年度から「農薬新運動」を展開することにした。
 この「新運動」は、来年春には過半を超える経済連と全農との統合が実現するので、全農の事業のあり方が従来の対県から対JAへ移行することになる。そのため「現在のJAと県間で組織的に欠けていることの見直しを行い、再構築をはかろうという姿勢で対JA要領の骨格を再整理した」と山内元二JA全農肥料農薬部次長。全農としては、卸的な機能をもつ県への要領から、直接ユーザーにアクセスするJAにどういう事業展開をしてもらうかという要領への転換をはかるということになる。

 その柱となるのは「予約運動の再構築」だ。全農が行ったJAの予約実態調査によれば、多くのJAの農薬事業は「予約運動が中心になっている。さらに、予約に対する引取り率は平均で90%を超えており、予約が系統の事業の柱となっている」。しかし最近は、予約だけでは取りまとめられないニーズが高まっており、「それにどう応えていくかという問題もあるが、それは画一的にはできない」ので、JAと協議していきたいと考えている。
 そのために、農薬年度の初めにJAと協議をして、「その年の目標を共有し合う事業検討会を幅広く実施して、一緒に運動を進めていく」というやり方の骨格を定めたという。

 現在、農薬事業での予約率は60%程度だとみられるが、この比率を引き上げるために、現状では年1〜2回の予約を今後は作付け実態に応じてこまめにやっていきたいとしている。対県要領では限月価格になっているが、これにこだわらず期別予約など現場の実態に即した方法を入れていくことも考えている。

◆JAの要望に応え、早めた価格交渉

 また、農薬年度がはじまる前にJAとの事業検討会を開くことを提起している。JAの予約運動が10〜11月というところもあり「価格がない予約への組合員からの不満もある」ことから、今年の価格交渉は例年よりも早く行われている。新剤であるMY-100関連剤はまだ価格設定は終わっていないが、「低コストで出せるのでその経済効果は大きい」とみている。

 一方では、全農が海外原体メーカーから直販する品目とか、今年中の登録を目指している「ジェイエース」のように全農がメーカーとなる品目をプロモートする部署として、肥料農薬部に農薬推進企画課が設置されたが、これがそろそろ本格的に始動するという動きもある。
 「ジェイエース」に次ぐジェネリック(特許切れ)農薬については、具体的な品目はまだないようだが、国の制度化も来年にはされる見通しであり、国が提唱する低コストにも応えられる流れでもあるので、「全農の使命からしてこの後も取り組んでいかなければいけない」と考えている。

◆MY-100で低コスト価格の設定

 こうした一連の動きのなかで、「MY-100」はどういう位置づけにあり、何を期待されているのだろうか。
 山内次長は「農家組合員に予約はもちろんお願いしていきますが、そういう仕組みの問題ではなく、目に見える価格で低コスト価格の設定ができ、提示できると思います。そのことで、系統組織の意義も改めて見直してもらえるのではないか」という。

◆時代の流れ「環境問題」にも応えた農薬

 低コストという意味では、投下量が既存のヒエ剤に比べてきわめて少量だということも、生産者にとっては魅力になるだろう。
 投下量が10aあたり4〜8gというのは画期的なことだ。そのうえ土壌吸着力が強く地下水や河川水への流出が少ないという。従来、環境問題を語るときに、水田は環境を守っているという視点が強く、農作業そのものが環境に負荷を与えているという点が省みられない傾向があったが、これからは時代の流れとしてそのことを生産者も無視することは許されないだろう。そういう意味でもMY-100は時代のコンセプトに合致した農薬だといえる。

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 「混迷期にある」JAグループの農薬事業を再構築する起爆剤としてMY-100への期待が大変に高いわけだが、本当にこれが起爆剤となるためには、JAグループの組織をあげての真剣な取り組みが必要なことも間違いない。記者会見の様子やさまざまな取材を通して、「全農はやる気だな」という熱意が伝わってきた。


「長期の効果で安全な農薬」を積極的に推進
 ― JA千葉経済連

◆5剤を12ヶ所で委託試験

 JA全農からオキサジクロメホン(MY-100)の委託試験を要請されたJA千葉経済連技術普及室は、県下のJAと相談して平成12年から5薬剤を、砂質の土壌や粘土質土壌など条件が異なる12ヵ所で試験してきた。
 その結果、MY-100は田植と同時に使うことができ、水稲への安全性が高く、ノビエなどの雑草に「きちんと長く効き、効果があり、普及性があるレベルの高い農薬」との評価をえた、と委託試験を担当した技術普及室の大恵田恵三室長は語る。

 試験を担当した同室の櫻井剛志さんも「県内では代掻きから田植まで2週間くらいあく所もあるが、2.5葉期まで効くので取り残しがないこと。一発処理なので、農家の省力化にもなる」と評価している。
 こうした試験結果のデータは、県下JAの営農担当者の組織を通じて、各JAにすでに伝達ができているという。

◆13年の防除暦にも取り入れ普及

 千葉県では、経済連が県とも相談をしたうえで、JAと協議しながら県下の防除暦を作成しているが、13年の水稲用防除暦に、県内の条件にあったMY-100のフロアブル剤を組み入れることにし、JAでの取扱いを要請している。
 この剤にしたのは、早場米地域では、水田に藻が出るので拡散剤が使えないこと、SU抵抗性植物に高い効果があること、生産者が最近、フロアブル剤になじみ定着してきたこと、などがあげられた。
 防除暦には総合的に考えて、さまざまな県内の条件に合っている剤が取り入れられるが「場面場面では、他のMY-100剤が使われることがある」(大恵田室長)のは当然だろう。

 まだ最終的な価格は決まっていないが「安くてきちっと効けば、生産者は受け入れてくれる」という。千葉県は、既存農薬の場合、JAグループが価格を下げると、すぐにそれを下回る価格のものが出てくるという価格激戦地域だ。そして、大規模生産者ほど、当然だがコストに敏感だといえるから、どういう価格設定になるかは、普及推進にとっては大きな課題だともいえる。
 しかし大恵田室長は、今回のMY-100は、「全農がきちんとした姿勢を示し、音頭をとって、体系化できている」ので、数年のうちには県下の水稲作付面積(約6万4000ha)のほとんどに普及することができると、自信のほどを語ってくれた。

 厳しい減反と米価低迷など苦しい状況にある農薬事業を活性化するために、このMY-100が大きな求心力を発揮してくれることに期待しているし、そのために経済連としても努力していこうという積極的な姿勢が感じ取れた。

21世紀にふさわしい除草剤と確信JA全農常務理事 松尾英章

 JA全農とアベンティス クロップサイエンス ジャパン(株)は、かねてより新規除草剤「オキサジクロメホン(MY-100)」の開発に平成5年頃より取組んでまいりました。
 この剤は、JA全農が海外原体メーカーと本格的に共同開発に取組んだ初めての農薬であり、この度、別掲の通り各種水稲用混合剤および芝用単剤が農薬登録となりましたので報告します。

 オキサジクロメホンは、水稲に対する安全性が高く、田植同時処理が可能で、しかもノビエの2.5葉期までの広い処理適期幅を持ち、その上約50日以上の残効を示す優れたヒエ剤です。また10aあたりの薬量が極めて少ないうえに土壌への吸着力が強いため、地下水や河川水への影響が少なく環境に優しい除草剤でもあります。
 さらに、その優れた特性から農林水産省の「新農薬開発促進事業」に除草剤として初めて取上げられました。この事業は、有効な新農薬の開発を促進することを目的として国が資金を造成し、登録に必要な毒性試験などの実施に運用しているもので、本剤は国が期待している農薬といえます。まさに、21世紀にふさわしい除草剤としてご利用いただけるものと確信しております。

 オキサジクロメホンを含む各種除草剤の開発に当たっては、それぞれの使用現場に適した薬剤が選択できるよう品揃えに努めるとともに、剤型も1kg粒剤をはじめ、フロアブル剤、顆粒水和剤、ジャンボ剤など豊富な剤型を取り揃えました。また、製剤各社の協力を得て系統のみの取扱いを基本とした品揃えをすることができました。
 オキサジクロメホン混合剤は、本会の事業目標である「低コスト・省力・安全」のコンセプトにまさに合致した剤であり、系統農薬事業の中核となる剤と考えております。  

 


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