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解説記事

農家のパソコン所有は50%を超えたが
−−農水省「農家のパソコン・インターネット利用状況」調査を読んで

◆2年で倍増したパソコン所有

 農水省は昨年11月に行った「農家のパソコン・インターネット利用状況アンケート調査」の結果を、1月31日に発表した。
 これによると、パソコンを所有している農家は前年に比べ19.1ポイント増え、53.1%と半数を超えた。これは、平成11年の調査では25.6%だったので、この2年でパソコン所有農家は倍増したことになる。さらに「購入する予定がある」農家(8.5%)を加えると近々60%以上の農家がパソコンを所有すると予測される。
 また、パソコンを使ったインターネットの利用は回答全農家の32.8%となっており、前年調査よりも20.6ポイントの増加となっている。これに「利用予定あり」の16.4%を加えるとほぼ半数の農家がインターネットを利用あるいは利用する意思があるということになる。

◆地域によってまだ格差が

 パソコン所有率を部門別にみると花き・花木59%、施設野菜58.2%、酪農54.4%が高く、肉用牛40.7%、その他畜産45.5%、露地野菜46.3%などが平均を下回り、花き・花木と肉用牛では18.3ポイントの差がある。地域別には東海64.4%、近畿64.1%の所有率が高く、東北47.1%、九州・沖縄39.4%の所有率が低く東海と九州・沖縄では25ポイントも差がある。とくに九州・沖縄では「パソコンを購入する予定がない」という農家が43.5%もあり、他地域の22.6〜35%と際だった対照をみせている。
 パソコンを使ったインターネットの利用状況(全回答者対象)では、部門別では肉用牛、その他畜産が22%台と低い以外は大きな差異はみられないが、地域別にみると東海、近畿が40%台なのに対して九州・沖縄が22.1%とこの両地域より18ポイント、全国平均より10ポイント以上低く、今後も「インターネットを利用する予定なし」という回答が51.3%と半数を超えていることが目立っている。
 なぜこうした傾向が表れるのか、この調査からは読みとることができないが、農協協会が昨年同時期に実施した「JAにおけるインターネット利用調査」(近日結果を発表予定)の中間報告によると、JA職員のインターネット利用率が九州地区では他地域に比べかなり低くなっておりこのことと関係があるのかもしれない。

◆意外と低い農業経営への活用

 パソコンを農業経営に利用している農家は、パソコン所有者の18.2%で、今後利用する予定を含めても45.7%に対して、「農業経営に利用する予定がない」は52.8と半数を超えている。このデータをみる限りでは、パソコン導入が必ずしも農家経営の効率化・省力化のためではないということになる。地域別にみると、パソコン所有率の高い東海で、今後利用する予定を含めて37.7%と低いことがここでは際だっている。
 インターネットの農業経営への利用では、栽培技術等の生産管理情報の収集39.6%、市況・気象等の情報収集37.7%、産直・農業紹介・消費者との交流25%の順になっている。

◆高い携帯電話の普及率

 この調査では、携帯電話の普及状況についても調査しているが、携帯電話を所有している農家は74.3%とパソコン所有を大きく上回っている。携帯電話の場合には1家1台というよりは複数台あることも考えられ実際の普及率はもっと高いと推測される。さらに、携帯電話によるインターネット利用率は42%とパソコンによる利用を10ポイント近く上回っていることが注目される。

◆求められるJAの積極的な取り組み

 インターネットの利用環境が整ってきたことや、パソコン自体が従来に比べて使いやすくなったこともあって、都市部に比べて遅れているといわれた農村部でのパソコン普及が進んできていることが、この調査によって分かる。しかし、それが必ずしも農家経営に活かされていないという実態も見えてくる。これは、パソコンを経営に活かすためのノウハウの蓄積やインターネットを利用した農家に役立つ情報提供が、JAやJAグループに不足しているためではないだろうか。
 ITの有効な活用は、これからのJAにとってはもちろん日本の農業にとって避けては通れない大きな課題だといえる。農家のパソコン所有がせっかく増えてきているこの時期に、JAが積極的にこの問題に取り組み、農家を支援することが求められているのではないだろうか。

パソコン所有の有無 携帯電話所有の有無


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