15年産米の作況指数が90となったことから、主食用生産量は763万トン程度と見込まれている。ただし、10月末の在庫と合わせると供給量は900万トンを超え、年間の主食用需要870万トンを上回るため安定供給に支障はない。
入札価格の上昇から一部銘柄では小売価格が上昇しているが、最近では落ち着きも見られる。また、ブレンド米の販売も増えている。最近の米をめぐる動向をまとめてみた。 |
◆盗難多発 米の盗難事件
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盗難防止でJAグループは米の早期出荷を呼びかけている |
米の作柄の悪化により米価格が上昇していることを背景に、米の盗難事件が多発している。
農水省は米泥棒対策として、農家が生産した米が長期間にわたり出荷されないと米泥棒に狙われる危険性が高まるとして、農家自身の保管場所などに保管することがないよう早期出荷の奨励を集荷団体などに呼びかけている。
また、盗難米が善意の登録販売業者に対しても低価格で計画外流通米(未検査米)扱いで販売される可能性があることから、登録出荷(販売)業者の段階で盗品の疑いがある米を扱うことがないよう出荷業者・販売業者団体としての立場から指導することや、疑いのある米が持ち込まれた場合の情報提供を求めている。
表のように9月以降に米の盗難事件は多発。なかにはほ場で刈り取りをして持ち去るケースも。なお、9月25日までに昨年6月に千葉県一宮町で発生した被害数量約5トンの事件について、千葉県警は暴力団員6名を窃盗容疑で逮捕した。また、今年9月に徳島県山川町内で計600キロの新米を盗難し、別の町の米屋で換金した容疑で徳島県警が同町内の男性2人を窃盗容疑で逮捕している
◆小売価格
一部銘柄では落ち着きも―15年産米の価格動向
農水省は米の作柄の悪化を受けて、卸・小売価格の概況を週ごとに公表しているが、11月7日に10月第5週の調査結果を公表した。
このうち小売価格では、千葉コシヒカリが10kg5876円で前年比31.5%、茨城コシヒカリが同5919円で同30.5%、長野コシヒカリが同6259円で同30.3%など前年より3割以上も上昇しているが、前年より1割から2割程度の上昇のものがほとんどとなっている。
また、調査した31銘柄のうち前週とくらべて、上昇したのが13銘柄、下落したのが10銘柄となっている。新潟コシヒカリ、富山コシヒカリはわずかだが前週より下落した。
◆ブレンド米 販売業者が増加傾向
15年産米の不作と新米の出回り遅れのため農水省も販売業者にブレンド米販売を呼びかけているが、卸、小売業者とも取り扱い業者は増えている。
農水省は9月第3週から北海道、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡の7都道府県のおもに県庁所在地での取り扱い動向を毎週調査している。調査対象は、卸29、量販店・小売店が70。
9月第3週の時点では、ブレンド米を取り扱う卸は15業者だったが、10月第3週には22業者に増えた。小売り業者では同じく33業者から44業者となった。
取り扱いアイテム数も卸売業者では計75アイテムが89アイテムに。小売業者では計63アイテムが101アイテムに増えている。
ブレンド米の中身は、卸売業者のアイテムでは、7割でコシヒカリ、あきたこまち、きらら397などの主要銘柄50%以上のいわゆる「銘柄米ブレンド」となっている。一方、小売業者のアイテムでは、5割強が、銘柄米ブレンド以外のブレンド米となっている。
卸売業者のブレンド米の販売価格は、10月第3週では10kg4000円未満が7割を占めている。ただ、調査開始以来、4000円以上の価格帯の割合が増加しており、新米の使用によって価格が上方にシフトする傾向がみられる。
一方、小売業者では10kg4500円未満の価格帯をみると、9月第4週では約75%を占めていたが、10月第3週では60%にまで下がった。ただし、5000円以上の価格帯の割合は調査開始以来、ほぼ1割程度で推移しており、価格が上方にシフトしている傾向はさほど顕著ではない。
◆集荷対策 実態に応じた対策を実施
―JAグループ「15年産集荷促進・安定供給対策全国本部」を設置
10月10日現在の計画流通米の集荷実績は、135万トンと前年同期の228万トンに対して93万トン下回っている。集荷の進度としては前年の6割程度にとどまっている。
これは全国的に生育が遅れたことや収量が不足していることに加え、市況価格の上昇による計画外米への流出や生産農家での保留などが要因と考えられている。
このためJAグループでは(1)地域の実情に応じた弾力的な仮渡金の設定、(2)規格外米仕分け基準の設定による規格外米の自主流通米としての扱い、などの集荷対策を実施してきた。
また、「15年産米集荷推進・安定供給対策全国本部」を10月はじめに設置。各県にも推進本部を置き、(1)全国一斉推進強化運動の展開、(2)マスコミ媒体を活用した生産者、消費者向けアピールの実施、(3)「米需給調整・需要拡大基金」を活用した集荷促進対策の実施を決定。現在も一層の集荷促進をはかるため、集荷推進特別運動を展開し、集荷目標管理の徹底、庭先集荷の実施、出荷余力米の追加集荷などの取り組みを進めている。
◆77万トン 提示全量が成約―15年産米 事前年間取引
自主流通法人のJA全農は米卸と事前年間相対取引によって販売数量を決めているが、15年産の第1回取引では提示した77万トンの全量が成約した。今回は来年6月までの取引数量を決めた。
提示数量は、北海道産6万4000トン、新潟産9万2000トン、秋田産6万5000トン、宮城産3万4000トンなど。約50万トンが県間取引で約27万トンが県内取引となっている。
事前年間相対取引は、入札取引と並ぶ取引方法で取引量の55%程度となっている。15年産では10月末に数量の提示が行われたが、新米の出回りの遅れなどで成約率が100%となった。従来は未成約分については期別取引とスポット取引が行われたが今年産は行われないことになる。事前年間取引の第2回は来年2月末に予定されている。 (2003.11.20)