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解説記事

  70%を超えるJAがインターネットを利用

「平成13年 農協へのインターネット利用状況アンケート調査」から

 これからの農業、JA経営にとってIT化、情報化は不可欠だといわれている。とくに急速に普及し、社会的にも経済的にも大きな影響力を発揮していきているインターネットをどう活用していくのかは大きな課題となっている。(社)農協協会では、平成12年からJAにおけるインターネットの利用状況についてアンケート調査を実施しているが、先ごろその13年調査の結果がまとめられたので紹介する。なお、各県別など詳細データについては、CD-ROM化し3月中旬に販売する予定にしている(詳細は後日、当ホームページにてお知らせします)。
 なお13年調査は 表0-1 のように、全国1195JA(奈良、香川は各支所)に調査票を送付し、1116JAから回答があり、その回収率は93.39%(12年は 表0-2 のように79.0%)だった。
表0-1表0-2

1 インターネットの利用状況


◆1年で56ポイント増加したインターネットの利用
 
 インターネットを「利用している」JAは グラフ1 のように、全国JAのほぼ4分の3にあたる73.9%(821JA)と、12年よりも56.2ポイントも増えている。これに「利用する予定」(119JA)を加えると84.6%と12年よりも50ポイント強増加している。また、「興味も予定もない」JAが12年から11ポイント減少し2.2%となるなど、12年7月から13年10月のわずか15ヶ月の間に、インターネットに対する認識が変化し、その利用は急速に進んできている。
地域別にみると 表1-1 のように、東海が「利用している」95.1%と全国平均を20ポイント以上上回り、東北(66.4%)、九州(67.5%)、北海道(68.5%)がやや低くなっているが、「利用する予定」を加えれるとほぼ全地域で80%を超えている。

表1-1

◆「情報収集」が利用の目的

表1-2

 JAがインターネットを利用している目的は 表1-2 のように全国平均では「情報収集」がほぼ半数を占めている。地域別にみても北陸で「E-メール」が48.7%と「情報収集」を上回っていること、東北で「情報収集」と「ホームページ開設」が同率である以外はほぼ同じような傾向にある。
 収集している情報(複数回答)は グラフ2 のように「経営管理に必要な情報」44.3%、「信用事業関係の情報」41.0%など、12年にはウェイトが低かった部門で20ポイント以上高くなっている。その反面で、12年には52.7%と半数以上のJAが回答していた「施肥・防除・栽培技術など営農情報」が35.2%と17ポイント、41.5%あった「コメや野菜など販売情報」が27.6%へ14ポイント、37.2%の「肥料・農薬など生産資材情報」が22.9%と14ポイント減少しているように、インターネットを利用した情報収集の質が変化してきている。
 「経営管理情報」の内容は、今回調査からは具体的に知ることはできないが、後に見る「よく見るホームページ」(表3-1)で、「JAグループ」という回答がもっとも多かったが、そのことと関連するのではないだろうか。
 地域別データを 表1-3 でみると、北海道では信用・共済事業関係の情報がかなり低くなっている。東北では、営農、販売関係の情報のウェイトが経営管理情報とほぼ同じウェイトを占めていること。北陸で信用事業関係情報のウェイトが高いこと。東海では、経営管理情報が70%近く、信用事業関係も60%近いウェイトを占めていること。近畿で営農情報が20%と他の地域に比べて低いこと。など地域による違いがあることが分かる。
 この項目では「その他」の回答が多いがその内容は、「天気予報」「気象情報」が多く、次いで「広報誌編集のための情報」など広報活動のための情報収集、「他JAの情報」など他のJAの動向や情報、「ニュース」など一般的な社会情勢を知るための情報、などとなっている。

◆まだ低いJA職員の利用率

 収集する情報が変化してきた要因は、JA経営が厳しい環境化にあることや、直接的には収益に結びつかない営農指導員の減少などいくつか考えられるが、この調査からは グラフ3 に見るようにインターネットを利用している職員が、全職員の「約4分の1」(58.4%)「ほぼいない」(24.9%)と83.3%のJAでほとんどの職員が利用していないことにあるのではないかと考えられる。
 表1-4のように比較的多くの職員が利用している(半数以上)のは、関東、近畿、四国だが、それも20数%のJAにすぎない。「約4分の1」と「ほぼいない」を加えると、九州では93.3%という高い数字になり、この地域ではインターネットを利用しているほとんどのJAで、経営幹部のみが利用しているのではないかと推定される。
 この数字は、インターネットを利用するJAは急速に増えたが、実際にインターネットを利用できる環境にあるのは、経営トップや部課長クラスまでというのが実態であり、組合員・農家ともっとも接する機会が多い現場の職員が利用できる環境が整えられたJAはまだ少ないということではないだろうか。JAを取材するとインターネットに接続されたパソコンが「各課に1台しかない」「パソコンが職員5〜6人に1台くらいの割合でしか置かれていない」ために、必要なときに、必要な情報を収集できないという現場職員の声をよく聞くことも事実だ。
 業務処理・事務処理の効率化・合理化を促進する面からも、全職員へのパソコンの配布とイントラネット(インターネット技術を活用した会内情報システム)の整備が、JAのIT化にとっては大きな課題といえるのではないだろうか。

2 ホームページの活用
 
◆ホームページ開設も21ポイント増加

 ホームページを開設しているJAは グラフ4 のように回答全JAの33.6%、375JAと12年よりも21ポイント増えている。これに「開設を予定」しているJAを加えると、60%近いJAがホームページを開設または開設を予定しており、インターネットの利用と同様に急速に普及しているといえる。
 地域別(表2-1)にみると、中国、北海道、四国で「開設している」「開設する予定」の合計が50%を下回り、東海では70%と高くなっている。

表2-1


◆まだ少ないアクセス数
 
 ホームページで提供している情報は、表2-3 のように「主たる対象者」としてホームページ開設JAの48.3%が「全国の消費者」、9.9%が「地元の消費者」と、約60%が消費者をあげていることもあってか、表2-2 のように90%近いJAが「自JAの紹介」と回答している。また、信用事業・共済事業関係の情報が12年と比べて増えている。JA経営にとって大きな柱である信用・共済事業について、ホームページでも力を入れていこうということだろう。
 実際にアクセスしてきている利用者でもっとも多いと思われるのは、JAが「主たる対象者」と考えているのとほぼ同じ傾向を示している(表2-4)。
 しかし実際のアクセス数は、年間0件から22万件以上と大きな差があるが、その分布をみると グラフ5 のように年間1万件未満(1日28件以下)が75%以上と大半を占めている。とくに九州では85%のJAホームページのアクセス数が1万件未満となっている。また、開設JAの割合が多い東海では、比較的アクセス数の多いJAの割合が高くなっている(表2-5)。
 利用者からくるEメールの年間件数も約80%のJAで500件未満となっている(表2-6)。
 
◆運営体制の整備・充実が課題

 アクセス数が少ない原因としては、「主たる対象者」である消費者の各JAのホームページに対する認知度が低いことも考えられるが、表2-7 のように自JAのホームページに「満足していない」という回答が60%近くあることにあるのではないだろうか。「満足していない」具体的理由として「コンテンツ不足」「情報量が少ない」や「内容が充実していない」など情報の質・量をあげているJA。「立ち上げて2年間全面的な更新をしていない」「JAで更新できない」「更新に必要な人員、端末の不足」「更新がスムースにできない」などメンテナンス面をあげるJAが多い。
 ホームページは開設したが、運営体制が整備されきれず「内容が貧弱で更新がなかなかできない」ために、消費者にとって魅力が少なくリピーターが増えず、アクセス数が伸びないのではないだろうか。
 もう一つは、表2-4 「もっとも多いと思われる利用者は」という問いに、65%のJAが「消費者」と答え、もっとも身近な存在といえる「組合員」と答えたJAは22%だったことについて考える必要があるのではないだろうか。
 主たる対象者が消費者だから当然とはいえるが、農水省の調査(「農家のパソコン所有は50%を超えたが」参照)ではパソコン所有農家は全農家の53.1%、インターネット利用農家も全農家の33%と大幅に伸びていること、JAが合併し広域化したことで、JAの情報が迅速に的確に組合員に伝わらず「JAが遠くなった」と「JA離れ」が起きていること、などを考えると「これからは外向きの情報提供ではなく、内向きの情報提供に力を入れる」(某JAの担当者)ことも大事ではないだろうか。


3 よく見るのは、他JAのホームページ

 JAではどんなホームページにアクセスしているのかを聞いたのが 表3-1 だが、「JAグループ」のホームページという回答がもっとも多かった。次いで「気象情報」「市場・市況」となっている。
 グラフ3 や 表1-4 でみたようにインターネットを実際に利用しているのはJA内の限られた人であることを考え合わせると、厳しい環境下で多くの経営的課題をかかえるJAが、同じような立場にある他JAの取り組みをホームページを通じて知り、自JAでのヒントにしたいという気持ちが「JAグループ」という回答に表れているように思える。
 営農関係のデータベースである「アピネス/アグリインフォ」をよく見るJAは、全体の7%程度にとどまっており、その利用率はまだ低いが、実際に利用しているJAの評価は 表3-3 のようにかなり高い。もっと多くのJA職員がインターネットを利用できる環境になれば、現場での営農指導に大きな力を発揮することは間違いないだろう

表3-3

 表3-1 で「その他」という回答の内容は、「新聞社のニュース速報」など速報性に優れたインターネットの特性を活かしたニュース類、旅行観光関係、不動産関係、パソコン・IT関係という回答が多かった。
 また、よく見るホームページを見る頻度は 表3-2 のようになっている

4 課題多い「Eコマース」の利用

 自JAのホームページなどインターネットを利用した産直など「Eコマース」を利用しているJAは、表4-1 のように、前回調査に比べてかなり増えてきてはいるが、まだ少数だ。
 実際に利用しているJAの年間アクセス数( 表4-2 )は1000件未満が57%で、年間取引件数( 表4-4 )100件未満が86%、年間取引金額( 表4-3 )50万円未満が87%となっている。そして主な取引商品としては、表4-5 のように果実、野菜、米と答えたJAが多い。(参考 表4-5)
 こうした先発JAの実状が、グラフ6 および 表4-6 の「Eコマースの評価」で「不明(分からない)」「無回答」の多さになっているのではないだろうか。
 また、Eコマースの問題点として 表4-7 のように「代金回収」「管理が難しい」と答えたJAが半数を超えている。
 こうしたデータをみると、インターネットの普及によって、JA販売事業の一つの選択肢としてEコマースは考えられるが、このビジネスはまだその緒についたばかりで、「代金回収」など基本的な点で不安があり、JAの事業としてどう展開すればいいのか具体的な方法が見えないということではないだろうか。
 あるJAを取材したときに担当者が、直接、消費者を対象とする「JAのB to Cは、PR的な効果はあっても事業としては難しい。この分野は生産者個人に任せ(月5〜6万円収入が増えれば嬉しいだろうし)JAはB to Bなど別の方法を考えるほうがいいのでは」といっていたが、先発JAの経験を活かしながら、何が最良なのかJAグループとしての研究・検討が急がれるのではないだろうか。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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