農業協同組合新聞 JACOM
   

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論壇
井の中の蛙では輸入物と競走はできない


 表示のごまかしという不祥事から、全農の販売施設、販売の関連会社は輸入品を一切取扱わせないという議論があったが、さすがにそこまではムリということになり、先の「農協のあり方に関する研究会」も輸入品をやむを得ず扱う場合は、その理由を生産者・消費者に説明し輸入品である旨の表示を正確に行うとした報告書となった。
 今、全農に求められているのは経済事業の建て直しであり、とりわけ販売力を強化することではないのか。
 量販店、ファミリーレストランや惣菜等の業務筋の仕入れは、年間仕入れ計画を四季別、月別、週別に細分化し、売込みはこの政策に沿って年間から週別まで品目を総合した商品提案をし、規格、数量、価格等の条件を詰めていく。
 産地と生産の段階から納入条件を睨んだ話し合いをして売り込んでいる。
 さらに、量販店、業務筋は仕入れコストを下げるために仕入れに伴う品揃え、パック、物流の業務を商社、問屋など卸業者に代行をさせるケースが多い。
 国産の農畜産物を輸入品と対抗のできる条件にまで持っていくのには、正確な情報を生産者に伝え、生産の段階から仕組まなければとても勝てない。
 輸出側の生産、流通の正確な情報はビジネスに参入をすることではじめて手に入る。
 全農の貿易業務を担っている関連会社は北京と上海に事務所を持っているが、中国の農・畜産物の日本向け輸出の情報が少ない。それは系統の関連会社が中国の輸出に手を貸すような業務はもっての外として一切御法度としているからである。
 北京や上海にいてもビジネスをしていなければ知りたい情報は取れない。 日本の農家が一番知りたい現地の様子を他の商社や、輸入業者に聴くことになり、正確な情報であるかどうかも確かめられない。残念なことである。同じ会社が飼料用の穀物を輸入しているが、アメリカの穀物についての正確な情報は同社と全農が持っている。
 地球が狭くなったせいで、生鮮の野菜までが世界の各国から入っている。業務用の冷凍食品は価格差が大きくほとんど輸入品に市場を押えられている。
 国産の農産物は全国から集荷をしても端境期ができるし、日本では栽培のできない果物もある。また、品質、価格でどうしても国産では条件にあわない場合は抱き合わせをして販売をすることも必要となる。
 輸入品を取扱うのは利益を上げるためではなく、情報を正確に産地に伝え品質、価格での対策を作るのに役に立てることと、一時的な品揃え、抱き合わせのためであることをハッキリとさせ、もちろん表示は輸入品であることを明確にして取扱いをすることであれば国産品の販売力強化と矛盾をするものではないし、農家組合員にもプラスとなる。
 ところで、最大の輸入農産物は飼料の原料のトウモロコシや大豆であり、しかもWTOで日本に横槍を入れているアメリカからである。残念ながらこれがないと日本の畜産農家がやっていけない。
 組合員農家に飼料を安く、安定して供給するために全農は現地にも会社を作り、太いパイプで結んでいる。世界の穀物メジャーと言われる巨大な穀物商社に負けない実力を持っている。
 全農は、このような機能が評価されるのではないか。 (2003.6.20)


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