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論壇―風 |
「富士登山に最適の時期は、梅雨明け10日」と、地元のベテランたちは言う。太平洋高気圧の張り出しで、気象が安定し、四方の眺望もこの上なく、絶景だ。
下界の山川草木も、早春からの成長期を目いっぱい走り、モリモリと頂天に達している。人間(ひと)たちも、そのエネルギーを吸収して、心身とも一種の高揚感に包まれる。 ところが、その盛り上がった夏も、わが国では、多くの人々が、第二次大戦がらみの暗い、陰うつな記憶の映像によって、大きく割り引きされてしまう。 梅雨の間にも、「6月23日」、沖縄には「慰霊の日」が巡り来て、沖縄県民ならずとも、終戦の年(1945年)の地上戦の激しさと、おびただしい犠牲者のことを呼び起こし、「どうして、あのような勝ち目の無い戦争を始めてしまったのか」と、暫し考え込んでしまう。 「6月25日」は朝鮮戦争(1950年)の勃発した日で、すでに半世紀余も前のことだが、マスメディアの若い記者、プロデューサーたちは、敏感に反応して、資料フィルムを電波に挿(はさ)み込む。 毛沢東の新中国は、建国宣言(1949年)の翌年という不安定な時期であったにもかかわらず、北朝鮮に義勇軍を派遣し、米軍の前に立ちはだかった。「停戦」はできたが、あとは放置されたまま。昨今の「北」をめぐる米韓日中露の国際的な動きは、その跡始末でもある。 「8月15日」こそ、日本人の盛夏を暗灰色にしている最大のものであろう。韓国と北朝鮮は、この日を「光復節」とし、わが国も、すでに40年間にわたり、「全国戦没者追悼式」を、次世代へ、「戦争の経験と平和の意義」を伝えるために、「閣議決定」で続けている。 終戦の日の前には、「7月7日」に廬溝橋事件があり、「8月6日、9日」には、広島、長崎で、それぞれ「平和祈念式」が行われる。廬溝橋も、江沢民時代の「愛国主義教育」の基地化とか、わが国では村山、小泉両首相の訪問などで、近時、すっかり浮上気味。 盛夏の季節は、如上のように、わが国では、世代間で数十年前の辛苦の記憶を、授受しているときということもできる。そして、それ自体は、永遠の相に照らして好ましいことである。 問題は、特に今年の場合、懸念されることは、小泉首相の靖国神社参拝の決行により胡錦涛総書記の率いる中国の新政権との間が、突然、険悪な様相に転変してしまう恐れがないかどうか、である。 振り返ると、首相就任前には関心の薄かった小泉首相が、総裁選で、「8月15日に靖国を参拝する」と公約したのは、遺族会長を経験した橋本元首相に対する挽回策であった。 その自民党総裁選もまさに目前に再来している。「自らの信念に基づく」と首相は言うが、信念通りにことが運ぶのは、理想郷以外には考えられない。 中国の対日政策も、江沢民氏の時代から、大きく変容した。2000年の朱鎔基首相訪日時の、「日本人を歴史問題で刺激すべきでない」はその象徴。02年秋の、「善意をもって隣国に対応し、隣国を仲間と見なす」という第16回共産党大会報告は、それを路線化したものである。江沢民氏の院政は続くが、胡錦涛政権の基本哲学である。 それに何よりも、胡錦涛総書記は、1980年代前半の総書記で、かつ、対日関係を極めて重視した胡耀邦氏の一番弟子、ほとんどその生まれ代わりとさえいえる外柔内剛の政治家である。われわれの注文の内容は自ずと判然としているとえいよう。日中間は、首脳同士が気軽に、ホットラインで話し合える関係でなければならない。 (2003.7.9) |
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