野菜輸入の急増で価格が暴落。主産地はタマネギやキャベツを廃棄しており、全国で700近い自治体が一般セーフガード(緊急輸入制限措置)の発動を求めるなどの意見書を国に出した。JA県大会などの発動要請決議も相次ぎ、15日には主産地の8JA経済連とJA全農の代表が農水省に発動を要請した。このため同省も重い腰を挙げ、農家の悲鳴に応える構えだ。
今年上半期のタマネギ輸入量は前年同期の7割増となり、国内市場シェアの2割を超える勢い。生シイタケ輸入の伸びも4割以上となった。最近は日持ちのする品目だけではなく、低温輸送の技術向上などで痛みやすい品目の輸入も増加。
農水省のまとめでは、韓国産の場合、今年は1−9月でメロンが前年同期に比べ3.5倍、トマトとスイカが2.4倍の輸入増。
中国産はブロッコリーが3.4倍、サトイモとネギが1.7倍と増えた。
このため例えばキャベツ10kg(8個)が50円、ハクサイ15kg(8−9個)が200円など段ボール代にもならない落ち込みだ。
価格指数は1995年を100とすると、今年7月にはタマネギが40、レタスが約56、ニンジンが64、主要野菜総合で79.7(農村物価指数から)となった。
しかし、この指数は、畑にすき込んだり、出荷を見合わせるなど廃棄処分をしたあとの価格であり、農家の実感はもっとひどい。
廃棄を見て「つぶすくらいなら下さい」と頼む消費者もいるが、国の緊急需給調整事業による廃棄とあって、それに応じることができず、JAに対するイメージ低下も懸念されるなど暴落の波紋は大きい。
農水省はセーフガードを発動する構えで高木勇樹事務次官は20日「きちんとしたデータをそろえて大蔵、通産両省との協議に入りたい」と語った。
同省はすでに輸入増加率や価格低下率などのデータをそろえ、ネギ、トマト、タマネギ、シイタケの4品目については、さらに検討する。しかし、これは、まだ事前調査の段階だ。
世界貿易機関(WTO)の一般セーフガード協定にもとづく調査は大蔵、通産両省との認識が一致しないと実施に入れない。
発動が極端に遅れている事情の一つに、中国からの開発輸入の激増がある。
「日本の商社などアグリビジネス3000社余りが開発輸入を競い、卸売市場を通さず、量販店に直接販売をしているが、農水省はこれを『先進的流通』と位置づけているため、発動に慎重にならざるを得ない」と農民連はみている。
日本の高い農業技術が中国に渡り、それが日本の農家の首を絞めている形だ。
東北大学の河相一成名誉教授は「価格下落の原因を過剰生産に求めるのが経済学の常識だが、日本では生産が減り、農産物が不足し、自給率が下がっているのに値崩れがひどい。常識はずれの構造になっている」と指摘している。
なお一般セーフガードはガットの時代から各国が気軽に発動しており、WTO体制以後も7ヵ国が発動したが、日本はまだ一度も発動していない。
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