◆小幅改造というが
小泉改造内閣がスタートした。一内閣一閣僚を主張してきた小泉総理だが、自民党派閥の改造要求に押されて、小幅改造とはいえ、17人の閣僚のうち6人を更迭した。
なかでも金融担当大臣、防衛庁長官、農林水産大臣の首のスゲかえを強行したことは、小泉総理のいう「改革なくして成長なし」の路線を一層強力に推進しようとするものである。
金融・防衛担当大臣の首をスゲかえたのは小泉路線にマッチしないところがあったのでうなづける。しかし、農林水産大臣は、小泉構造改革路線に忠実(?)に農政改革を実行に移そうとしてきた。
その農林水産大臣をあえて首にしたのは、やはりBSE(牛海綿状脳症)をめぐる失政の責任、その他農政改革への取組みがお粗末で、先が思いやられるということか。
農政改革をやりとげ、WTO農業交渉に万全を期すためには、より実行力のある実力者を農林水産大臣に据える必要に迫られたといえる。
武部前農相は辞任の記者会見で「よく頑張った。今後は党に戻り武部らしい生き方で羽ばたけという首相の激励が込められた交代だと思う」と語っている。
自らの失政をかえりみず、どこまでお目出たい政治家だろうか。武部氏では、自らブチあげた「食と農の再生プラン」をはじめ一連の農政改革はもちろんWTO農業交渉など、とても手におえそうにないと、小泉総理が見切りをつけたのも無理はない。
◆武部路線の継承
それでは後任の大島理森農林大臣には期待がもてるかというと、この人は、もともと国対族で農林行政には縁遠い存在であった。武部の農政改革路線を継承するのが精一杯だろう。
農政の軸足を農民から消費者に移した「食と農の再生プラン」と、それに関連した農政改革には生産者の抵抗が強い。
さらに11月に決着をつける米政策、来年3月に研究会の報告が出される農協改革と難問山積だ。
構造改革特区における株式会社の農業への参入、農地取得への農地制度の改悪、さらにWTO農業交渉も来年3月までに自由化の基準づくりが決まる。
これらにどう対応していくのか小泉改造内閣にとって大きな課題であり、新農相の手腕が問われる。
武部前農相の下では生産者団体との不協和音が拡大していた。米問題にしろ、農協改革、農地制度改悪にしろ生産者団体と意見が喰い違っている。それをどう調整するのかが、まず大島新農相の課題である。
◆改革か 解体か
農協改革については、改革か解体かを迫っている。農協研究会の結論が出るまで断定はできないが、研究会のメンバーからみて、武部前農相と農林官僚の合作による農協解体論がまかり通ることになりかねない。
農林省の農協改革論には、協同組合とは何かといった根本理念が欠落している。したがって独禁法の適用とか農協機能の株式会社化ということがもっともらしく強調されるのである。
もっと時間をかけて農協組織と十分話し合い、農家組合員の生の声を反映させるべきである。
新農相は、前農相の路線にとらわれず、「食と農の再生プラン」を白紙にもどして、長期的視点に立って、新しい農政改革路線を確立してもらいたい。農協改革についても、農民の協同組合という原点に立ち帰って、21世紀の農協のあり方を追求してもらいたい。