経済事業改革とコメ改革の中でJAグループのコメ物流合理化も待ったなし。まずは主産地から消費地への輸送コスト削減がある。次いで事務処理などを含むシステム整備だ。これはシステム機能の高度化を怠れば生き残れないという問題とつながる。コメ専用の輸送機器の開発などハード面の追求も重要だ。JA全農にとって、こうした施策の具体化に関わる第1線は(株)エーコープラインだ。同社のJA・県連に対する提案機能の一層の拡充が求められる。同社と、各県域の協同会社くみあい運輸の合併など課題は多い。集荷率向上対策なども物流とからむ課題の1つとなる。
◆JRコンテナ輸送
産地から県外の消費地へ運ばれるコメは年間約300万トン。8割ほどはトラック輸送だが、それよりも安上がりのJRコンテナ輸送が着実に伸びている。JAグループの総合物流を担う(株)エーコープライン(ACL)によると「輸送距離が約500キロを超えるとJRのほうが安くなり、コスト削減できる」という。
JRコンテナで物流コストを削減している県連・県本部はすでに主産地を中心に10数県。その輸送量は平成14年産米では約33万トンだった。しかし15年産は不作のため輸送量も減った。
また環境に優しい点でも鉄道輸送の効果は大きい。ディーゼル車規制は強化されたが、クルマ社会の問題解消にはほど遠い。JR貨物なら排ガスはゼロだ。
◆システムの高度化
一方、IT(情報技術)面ではシステム機能を高めている。すでに米穀物流情報ネットワークシステムという電算ネットワークで効率化を図っているが、その物流の手順を見ると――。
コメ卸から受注した全農の指示で産地は出荷JAを選択▽出荷データを全農とACLに送信▽ACLは産地の輸送会社を選択し、出荷米の引渡証を同社に送信▽同社はトラックをJAの倉庫に回し、JAは引渡証を照合して出荷▽あとはトラック輸送、となる。
このシステムのデータをベースに開発したインターネット利用輸送情報提供システムというネットも14年夏から稼働している。
◆配達ミス防ぐ機能も
これは主としてJRコンテナ輸送用だ。コンテナが貨物駅に着くと、そこに近い通運会社のトラックが駅からコメ卸の倉庫や精米工場に運ぶ。その場合、通運会社は、列車の発着時間とかコンテナ番号などを前もってインターネットで知ることができる仕組みだ。
産地が出荷JA名、日付、品種、出荷量などを入力しておくからで、通運だけでなく、卸業者も申請すれば見ることができる。
このシステムはさらに進化し、通運側が発注者に届けたという輸送完了報告まで返信できる仕組みになっており配達ミスを防いでいる。
ただ、情報提供にまだ参加していない産地も一部あるため「より網羅的になるように努力したい」とACLではいっている。
◆バラ輸送対応を充実
卸会社が大型集中精米工場を増やし「バラ輸送でないと受け取らない」という工場も出てきたため、ACLは独自にホッパーコンテナという純バラ用の10トンの大きなコンテナも6箱つくった。
上の開口部から玄米を注ぎ入れ、工場ではコンテナをダンプアップし、後扉口から流し出すという使い方だ。人手も包装費も余りかからず、スピーディに作業できる効率的な器具だ。
バラ輸送用では袋状のフレキシブルコンテナ(フレコン)も物流合理化に寄与している。ACLではコメ専用で1トン入りのフレコン約23万枚を供給し、回収と清掃もしている。輸送中に破れないように点検と更新も怠らない。
このフレコンとホッパーコンテナによる輸送量は年間ざっと20万トンにおよぶ。
◆提案活動を強める
精米袋をパレットに積んだまま輸送する一貫パレット輸送など物流合理化の方策は数多いが、ACLは諸条件に対応した改善策を提案しており、今後さらに提案活動を強めていく。
帰りのトラックも荷物を運ぶ往復輸送の課題では、ACLの共同物流部が帰路の荷物をあっせんしている。
またハード面で昨年秋、久喜営業所(埼玉)に常温と低温の米穀倉庫を1000坪ずつ増設し、首都圏の物流基地を拡充した。低温では既設倉庫と合わせると計3050坪となる。
鳥栖営業所(佐賀)にも低温倉庫530坪を増設中で4月に完成する。コメ改革による集荷率低下などコメ物流の行方は不透明だが、あらゆる保管の事態に備える体制整備の一環だ。
◆くみあい運輸を統合
条件のある地域ではJAの庭先集荷を支援する方針も打ち出し、すでに仙台支店では実施している。
一方、全農は、県連などが設立して県域の物流を担当しているくみあい運輸各社をACLと統合する方針だ。第1号は宮城だったが新年度には第2号の茨城くみあい流通(株)との合併が決まっている。
経済事業改革の中で重複した機能を排除しながら最適物流を目指す全農の取り組みが加速している。 (2004.3.31)