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論壇―風 |
JAグループは、10月1日から確定拠出年金の取り扱いをはじめた。銀行・生保・郵便局など他業態にひと足おくれてのスタートである。まず21JAが先陣をきり、最終的には全国で8割のJAの参入が見込まれるという。当面は、農業者などの自営業者や、企業年金制度と「企業型」確定拠出年金を持たない企業の従業員に対して、「個人型」を奨めることが中心だという。 ◆相場観が老後を決める 周知のように、国民年金基金や適格退職年金など既存の企業年金制度は、受け取る年金額があらかじめ決まっている「確定給付年金」。それに対して、アメリカの制度をモデルに導入され、その出自から「日本版401K」とも呼ばれるこの新しい年金は、拠出する掛金額が確定しており、受け取る年金額は運用の成果に応じて変動する仕組みが特徴。しかも、運用は加入者自身の自己責任。加入者が選択できる運用商品のメニュー(JAの「個人型」は9種類)には、元本保証型の預金タイプなどもあるが、主体は元本割れもありうるハイリスク・ハイリターンの商品だ。損失は誰も補填してくれない。 ◆時代の申し子 確定拠出年金が登場した事情と背景は何だろう。まず、このところ後退を重ねる公的年金制度を補完する役割を負っての登場であろう。国民年金に続き厚生年金も、支給開始が60歳から段階的に65歳に引き上げられる。そのうめあわせ役に、原則60歳支給開始のこの年金が期待されている。 老後の備えである年金制度には、長期の安定性と安全な運用が必須であろう。その一点から、まずJAグループには、この年金の取り扱いに格別の慎重さを求めたい。銀行など他業態による顧客囲い込み攻勢への防衛だとか、事業採算の確保だとかの”事業の論理”が優先され、あたりまえの”慎重方針”が建前となってはならないだろう。 |