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論壇
使命感の回復を 

 鶏肉の表示違反問題につづく無登録農薬問題で、JAへの信頼が大きくゆらいでいる。
 一般の企業が引きおこした問題なら見逃せる、というわけでは全くないが、JAなら安全と思っていたのに、JAもとうとう一般企業と同じになってしまったか、という残念な思いを、多くの国民が持ったに違いない。JAは自分の社会的使命を忘れてしまったのではないのか。
◆ 軽視される企業倫理

 一般企業も、かつてはそれぞれに、社会的な使命感をもって活動していた。たとえば、製鉄所は、ただの鉄を作っているのではなく、産業のコメを作っているのだ。スーパーは、流通革命の第一線の戦士だ。家庭電器は、女性を過酷な家事労働から解放するのだ。・・・・というように、それぞれが社会的な使命を強く自覚していた。
 それが今、企業は出資者(株主)のために活動するのだ、という考えが主流になってきた。株主へ利益を配当できなければ、すぐに解散、リストラというのである。
 そこには、目先きの利益の追求だけがあって、そのためには何でもする、社会的使命や企業倫理など、隅へ追いやられる。 このような潮流におし流されてはいけない。

◆ JAの社会的使命

 JAには企業とは違って、もともと出資者への利益の配当などない。そもそも利益があってはならない。もしも利益が出てしまったら、それは価格の設定を間違えたのだから、その分は利用者へ返すことになっている。
 こうして、JAには社会的使命だけがある。この社会的使命は、経済的弱者が集まって、悪徳な企業の横暴に抵抗する、という社会正義に基づく崇高な使命である。
 これはJAのひとりよがりではない。だから、多くの国民から支持されてきたし、だから、一般企業と違って、JAは事業活動のうえで、また税制のうえでの特典を、かち取ることができたのである。

◆ 使命感の回復を

 そのJAが目先きの利益だけを追って、問題をおこしてしまった。多くの国民の失望は、JAが使命感と正義感を失ったのではないか、という点にある。
 トレーサビリティなどというのは、悪者を見つけやすくし、懲らしめることで悪事を予防する、というのだから、これは最善の策ではない。
 最善の策は、JAが本来もっている正義感と使命感を回復することである。正義感をもっていれば、悪事などする筈がない。そうなれば、国民からの信頼を回復することができる。
 それだけではない。一般企業に対して、率先して社会的使命の自覚を求めることもできる。そして、わが国の社会全体に、かつての良き企業風土を復活することもできる。
 しかし、もしも使命感を回復できなければ、JAも一般企業と同じ境遇に埋没してしまうだろう。

◆ 農水省の「農協改革」

 農水省は、いま「農協は改革か解体か」と迫っている。こんどの問題で絶好の機会がきた、と思っているのかもしれない。
 農水省がいう農協改革の主な内容は、JAを一般企業と同じ公平な競争条件にする、というものである。JAにも一般企業と同じように、独占禁止法を適用することを目ざすようだ。(日本農業新聞2002年9月4日付)。
 そうなると、各種補助金は廃止されるし、共同購入、共同販売、生産調整は禁止される。どれもが、JAの存亡にかかわる致命的なものである。
 このような改革をすれば、JAは一般企業と同じになってしまう。つまり、JAは存在することじたいを否定されるだろう。
 この改革は、命運を賭けて、断固として拒否しなければならない。

◆ JAと米を守れ

 7月末には農水省の研究会が、米は一般商品になったとして、政府は米の供給に関与しない、という提案をした。これは「農協改革」と同じ発想なのだろう。そうなると、わが国から米がなくなってしまうだろう。
 わが国から米をなくし、JAをなくそうというのだろうか。
 いま、JAは存亡の危機にある。いまこそ、JAは原点に立ちかえって、その使命を確認し、全国民に対して、JAの存在そのものに理解を求めねばならない。大多数の国民はJAを支持するに違いない。




農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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