◆組合員不在の大会
この秋に開かれる第23回JA全国大会に提案される協議案をめぐる組織討議が全国的な規模で行われてきた。
7月17日に、全中理事会で組織討議の集約が行われた。果たしてどの程度の組織討議が行われたのか、そして協議原案に対してどのような意見が集約されるのか注目される。
組織討議といっても都道府県中央会が組合長を、農協が青年・女性組織の幹部、組合員組織の代表などを一堂に集めて、協議案の説明をし、意見を聞くといったことは行われている。
ところが組合員や地域住民(準組合員)の意見を聞く機会をもつというのは、ほとんどない。
この期間の主要な農協広報誌に目を通してみたが、どこの農協の広報誌にも大会議案の全文はもちろん要約も掲載されていない。10月に第23回JA全国大会が開かれることや大会の協議案の項目を取り上げているのが目についた位である。
したがって大会が開かれることも組合員のほとんどは知っていない。もちろん大会が21世紀の農業・農民・農協にとって、どんな意味をもつのか、農協中央は大会にどんな議案を提出しようとしているのかを大半の組合員は知らない。これでは組合員不在の全国大会になる。
◆農政の枠組み解体
大会協議案をめぐっては、すでに本紙でも再三取り上げ、本欄でも議案の問題点を指摘しているのでここでは、大会をめぐる情勢に対する農協中央の姿勢にふれておきたい。
農協中央が、大会の準備にとりかかったころから、農業・農協攻勢が強まってきた。それは偶然ではなく、WTO農業交渉の本格化を背景に、新しく制定された食料・農業・農村基本法のもとでの農政の枠組みづくりが動き出したからだ。生産調整を含む米制度改革をはじめ農地制度の見直し、農協・農業委員会制度、卸売市場のあり方、農業改良普及員制度まで、農政の枠組みを骨抜きにする動きが表面化してきた。
そこへ、BSE(牛海綿状脳症)の発生、続いて農畜産物の偽装表示問題が相次ぎ、これらを背景に農政の後退、農協攻撃に拍車がかかる。
その象徴的なものが「食」と「農」の再生プランである。同時に株式会社の農業への進出、独禁法の農協への適用除外に反対する財界の農政・農協批判の本格化である。
一方、小泉内閣の聖域なき行革、構造改革へ、経済財政諮問会議や総合規制改革会議での論議で本格化、財界代表委員から農協改革をめぐって、過度に農協に依存した農政の体質改善、農協経済事業の抜本的な見直し、独禁法の適用除外の見直しなどが報告に盛り込まれ、一方、政府は農水省に「農協のあり方研究会」を設け、農協にとって厳しい注文をつきつけた「農協のあり方研報告書」をまとめた。
◆政府・財界の農協攻撃
「農協改革」に象徴される政府・財界の農政・農協批判は、農業・農民・農協に対する攻撃である。農産物の輸入拡大とこれをテコとした価格下落、自給率の低下、農業の担い手を40万人とすることで家族農業の切り捨てと日本農業の一層の後退をめざすものである。
財界は経済のグローバル化と世界的な長期不況の下で大企業のビジネスチャンスを拡大するための農業・農協の解体的改革を押しすすめようとするものである。特区による株式会社の農業進出などにこだわるのはそのためである。
政府財界の農業攻撃の本質を見抜き、反撃することがいま求められている。農協中央は、もっぱら受身である。大会協議案にもそうした姿勢が反映している。
第23回JA全国大会を契機に政府・財界との対決姿勢を堅持すべきである。
(2003.7.17)