グローバル化の進展や総合規制改革会議の第2次答申など、農業・JAのあり方がその存在を含めて問われている。
ここでは、21世紀の初頭のJA・協同組合のあり方をこうした情勢をふまえつつ、検討することとしたい。
◆グローバル化の進展と農業・JAグループへの「構造改革圧力」の増大
(1)グローバル化の進展
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21世紀に入り、3年目を迎えたが、日本の経済・社会はますます先行きを見通すことが困難な状況になっている。同様にJAグループを含む既存組織についても、そのあり方が基本的に問い直されている。また、農業のあり方との関係でも農業の法人化、株式会社の農業参入など、JA自体の位置づけが大きく変化しつつあるといえよう。その背景の最大の要因は、グローバル化の進展に伴い、一国経済のシステムが崩れ、世界的な規模での資本の競争が激化しており、資本が国を超えて安価な労働力を求めて自由に移動し、世界的な規模で利潤を求めて活動していることである。ガット・ウルグァイラウンドやWTOなどのもとで、関税の引き下げと資本が国境を越えて自由に企業活動を行える環境の整備が、進行しており、アメリカ、カナダ、メキシコによるNFTA(北米自由貿易協定)やEUの東欧を含む拡大とユーロの誕生による内外価格差の明確化のもとで、域内の資本の再編成が起きてきている。
アジアにおいても、中国のWTO加入に伴い、安価な労働力を求めて、世界の大企業が工場生産を始め、世界的な規模でのデフレの要因ともなりつつある。中国は大規模な外資の導入で生産基盤の確保と西部地区の貧困層の生活水準の引き上げ、国有企業の倒産による失業者の吸収などをはかり、年率7%以上の経済成長により、国内の安定をはかろうとしている。また、この一環として、昨年11月に中国はアセアン10カ国との間で包括的な自由貿易協定を締結し、主要6カ国との間で2010年までに自由化を完成させることとしている。肉、魚介類、野菜など8品目については、今年から先行して自由化に移すこととしている。日本においては、シンガポールとFTAの締結が行われているが、今後、韓国、アセアンとの間で交渉が行われる。
こうした中で、農産物の関税の引き下げ問題が発生するのは不可避になるとみられ、日本の農業の構造改革の問題が指摘される所以である。
こうした中で、他の制度・社会システム(保健・医療・福祉、教育など)と同様に、規制緩和・構造改革の対象に、農業・JAグループの組織も上げられている。つまり、グローバル化のもとで自由貿易協定などのシステムに適合できる、逆にいえばそれに対応できない組織はなくなることを前提にしているといえる。さらにそれは、株式会社万能論で規制緩和のもとに弱肉強食を推し進めるものであり、日本の社会システムの不安定化を招く可能性も大きいといえよう。
すでに国内の工場が中国などに移転し、農村における工場も閉鎖が続き、地域経済の疲弊が広範に広がりつつある。同時に、失業率の5%台への増加と不安定就業の増大など、国民の不安も増大しつつある。
同時に、農業の衰退、組合員の高齢化と地域社会の変化、平成17年3月末を目途とする市町村合併の推進などのもと、JAの実情はどうなっているのかも合わせて問われている。
(2)2010年がポイントに
また、WTOや自由貿易協定締結の動きのほか、農水省の「生産調整に関する研究会報告」では、2010年までに農業構造の展望と米づくりの本来あるべき姿の実現を目指すとして、2008年には生産調整を農業者・農業者団体主導に切り替えるとしている。要するに、農業の存続自体が2010年前後を目途として、規模の拡大による国際競争力の確保ができる法人による経営が樹立されるかどうかが問われている。その意味では、今後5〜10年の持つ意味はきわめて大きいと言えよう。
しかもこれらは、人口の減少が今後進む中で、市町村合併の推進、地方交付税措置の見直しなども相まって、過疎地域や地方の切捨てが同時に進行するなかで進む可能性が高いとみられる。それだけに地域経済の活性化を含めた多様な取り組みが地域で生まれてこざるを得ない状況が強まるといえる。
また、グローバル化に反対し、WTOやIMFなどに抗議し、農業・食料、地球環境、最貧国の飢餓問題など多様な観点からグローバル化に反対する新たな世界的な動きも出てきており、ジグザグの過程を経て事態は進行することになるとみられる。