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論壇―風 |
4月の衆議院補欠選挙で茨城県7区で自民党の永岡洋治氏(52歳、元農水省課長)が当選した。当選の弁が、「基幹産業である農業の振興に役立ちたい」だった。国の政策レベルで農業が話題になる事が少ないだけに、当選者の発言は政党の枠を超えて新鮮に感じた。それほど、日本を取り巻く最近の農業の環境は、世間の注目を集めることなく閉塞感に包まれている。 しかし、農業振興こそが、日本経済を再生させる原点のように思える。桜が終わって、青葉の季節である。土の中は温度があがり微生物がうごめいている。畑を耕す時期である。田植えが始まる。山動くである。今年の農協改革の柱が経済事業である。農協人の経済事業と商人の商売との違いは何だろうか。イトーヨーカ堂名誉会長の伊藤雅俊氏が日経新聞に書いている。 経済事業と「商売」の違い
「農民は連帯に生きる。商人は孤独を生き甲斐にしなければならない。…我が歩むところそのものが道である。他人の道は自分の道でないという事が商人の道である」。この読み人知らずの言葉を座右の銘にしているという。
また、「瑞穂の国と言われる農業中心史観は一面の真実に過ぎず、農業と共に発達した商業が市場を広げて人々の生活を豊かにし、時代の節目節目で改革者となった商人が現れては消えていった。日本人は商業を低く見る民族だが、私はむしろ市場と商業ありきだったのではないかと思う。銀行はお金を貸してくださらないもの、お客様は買ってくださらないもの、取引先は売ってくださらないものと思って商売を伸ばしてきた」と述べている。 ここに商人の読みの深い商才を発見する。現実は、銀行はお金を貸してくれたし、車社会の到来で、次々に開店した郊外立地のイトーヨーカ堂の店に家族の客が群がり、子会社コンビニ店のセブンイレブンには都会の若いお客が定着した。半世紀の間に2坪の店から大企業に成長した。 一方、JAの経済事業は、一般の商業のような厳しい条件下には置かれていなかったと思う。JAグループは、お金の心配はいらない、お客(組合員)はJAから買うべきもの、メーカーや取引先には全農―JAが品物を系統流通に乗せてやるからありがたく思えと殿様商売の気分が残っていた。農民の連帯感に安住してはいなかっただろうか。 昔の農協指導者は、「士魂商才」たれとJA職員に訓示した。武士の精神と商人の才とを兼備すること。JAに働く職員は、士魂、即ち武士の如く志を高く持ち、零細な農民が団結した協同組合精神に則り、百姓魂を尊び、かつ商売の才能、センスを充分に発揮しろと。 負けないための意識改革を しかし、いつのまにか現在では、どちらも薄められ、JA職員は士魂といえば官僚臭、商才の代わりに、組織の中で安泰に過ごす、大企業のサラリーマンタイプが増えている。JA経済事業が生き残るには、協同組合精神の再確認と経済専門家として一般商人に負けない知識・振る舞い・勉強が必要である。いわば、意識改革である。 農水省も全農―JAグループの不祥事を叩くだけではなく、農民の自主組織を応援すべきである。それには行政と全農―JAグループのコミュニケーションの復活が必要である。都市近郊で農業振興を堂々と公約に掲げて、しかも小選挙区のもと農民代表が国政に議席を得る時代である。新しい風潮である。 (2003.6.5) |
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