農水省の「農協のあり方研究会」が3月28日に報告書を取りまとめた。
農協が現在抱えている問題、改めるべき方向について的を射た分析と指摘もあるが、看過できない点も多く含まれている。スペースの関係で次の3点を指摘したい。
第1に、「農協系統の問題点」で、「改革が遅れたJAが多数存在したままでは、国民のコンセンサスとして制定された自給率の向上や国際競争力の向上に十分な役割を発揮していけないとの指摘もされている」とある。
先の、小泉総理の施政方針演説の農業に関するくだりでは食料自給率の問題にはまったく触れていなかった。
現在のように複雑で、先の不透明な国際情勢の下で国の食料自給をどのようにするかは農政の最大の課題のはずである。
基本食料の自給率を上げるためにどのような施策をとるのか、国民に対して明快な方針を示すのが総理の施政方針の基本ではないのか。
農協の改革の遅れが自給率の上がらない責任との見解は如何なものか。
◆卸機能を持った販売は不可欠
次に、全農の改革が「農協改革の試金石」と位置づけ「連合会の本来の任務であるJAの補完に徹する方向を目指すべきである」として全農(県本部を含む)及び子会社の販売関連事業は「代金決済・需給情報の提供などの機能に特化していくのが適当である」としている。
農協の販売事業は直売所の運営で、これを支援するというのであれば情報の提供でよいが、組合員農家の作った農畜産物最大の販売先、顧客は大手のスーパーマーケットや生協、外食産業、食品メーカーである。
これらの業界は仕入れ機能を本部に集中し、強力なバイイングパワーで押し通している。しかも仕入先は地球規模である。
このような条件の中で農協の販売事業を支援するというのは、全農が全国の産地から総合した品揃えをして、年間を通した数量、価格を契約するという卸機能を持った販売をすることが不可欠である。全農がこのような販売力を持つことで、農協の販売事業が多様な選択ができるのである。
自らリスクを負ったビジネスに参加をしなければ役に立つ情報は集らない。
◆問われる自主ルールのあり方
3つめは、「経済事業の改革をすすめるに当たって、全中が強力なリーダーシップを発揮すべき」としてその内容は「農林中金が農協金融自主ルールを策定して、これに基づきJAを指導するJAバンクシステムを確立した」ように、「経済事業においても全中が中心となって指導指針(経済事業版自主ルール)を策定、公表してこれに基づいて指導をすべきである」とし、全農も全中の指導指針に従って改革をすすめるべきであるとしている。
金融の世界は信用不安が連鎖反応となり、全体に直接的な被害を与える。従って「自主ルール」を守らないJAは上部機関が除名をするという連帯責任も必要とするのであろう。
協同組合は本来自主的な活動体であって、単位農協が事業の要であり、連合会はその事業活動を補完、支援するために作られている。
経済事業では、単位農協が自主ルールを守らないといって全国機関が排除や除名をするような指導は馴染まない。
農水省の「研究会」からこのような指摘を受けること自体情けないことである。
農協組織は自主性を持って改革をすすめ、自信を持って事業を進めることで組合員農家の付託に応え、消費者の信頼を確保するべきである。 (2003.4.8)