農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
介助犬ってどんな犬? 支援フォーラム2004−JA共済連
障害者とともに生きるパートナー
デモンストレーションで介助動作を紹介


 JA共済連(上原寿宰理事長)、社会福祉法人全国介助犬協会、NPO法人日本介助犬アカデミーの3団体共催による『がんばれ介助犬! 支援フォーラム2004』が11月14日、ゲートシティー大崎・ゲートシティーホール(品川区大崎1-1-1)で開催された。当日は日曜日ということもあり、親子、家族連れを中心に約500名の来場者があり、会場がバリアフリーということもあって介助犬同伴の姿も見られた。

介助犬と子どもたち
介助犬と子どもたち

 フォーラムは、午後1時30分から始まった。最初に主催者を代表して、JA共済連広報部長の吉田正己氏が、「JA共済連は、従来から交通事故被害者の救済などを目的に、自賠責共済制度の普及促進に努めてきました。介助犬を必要とする障害者の原因疾患の大半は交通事故による脊髄損傷であることから、自賠責共済の趣旨に沿って、介助犬育成支援に取り組んでいます。介助犬の育成・普及を支援することにより、交通事故被害者の社会復帰につながると考えています。今日は介助犬も沢山会場に来ています。これを機会に、介助犬に対する認識を深めていただければ幸いです」と挨拶し、介助犬育成への理解を求めた。

◆介助犬育成を支援するJA共済連

木村佳友さんとシンシア
木村佳友さんとシンシア
 介助犬とは、2003年10月1日から全面施行された『身体障害者補助犬法(2002年5月22日成立)』で、視覚障害を補助する盲導犬、聴覚障害を補助する聴導犬とともに、「肢体不自由により日常生活に著しい支障がある身体障害者のために、物の拾い上げ及び運搬、着脱衣の補助、体位の変更、起立及び歩行の際の支持、扉の開閉、スイッチの操作、緊急の場合における救助の要請その他の肢体不自由を補う補助を行う犬」と定められた補助犬のことで、手や足が不自由な人が、自分ではできないことの手助けをする犬のことをいう。
 具体的には、ドアの開け閉め、落としたものを拾う、冷蔵庫の中のものを持ってくる、着替えを手伝うなど個々の障害者に合わせた動作を行う訓練をすることにより、障害者を補助することができるようになる。
 介助犬を必要とする障害者は、全国で約1万5000人と推測されているが、法的に認定された介助犬は現在わずか22頭(16年10月)で、介助犬を必要とする障害者の数に比べ、圧倒的に少ないのが現状だ。そのようななか、介助犬の質の確保と安定した供給体制の確立が強く求められている。
 JA共済連の介助犬育成支援活動は、15年7月にNPO法人日本介助犬アカデミーへ研究支援として2000万円拠出、16年3月に社会福祉法人全国介助犬協会設立に1億円拠出、16年10月に両団体にそれぞれ2000万円拠出するなどの支援を続け、介助犬の育成を推進してきた。

◆共に生きるパートナーとして必要な存在

挨拶するJA共済連吉田正己広報部長
挨拶するJA共済連
吉田正己広報部長

 JA共済連広報部長の吉田正己氏の挨拶に続き、犬が大好きだというタレントの橋本志穂さんの司会により、トークショーが始まった。使用者スーザン・ダンカンさん(アメリカ在住)と介助犬リンカーン、使用者木村佳友さんと介助犬シンシア(ドラマ シンシア・介助犬誕生ものがたりのモデル)、高柳友子さん(NPO法人日本介助犬アカデミー専務理事)の3名が出演し、それぞれ介助犬への思いを語った。
 スーザン・ダンカンさんと木村佳友さんは、日々介助犬と生活を共にしている立場から、自立した生活のためには介助犬の役割が欠かせないことを強調すると同時に、共に生きるパートナーとして、その存在がなくてはならないものとなっていると語った。
 また、木村佳友さんは、シンシアと暮らすようになってから、奥さんに頼みごとをする心理的負担が軽減された分、ストレスが少なくなったような気がすると述べ、会場を笑わせた。
 高柳友子さんは介助犬の育成・普及を促進する立場から、介助犬の数が大変不足していることや、育成・普及を進めるためには、介助犬に対する正しい認識を広めることが必要だと強調した。多くの人が、介助犬をかわいいという視点で見るため、結果的に介助犬の仕事を邪魔している場合があると、事例を紹介して注意を促した。
 司会の橋本志穂さんが犬好きということもあり、介助犬に必要な犬の適性など適切な話題を3人に振り、話を盛り上げた。

◆訓練すればコインやキーも拾うことができる

親子づれを中心とした多数の来場者
親子づれを中心とした多数の来場者
 トークショーの後、実際に介助犬が日常的に行う介助の様子が舞台の上で披露された。会場に来ていた子供の中から、希望者数名が舞台に上がり、車椅子に座りながら、落ちたコインやキーを拾ったり、受話器や新聞を持ってこさせたりする指示を出した。
 最初は指示する声に聞き覚えがないためか、戸惑う様子を見せる介助犬もいたが、最終的にはすべて指示された通りの動作をし、会場から大きな拍手が上がった。コインやキーなどの拾いにくいものを、口でくわえて拾い人に渡すという動作は、犬にとっては難しいといわれるが、訓練することでできるようになるとのことだ。
 また、着替えの補助をする様子も紹介された。上着や靴下を脱ぐときの補助では、袖口や靴下を軽くかんで引っ張る動作を行った。訓練を受けていない犬だと、強くかんだり引っ張ることができなかったりと、スムーズな動作が難しいとのことだ。
 子供たちは、始めは犬に慣れないこともあり、少し怖がる場面もあったが、何度も指示するうちにすっかり犬と仲良くなり、息もピッタリと合ってきた。感想を聞かれた子供の一人は、介助犬の賢さに驚くと同時に、とても楽しかったと語った。

◆今後も交通事故被害者の社会復帰を支援

介助犬の動作を説明するトレーナー
介助犬の動作を説明するトレーナー

 介助犬のデモンストレーションが終わった後、休憩を挟んで、毎日放送制作のドラマ『シンシア 介助犬誕生ものがたり』が上映された。ものがたりは、2003年度アジアテレビ賞「単発ドラマ部門」最優秀賞、15年度文化庁芸術祭参加作品。女優富田靖子さん主演で、木村佳友さんと介助犬シンシアの感動的な実話をドラマ化したもの。介助犬を実際に見た後であったためか、最後まで熱心に見入る来場者の姿が印象的であった。
 JA共済連は、フォーラム後も介助犬への理解と育成に対する環境整備を行い、安定供給に弾みをつけるとともに、介助犬育成・普及支援の活動を続けることで、交通事故被害者への社会復帰の支援につなげていきたいとしている。
 法律はできたが、まだまだ介助犬に対する社会的な認知度は低く、障害者が介助犬を連れて外出し、社会的な活動を行なおうとすると制約されることが多い。こうした催しなどを通じて、介助犬の役割などについて、多くの人に知ってもらい、障害者が何の制約も受けずに当たり前に介助犬を連れて社会的な活動ができるような日が1日も早くきて欲しいものだと思う。


関連記事:介助犬ってどんな犬?支援フォーラム2004−JA共済連 (11/14)

(2004.11.22)


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