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解説記事
くず大豆の抑草効果を利用した米づくり
−米ぬか、粗植、深水、とろとろ層など複合的手法で
 

佐々木陽悦さん
佐々木陽悦さん

 米の有機栽培で、くず大豆の抑草効果が注目されている。米ぬかなどと併用した総合的な除草方法である。粗植、深水管理、土づくり、水管理などと組み合わせ、除草剤並みの効果を上げる有機農家も出てきた。
 みやぎ生協と有機米の産直を行っている宮城県田尻町の有機農家、佐々木陽悦さん(54)は2年前から本格的にくず大豆を使った除草に取り組んでいる。米3.3ヘクタールを栽培、そのうちの3分の1を完全無農薬で有機栽培をしている。
 稲の除草方法としてくず大豆が注目されるようになったのは、2、3年前。転作大豆の作付拡大が背景にある。「くず大豆は除草剤の代替というより、抑草効果という方が正しい。単独で効果を上げているというより、米ぬかなど今まで私たちが培ってきた除草技術を総合したものだ。うまくやれば除草剤をまくのと同等の除草効果がある」と佐々木さんは解説する。

◆米ぬか除草――無洗米の顆粒状ものが便利

米ぬか、大豆散布後のほ場
米ぬか、大豆散布後のほ場

 米の有機栽培のネックとなっているのが除草。アイガモ農法などいろいろな試みが行われ、草の根の技術交流が図られてきた。
 最近のヒットが米ぬかによる除草だ。水田に米ぬかを散布することで、土中表面で還元作用が起こし、酸素欠乏により、雑草の発芽を抑制するのではないかと言われている。佐々木さんも4年続けて取り組んでおり、その効果は実証済みだ。
米ぬか除草の問題は、ぬかの油分のため、べとべとして、農薬散布機でまこうとすると、すぐに詰まってしまうことだった。このため、従来は手でまかなければならず、労力がかかるだけでなく、均一に散布することができなかった。
 佐々木さんは、無洗米工場から出る米ぬかを使っている。精米の過程で顆粒状に加工されるため、農薬散布機でまくことができる。大幅に省力化できる上、効果も変わらない。自家精米した分の米ぬかも田植え前にすき込み、除草効果とともにたい肥として活用している。

◆サポニンの発芽抑制効果か?

 大豆の除草効果のメカニズムはまだ明らかにされていない。学者の中には大豆に含まれるサポニンに発芽抑制効果があることを指摘する学者もいる。
 散布後、カワニナや小さなオタマジャクシが浮いてくることがあるという。しかし1か月もすると通常田よりも田んぼの生物は増えてくるという。カワニナやヤゴなども活発に活動するようになる。「結果的には豊かな生態環境を創り出すことができ安心した。大豆は窒素濃度が5〜6%もあり、肥料としての効果も期待できる半面、窒素過多による食味への影響も考えなくてはならない。その意味からも過剰散布はよくない」と佐々木さんは考えている。

◆10アールあたり米ぬかと大豆40kgずつ散布

 佐々木さんは、10アールあたり大豆と米ぬかそれぞれ40kgずつにしている。米ぬかと合わせて80kgが基準だと考えているからだ。「大豆の即効性などを考えると、10kgでも十分かもしれない」と適正な投入量は今年以降の課題としている。
 大豆と米ぬかは、代かき前にすき込む人もいる。しかし、大豆が芽を出す可能性があり注意が必要だ。大豆は水に弱いといわれるが、一度発芽すると水田でもなかなか死なない。稲と一緒に生育してしまう。米ぬか、大豆の散布は1回で十分だ。田植え後できるだけ早く散布する。3日目までにはまきたい。

◆田んぼは生き物天国

田植え1カ月後の田んぼには草はなくトンボがいっぱい
田植え1カ月後の田んぼには草はなくトンボがいっぱい

 この2年栽培してみて、佐々木さんは「米ぬか単独より大豆と合わせて使用した方が、抑草効果がある。コナギの数は、米ぬかだけの方がやや多い。水などの変化から見て、大豆は早利き。米ぬかとは作用が別なところもあるようだ。田んぼがくさくなり、大豆の方が腐敗臭がちょっと強い」と見ている。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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