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MA米見直し求める
機動的なセーフガード発動も
WTO農業交渉への日本提案に反映させるJAグループの主張(組織協議案)を提起

 減反を拡大しても輸入米(ミニマムアクセス)が増えて米価低落に歯止めがかからない、青果の輸入が急増してもブレーキ(一般セーフガード)が効かないなど世界貿易機関(WTO)農業協定がもたらす日本農業への打撃は大きい。その協定を見直す農業交渉が3月から続いている。各国は年末までに交渉提案を提出して来年から本格交渉を始める。これをひかえてJA全中理事会は10月5日「WTO農業交渉に関する日本提案策定に向けたJAグループの主張について」と題する組織協議案を決めた。
 これをもとに各界と交流しながら組織協議を進め、11月15日までに全国からの報告を受け、その結果を27日にとりまとめる。それを政府、自民党とのWTO農林水産問題三者会議に提起し、JAグループの主張が日本提案に最大限反映されるようにする方針だ。

 組織協議案は、WTO交渉の目的を「農産物貿易の自由化そのものを目的とすべきではない」とし「農業の多面的機能や食料安全保障などを十分に評価する交渉にすべきだ」との主張を基本に据えた。自由化が農産物輸入国の農業を衰退させ、国土を荒廃させている事実を踏まえての主張だ。
 だが豪州を中心としたケアンズグループ(15ヵ国)や米国などは、この主張を「保護主義の口実に過ぎない」と批判し、食料輸出国の利益を追求する構えだ。

 食料安保についても、食料を自由に買えるのが安保であるとして、輸入国の食料自給率を無視している。
 このため組織協議案は、日本の主張にほぼ同調するアジアの農業者グループや民間組織(NGO)、欧州の農業団体などとの連携をさらに強めていくことを重要な取り組み課題とした。

 ミニマムアクセス
 米価の低落と共に農家はミニマムアクセス(最低輸入義務量=MA)への反発を一層強めている。組織協議案はMAの仕組みを改めさせる強力な運動の展開が必要であると提起した。
 政府は「MA米による転作強化はしない」というUR合意の際の閣議了解を守らず、来年は史上空前の生産調整規模となる。
 農水省は「MA米が主食用に流れたら、その分の国産米を主食用以外に回すから影響はない」などと説明していたが、大量のMA米が加工用に仕向けられているため、国産の加工用米が行き場を失い、低価格のまま主食用に回っている。

 UR合意以後の1995年から昨年までのMA輸入米は合計約294万tとなり、国産米の在庫量280万tを上回った。今年度はさらに76万7000tの輸入を押しつけられる。
 さらにMA米を海外援助に振り向ける際もいったんは国内に輸入し、1年間は国産米と同等の販売機会を与えた上でないと援助に回せないという規定があり、WTO協定には輸入国が損をする仕組みが多い。

 しかしMA米数量の見直しを主張した場合、輸出国はその代償として2次関税水準の引き下げ、マークアップの縮小、輸入国家貿易企業のあり方の見直しなどを求めてくる可能性があり、これを、どう打破するかが重要課題となる。

  セーフガード
 輸入急増による打撃を防ぐためWTOは全品目の緊急輸入制限(一般セーフガード)を認めている。しかし日本は一度も農畜産物では発動していない。
 輸入による悪影響の調査と立証に時間がかかり、また輸出国に代償を与える努力が必要な上、対抗措置を取られる恐れもある。
 JAグループは96年にニンニクとショウガで発動を要請したが、見送られた。

 この経験から組織協議案は、季節性があり、腐りやすいという農産物の特性に対応したセーフガードを農業協定の中で措置するよう提起した。機動的で効果的に対応できるように、自動的な発動が可能で、代償のいらない措置にすべきであるという主張だ。
 一方、特別セーフガードはUR合意による関税化品目だけに認められ、輸入数量と価格の低下が基準を超えた場合、自動的に関税を引き上げることができ、補償措置もいらない。日本の発動実績は29件にのぼる。
 組織協議案は、この措置の継続を主張した。だが米国は廃止を求めている。

  国内支持
 UR合意では、農産物の価格支持政策を今年までの6年間に助成量総額で2割削減すると約束した。削減対象は「黄」の政策と呼ばれる。「青」と「緑」に分類された政策は削減対象外である。今後の取り扱いについてはケアンズなどが黄の政策の大幅削減や撤廃を主張している。
 これに対して組織協議案は、現行の2割削減という枠組みを基本に現実的な水準にすべきだとした。
 日本はUR合意後、食糧法の制定や新たな酪農・乳業対策への移行などで黄の政策を大幅に見直し、現状は農業予算3兆円の9割が緑の政策となった。組織協議案は、こうした政策変更は積極的に評価されるべきであるとも主張している。

 一方、日本に青の政策はない。EUは、これに分類される生産者への直接支払いを実施しているため青の継続を主張しているが、ケアンズや米国は撤廃を強く求めている。
 組織協議案は、黄から緑への円滑な政策転換の中間点として青の意義を評価し存続させるべきであるとEUの立場に理解を示した。EUには黄の政策も多い。JAグループの主張はこうした事情も考慮している。
 緑の政策については、その要件の見直しは必要最小限としつつ、農業生産と完全に切り離した農業政策は現実に不可能なことから、農業の実情に即して見直すべきだとした。
 これはUR合意が緑の政策の要件を「貿易を歪めるような影響または生産に対する影響が全くないか、あるとしても最小限」としているためである。


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