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論壇
受身から前向きへ 


◆国民不在の内向き論理の横行
 
 次々に、「申し訳なし」と頭をたれる。テレビに映し出される見飽きたシーンである。農協・株式会社・官庁など組織形態をこえ、経営トップの無様な姿。
 経済・社会の変化への対応を忘れ、基本的には国民・消費者・地域住民・組合員を、ないがしろにしている精神がもたらした端的な“結果”であろう。雪印・日ハムの例をみるように問題発覚後も、内部論理と秩序優先の受身の対応に終始し、崩壊ないし経営不振への道をつき進んで行く。時代感覚の欠如、消費者・組合員無視、内部秩序優先が、全ての組織に共通する現代の病弊である。ここで求められるのは、ズバリ前向きの改革の姿勢であろう。農協もまさしくこの例外ではない。むしろ その最たるものと言えるやも知れない。
 
◆活用されない豊富な情報

 当然のことであるが、農協ほど地域に密着し、経済・社会の情報に恵まれた経済組織はなかろう。
 農業生産・日常生活と密接な経済事業のほか、信用・共済事業を営み、農政活動も展開しているのである。加えて土着性そのものの濃厚・豊富な人間関係を基盤としている。経済・社会・地域を包含したいわば情報の宝庫を、抱え込んでいるようなものである。問題はそれが生かされているかどうかである。少なくとも、幅広い情報を分析し、前向きの活動を展開し得る条件に恵まれていることは明白である。他の経済組織からすれば垂涎の的と言えよう。

◆今こそ望まれる外部人材の導入

 そこで問われるのが情報を分析活用する農協の総合企画機能であり、組合長理事の活動を、左右する優れたスタッフの存在の有無である。ここが、正直言って農協の最大弱点の一つであろう。この弱点の克服なくして、農協の発展・改革はあり得ないと断言したい。克服の最たる手段として、外部人材の登用が考えられる。組合員利益の最大追求には、協同組合理念と高度・広範な業務知識が求められるが、協同組合精神は組合育ちのみの独占物ではない。このことを特に強く意識することが肝要だと思う。強く営利を追究する企業に身をおき、その経営姿勢に強い疑問と批判を持つ有能の士、行政に携わりその腐敗を嘆く有識の材が多く存在する。彼等も協同組合に関心を有しているはずである。生まれながらの協同組合人なんぞは、存在せぬことを思い出していただきたい。

◆農協の意志による自らの改革を

 経済財政諮問会議などで提起される農協の構造改革論議に対し、聞く耳も必要である。されど基本は、農協組織自らが苦しみながら生み出した改革の方向と道筋であらねばならない。キーワードはあくまでも、“自己改革”と“変化を先取りした前進”につきる。受身の姿勢・対応からはなんとしても脱出したいものである。
 道筋の一つは、新規事業の開発と実践・展開である。視野を広げてみれば、農協だからこそと言い得る活動分野は無数に存在すると思う。食品の安全追究、環境保全、自然エネルギーの開発を3大分野として・・・・。

◆農協による自然エネルギーの活用

 自然エネルギーの開発に、農協の組織を挙げての取り組みを提起したい。脱ダム宣言の時代でもあり、東電をはじめとする電力各社の原子力発電の実態を見るにつけ、エネルギー問題解決は緊急課題であることは明白である。
 太陽の光と熱、風力、バイオマスなどによる発電事業こそ、農協が先駆的に取り組むべき分野と考えられる。農協の取り組み事例もないわけではないが、限定少数の域を出ていない。
 この課題への全組織と機能を傾注しての取り組みこそが、農協の前進と国民的理解を得る最短の道といっても過言ではなかろう。




農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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