正月にちなんで、夢のような提案をしたい。
いまの米政策の混乱は目を覆うばかりである。そこで、正月でもあるし、米政策を根本的に改め、農業者が将来に向けてバラ色の夢をふくらませるような、2つの提案をしてみよう。
この2つのどちらでもいい、採用されれば農業者に明るい未来が切り拓かれる。そうなれば、国民は主食の米について、将来に亘って安心していられる。
◆2つの提案
第1の提案は、在庫米を大量に、かつ一気に処理して、米価を回復する案である。
政府の見通しによれば、今秋の在庫量は196万トンになるという。市場原理のもと、この在庫圧力で米価が下がっているのだから、在庫量を減らせば米価は回復する。
196万トンのうち100万トンを処理すればいいだろう。
処理の方法は、市場隔離とか調整保管などという未練がましい方法ではなく、また、加工用にするとかの、まやかしでもなく、援助米として、一気に海外へ放出してしまうのである。
飼料米で処理してもいい。飼料用備蓄などというケチくさい方法ではなくて、ただちに飼料として家畜に食わせてしまうのである。
このようにすれば、米価は確実に回復するだろう。そうと分かれば、全国のブタ君やトリ君も、喜んで協力してくれるに違いない。
第2の提案は、不賣同盟を結成して米価を回復する案である。不「買」同盟でなく、不「賣」同盟であることに注意していただきたい。
いまの米価下落は、買い手側の買い叩きに、大きな原因がある。これに対抗したらどうかという、協同組合運動の原点からの提案である。
全国の農業者が団結して、1万8000円以下では売らない、という不賣同盟を組織するのである。もち論、政府にも売らない。
そうすれば、米価は確実に1万8000円を回復して、それ以下に下がることはない。
◆夢は実現できる
第1の提案である在庫米の即時大量処理には、莫大なカネがかかるという批判があるかもしれない。
しかし、その金額は2500億円程度である。一方、在庫圧力によって米価は、8年前と比べて4000円も下がっている。このため、稲作所得は全国で6000億円も少なくなっている。この金額と比べれば、2500億円の在庫米処理経費は、決して莫大な額ではない。
第2の提案の不賣同盟は独占禁止法に違反する、という批判があるかもしれない。
だが、農業者は暴利を貪ぼろうとしているのではない。1万8000円のコストの米を1万4000円で売らざるをえない経済的弱者の農業者が、せめてコストをつぐなう米価で売りたいという、ささやかな望みなのである。それでも半数の農家は赤字になる。
この程度のささやかな望みは、大多数の国民は支持するにちがいない。84.2%の国民は、米は国産で、と願っているのだから。
◆悪夢から目覚めよ
この2つの提案は、ともに米価を回復するための提案である。米価の回復なくして稲作の再建はないのである。
だが、歴代の政府は米価を回復しようとせず、米価の下落を放置してきた。いまの政府は、米価回復のための減反から手を引こうとさえしている。
歴代の政府は、市場原理主義の亡霊に惑わされ、米価を下げて国際競争に勝つという、出来もしない脅迫観念に取り憑かれてきた。
また、米価を下げることで、零細農耕制という積年の宿痾から解放する、などといって、この実現不可能な悪夢に、うなされ続けてきた。
2つの初夢を正夢にするための最大の障害がここにある。