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解説記事

 買物調査などで情報をつかんでから生産を
 販売体制をもっと強く

今村東大名誉教授の“語録”にみるJA改革の課題と論点

今村奈良臣氏

 今村奈良臣・日本女子大教授(東大名誉教授)がJA全中の「JA改革推進会議」の議長になった。すでに農水省の審議会や外郭機関の検討会など約10の議長や座長を務めているため、今回の議長就任では「官民の両方に二股をかけることになるが、敢えてやる」と兼務への挑戦を宣言。「JA改革のために一肌も二肌もぬぐ」とあいさつした。今村教授は各農民塾でも塾長として若い人たちにハッパをかけ、各地にファンが多い。農政課題への提言も多彩だ。そこで最近の発言から特徴的な内容を“今村語録”としてピックアップしてみた。     

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 「農産物の販売戦略には第1に『3331』の割合でリスクを最小にする原則がある。直売と加工と市場出荷が3割ずつ、あと1割が試作だ。価格が乱高する市場出荷はバクチともいえる。今は情報が発達し、消費者ニーズの分化や流通構造の変化があるから市場一辺倒ではだめだ。加工は6次産業だ。食品会社との契約栽培も含む。試作は2、3年先の需要を見通して行う。もちろん、この割合は一般原則だから産地の実情に応じて変えればよい」
 「第2は市場の需要を見てから種子を供給する原則を守ること。前もって販売先、売場、生産者手取りを見込むのが農協の担当者の役割であり、それが本当のマーケティングだ。その後で生産面を考えて、種をまく。これをやれるのは農協しかない。今までのように『作ったから売ってくれ』ではいけない。コメについても同じことがいえる」     

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 「営農指導との関係で、平均的に消費者は1日に何品目をどれだけ買っているのかといった買物調査が必要だ。JA甘楽富岡(群馬)はそれをやっているが、やっていない農協も多い。私は学生に調査させたが、それをしないと消費者ニーズはつかめない。販売高や生産者手取りを上げるために情報把握の徹底が必要だ」     

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 「耕作放棄地で牛を放牧すると1年半ほどで見事な芝草地に変わる。体重500kgの牛なら1日に50kgの生草を食うからだ。日本は農業の多面的機能を主張しながら耕作放棄地を増やし、外国から批判されている。このため、耕種と畜産の農家が牛を貸借して耕作放棄地を放牧地に変える“レンタカウ”を提唱している。JAはそうした地域戦略を立てるべきだ」     

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イメージ写真
 「中央集権的で画一的なトップダウン農政の時代は終わった。これからは下から上へのボトムアップ農政だ。地域提案型の創造的な農政の中から新しい知恵が出てくる。陳情などをする必要はないといった路線で地域農業戦略に取り組む農協を実現してほしい」
 「新しい試みの1例としては大分県竹田市内の『谷ごと農場』づくりがある。8つの谷の8集落が協定を結び、中山間地への直接支払い(5年間で1億500万円)の3分の2を集落営農推進に充て、作業受託組合の育成や耕作放棄地解消や加工販売に努めている。こうした試みを指導する農協トップが求められる」     

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 「農業人口を年齢別に見ると2、30代の専業は約15万人で1農協平均150人、集落数で割ると男は3集落に2人だ。農協トップは、この人たちが生き生きと営農できるような農業をつくらないといけない。また農協は女性登用が非常に遅れている。JA改革推進会議では、こうした問題点をめぐって議論し、明確な新路線を打ち出したい」


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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