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円滑な経営継承の取り組みで
畜産生産基盤の維持・確保へ

行政と支援対策と連携したJAグループ独自の対策を展開
JA全中・食料農業対策部農業生産対策課

 JA全中は、3月6日の理事会で「畜産経営継承支援事業」の実施要綱を決めた。わが国の畜産は高齢者や小規模農家の廃業がすすみ、また、畜産物価格の低迷、環境対策のコスト増など厳しい環境にさらされている。そのため経営体質の強化や円滑な経営継承による生産基盤の維持・確保が求められているが、同事業はJAを対象に畜産の経営継承を支援するものでJAグループとして初の取り組みだ。JA全中・食料農業対策部農業生産対策課に概要を解説してもらった。

畜産経営の継承支援事業の創設を決定

◆ 事業創設に至る背景

 JAグループでは、昭和60年度以降、第4次にわたる畜産農家の経営改善に向けた全国運動を展開し、この間、全中では体制整備や補助事業等の面で全国連や行政からの支援を得て取り組みを推進するとともに、県段階においては地域の実情をふまえさまざまな取り組みを展開してきた。
 しかし、わが国の畜産は、高齢者・小規模農家を中心とした廃業がすすむなど地域農業の担い手の確保が困難な状況となっており、近年の不況・輸入増にともなう畜産物価格の低迷や畜産環境対策にかかるコストアップ、負債問題など畜産生産基盤をめぐる情勢は一層厳しいものとなっている。
 こうしたなか、昨年3月には「食料・農業・農村基本計画」で自給率向上に向けた生産努力目標の設定が行われるなど新たな環境変化のもとで、政府の施策の展開状況、畜産負債の現状や組織整備の進展等によるJAの畜産経営改善指導体制等の実態などをふまえ、従来の取り組みに替わる新たな対策を検討していくことになった。
 そこで、全中では昨年5月から、畜産・酪農対策本部委員会のもとに設置した「畜産・酪農基本政策研究会」「新たな経営改善・負債対策研究会」で検討をすすめ、その後の組織討議等の結果を受け、昨年秋の畜産・酪農政策・価格対策運動において、政府・与党に対し、「地域の畜産生産基盤を維持・確保し、経営継承の支援をはかるJAグループの総合的な取り組みに対し、支援対策を講じること」と要請した。
イメージ写真 こうした要請をふまえ、政府が13年度畜産物価格関連対策で、新たに畜産経営総合改善指導事業を創設するなどの措置を講じたこともあり、行政との一体的な取り組みを基本に、行政からの支援との連携をはかりつつ、円滑な畜産経営継承の実現に向けたJA・県段階の取り組みを支援するJAグループ独自の対策として、畜産を対象とした本事業の具体化をはかっていくことになった。
 一方で、畜産経営は多額の資本装備を要するなど投資負担が大きく、資金の回転期間が長いなど、他部門と比較しても想定される諸リスクが大きいことから、JA経営に与える影響等も鑑み、畜産生産基盤の維持・確保をはかりつつ、畜産の経営継承や経営改善対策をはかる支援対策の措置を講じることになったものである。
 その後、さらに各段階における具体化に向けた検討をすすめ、本年2月7日の畜産・酪農対策本部委員会で本事業創設についての承認を得て、3月6日の全中理事会で事業実施要綱を制定した。

◆本事業の内容

 本事業は、経営中止者の土地、施設等を経営継承者が円滑に継承することのできる畜産経営継承の実現に向けた県域(JAおよび県段階)の取り組みを全国連(全中・全農・全共連・農林中金)が支援する対策として位置付け、JAを事業実施主体とすることを基本に、13年度から17年度までの5年間、初年度は5億円を支援額の上限として展開することとしている。
 具体的な事業内容については、事業実施要領等の制定に向け、現在、詰めの検討を行っているが、大別して、@JA出資法人等の育成および経営確立・安定化の推進、A体制整備等への支援の二本柱を掲げている。(図表参照

◆JA出資法人等の育成および経営確立・安定化の推進

 経営継承者であるJA出資法人等が畜産経営を展開するにあたり、その初期投資負担の軽減等をはかる観点からの条件整備面に着目した支援であり、主としてハード事業を想定した内容である。
 具体的には、JAが自ら行う機械・器具・施設の整備や家畜の購入および飼料生産圃場の簡易な整備、さらには機械・施設等のJAによる一時保有に要する諸経費などに対する助成の実施を検討している。
 その際、取り組み内容にもよるが、国の補助事業である「畜産経営活性化事業」や「新規就農円滑化モデル事業」等の活用も合わせて想定している。

◆体制整備等への支援

 円滑な畜産経営継承の実現に向けたJA等の体制の確立をはかるにあたり、その立ち上げ、初度的な取り組み面に着目した支援であり、主としてソフト事業を想定した内容である。
 具体的には、JAにおける専門部署・専任者の設置等の体制整備確立および畜産経営の体質強化や健全化をはかる取り組みなどに加え、JA指導員が経営継承者に対する濃密な経営管理・技術指導を実施するための指導費としての助成の実施を検討している。
 その際、国の補助事業である「畜産経営総合改善指導事業」等の活用も合わせて想定している。
 なお、平成14年度から17年度においては、行政の支援対策や本事業の実績・実施状況等をふまえ、事業内容および所要額(支援額)について、必要な見直しを検討することとしている。

◆今後の取り組み

 本事業の実施にあたっては、県域(JAおよび県段階)における畜産経営継承の具体化に向けた取り組みの枠組みづくり(基本方針支援対策の策定や推進指導体制の整備等)を前提とするとともに、そこが大きなポイントとなっていることから、今後、県段階等への説明会の実施などの周知活動はもとより、手引書等の作成を行っていく予定である

畜産経営継承支援事業による助成




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