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野菜の緊急輸入制限に苦しい事情
中国側より日本側の開発輸入競争が問題
政府調査の先は長い


 輸入急増で価格が暴落しているネギ、生シイタケ、畳表(イ草)の3品目について緊急輸入制限(一般セーフガード)の発動に向けた政府調査が12月22日から始まった。来年4月27日までに利害関係者からの意見を聞くなどして5月にも発動するかどうかの結論を出す。農水省が政府調査を求め、大蔵、通産、農水の3相が調査実施を19日決めた。日本政府としては初めての調査入りだが、発動されるとしても来年初夏以後のことだから、それまでに農家が受ける打撃は大きい。

 来夏の参院選を控えて自民党の農水議員は発動に積極的だが、対象3品目は中国からの輸入が圧倒的だ。このため中国から話合いを求めてきて解決に至れば発動は回避される。
 しかし中国の農民に生産させ、洪水のように輸入しているのは日本の商社などアグリビジネスだ。3000社余りが開発輸入を競って、卸売市場を通さず、量販店に直接販売している。
 農水省は、これを「先進的な流通」と評価しているから輸入制限には慎重な姿勢を併せ持つ。日本の高い農業技術が中国に渡り、それが日本の農家の首を絞めている形でもある。
 このため日中交渉で中国側が自縄自縛?を指摘したら日本側はどう対応するのか。事情は複雑だ。

 政府調査は、輸入増加が国内産業に与える重大な損害などを調べ「事実の有無について認定する」。
 日程は、来年3月22日までに利害関係者から証拠を出させ、証言をさせる。さらに4月27日までに利害関係者に意見表明をさせる。
 利害関係者というのは生産者と、その団体、輸入および流通業者、実需者、消費者だ。  生産者側は損害を立証するが、輸入業者などによる利益の立証もなされる。輸入制限をすれば業者の損害に加え、安い輸入野菜を買っている消費者の損害も比較、検討の俎上にのぼる。

 「即時発動」を求める農民団体は農水はじめ大蔵、通産両省へも陳情をくり返しているが、例えば通産省貿易対策室では「輸入による損害の証拠があるのか」などとクールな応対だ。
 しかし全国の県市町村議会は発動を求め意見書を続々と政府に提出している。
 その数はすでに900以上に達し、輸入急増による農業生産額の低下が地域経済に与える打撃の大きさを物語っている。またJAグループも各地で発動要請をくり返している。



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