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共済事業を考える
磐石な事業基盤確立のために生命共済の推進を
−JA共済12年度上半期普及推進実績をみて−

◆大手生保を上回る新契約実績

 JA共済の今年度上半期(4月〜9月)の普及推進実績が先ごろ明らかになった。
 それによると、9月末までの上半期の長期共済の新契約実績(保障金額)は、前年同月実績を約1兆7211億円上回る17兆9110億円、前年同月比110.6%となっている(表1)。年金共済の新契約実績(年金額)も、前年同月比122.9%と大幅に伸長している。
 短期共済も、自動車・自賠責が着実に伸びており、短期共済の合計で件数が前年同月比102.8%、共済掛金が同102.9%と昨年9月末実績を上回っている(表2)。

 最近の保険業界は、千代田生命をはじめとする相次ぐ経営破綻による消費者の「保険不信」と一向に回復しない景気の影響などによって、厳しい状況下にある。
 11月25日現在、9月末の生保のデータが公表されていないが、8月末の状況を見ると(表3)、生保大手7社(日本・第一・住友・明治・朝日・三井・安田)の個人保険新契約金額(保障)は、前年同月比96.7%となっており、保有契約高も前年同月比96.9%と減少しているのが実態だ。
 これに対してJA共済の8月末をみると、長期共済新契約は前年同月比108.5%と生保大手の平均を上回る伸展をみせ、保有契約金額も前年同月比99.9%とほぼ前年実績を確保する健闘をみせている。

◆建更は大幅に伸びたが、低迷する生命共済

 しかし、長期共済の契約内容をみるとけっして問題がないわけではない。その最大の問題は、生命共済の低落に歯止めがかかっていないことだ。
 生命共済新契約については、11年度末実績で10年度末よりも4兆円強減少し、昭和60年代の水準にまで落ち込んでいるが、9月末実績では前年同月比92.9%という状況になっている。
 長期共済全体でみれば、JA共済の長年の夢であった「建更10型」の登場によって、昨年度から建更が大幅に伸び、全体の実績を引き上げている。その傾向は今年度も引き続いており、建更の9月末実績は前年同月比129.3%、10兆1669億円と大きく伸長している。この結果、長期共済全体に占める建更の割合は56.8%となり生命との立場を完全に逆転した(10年度35.5%、11年度50.1%)。

 11年度末にJA共済がはじまって以来、初めて前年度を下回った保有契約も、建更では純増しているが、生命が落ち込み、長期共済全体では、9月末で期首(4月1日)保有高よりも8375億円強純減している。

◆若年層で減少する被共済者数

 生命共済の低迷について、一番気になるのは若い層を中心に被共済者が減少していることだ。
 生命共済の被共済者数は平成6年度末の1620万人強をピークに毎年減少し、この9月末には11年度末より19万6000人余少ない1480万人となっている。しかも11年度末から減少した約20万人の内、40歳以下の年齢層が約13万人も占めている。JA共済の将来を考えると、こうした若い層の減少は事業基盤の縮小に加速度的な影響をおよぼすといえるのではないだろうか。

 その原因はどこにあるのか。あえていえば「競争が厳しい新規顧客を開拓せず、既存契約者をまわり、建更5型から10型への転換を中心にした推進になっていて、組合員以外の地域の新しい顧客を獲得する活動が十分に行われていない」ところが多いからではないか。確かに外に向かって攻勢をかけるのはきつい時代であり、生・簡保の切り崩しから既存顧客を守るために多くのエネルギーが必要だともいえる。しかし、それでは事業基盤を固め拡大していくことはできない。

◆「大競争」のなかに撃って出ていくことも必要では

 経営的にみれば、生命共済の落ち込み分以上に建更が伸びていることとて、問題がないとは言えない。現在の「建更景気」が建更の性格からみてもこのまま続くとは思えない。保険業界の状況をみれば「建更は一巡したからまた生命で」といっても、それを受け入れるほど市場は甘くはないだろう。
 建更は、他に競合商品がないともいえる商品で、JA共済らしい商品ではある。だが、JA共済の根幹である生命共済が減りその穴埋めを建更がしている現状でよいのだろうか。少なくとも生命共済が現状を維持し、その上に建更がプラスされることで、JA共済の事業基盤は磐石なものとなるのではないだろうか。

 良くも悪くも共済事業が現在のJAの経営を支えていることは事実だ。経済事業の収益性が改善されていくことにいささかも疑念をもたないが、共済事業とともにJAの経営を支えるようになるには、まだ多くの時間が必要だと思う。今後5年、10年先のJAの経営を考えると、いま、共済事業の基盤をしっかりと固めておくことが大事ではないだろうか。そのためには、満期や解約・失効対策など守りの対策と同時に、あえて「大競争」のなかに撃って出ていくことも必要ではないだろうか。生命共済はそれに耐えうる商品力をもっているし、LAをはじめとする担当者にも十分その力はあるはずである。

 今年度も残りわずか4ヶ月となるが、ぜひ、生命共済の低落に歯止めをかけ、来期以降の展望を切り拓いていただきたいと思う。

 


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