| |||
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
|
シリーズ 生協―21世紀の経営構造改革−−7
コープかながわ専務・大谷信博氏に聞く |
コープかながわは、組合員は100万人を超え、総供給高1298億円(2001年3月末)は全国第4位(日生協『生協の経営統計』)、コープとうきょうに次ぐ全国的影響力を持つ生協である。しかも、創立が1946年。まさに戦後の混乱のなか、戦前の消費組合運動の伝統を引き継いだ生協である。それだけに、その21世紀改革の方向には限りない興味がある。(今野) |
今野 最初に、大手小売業ダイエーの再建計画が1月中旬、日生協・全国政策討論集会の後、まとまりました。生協として、どう思いますか。 大谷 ダイエーの再建については、「マイカルはつぶして、ダイエーは再建」ということに対して批判があります。そういう批判があることに賛同はしますが、個人的には高木社長と平山副社長には頑張って欲しいという気持ちを持っています。 今野 中内オーナー時代から変化したということですか。 大谷 中内さんは、カリスマ的にやってきましたから、高度成長期には通用したが、変化が求められる現在には通用しないことが多いということでしょう。 今野 昭和30年代の安売り哲学から始まって、日本一になり、経団連副会長に。それが今回の銀行管理下に。中内反骨・反権力は、これで変質するのではありませんか。 大谷 高度成長時代は、安売りと独占価格に対する抵抗で消費者の支持を得たと思います。また、他の小売経営者にも影響を与えたと思います。 ◆この1年間「役立つ組織になろう」と事業と活動をすすめてきた 今野 さて、この10年間の変化、みなさんの生協の変化は――。 大谷 わが生協もこの10年間、何をやってきたのか。90年代を「失われた10年」といわれていますが、わが生協の90年代も「失われた10年」の言葉で表現せざるを得ない。今、この「失われた10年」という言葉に対置して「構造改革」という言葉が氾濫していますが、構造改革とは何か?夢のない痛みだけを意味しているのか?社会的な認識を一致させるべきではないか、と思っています。 今野 ようやっとみなさんの勢いが戻ってきた。足元の改革はどうなっていますか。 大谷 1987年に長期計画をつくりました。この計画は、事業伸長計画というより、どんな生協になりたいかがテーマでした。それなのに、事業活動での実際は量的な拡大になってしまった。「もっと組合員の暮らしのお役に立つ」という提供する商品やサービスの質、経営の体質的な強化が不十分でした。結果として供給高も落とし続け、剰余も減少しました。 今野 現在進行中の改革は? 大谷 構造改革の中身は、実は「お役立ち度を改めて点検すること」だと思っています。 今野 「お役立ち」という言葉は、すでに定着しているのですか。 大谷 3年くらい前から言い続けています。組合員にもっと喜んでもらうことをやろうと。それが生協の価値を高めることだと。 今野 わかりやすい。「顧客満足度」論とは違うようですね。組合員はオーナーであって、顧客ではない。「お役立ち」とはいいですね。 大谷 この考えは1987年につくった長期計画にもあったんです。この長期計画以前は、「組合員主権」という考えで、売れる・売れないも組合員の問題。利益が出る・出ないも組合員の問題とも言っていました。 今野 接客サービスという概念との関係は? 大谷 接客というと、組合員は商品を売る対象としてのお客様になります。生協の場合は組合員をお客様という認識よりもコープみやざきで表現しているように、「オーナー」という認識が良いと思います。 今野 昨年の総代会で、大型店の典型的な問題として城山店の赤字が問題になりました。これは解決しつつありますか。 大谷 城山店は年間供給高が11億円で大きな赤字店舗でした。年商11億円では、経費を減らして黒字にできるレベルではありません。約1年間、組合員に役立つことを中心に対策を打ってきました。その結果、組合員の支持を広げ、年商15億円に近づいています。まだ、黒字には遠いですが、中期的な見通しはついてきました。 今野 でも1キロ先にAコープ城山店(愛称・さざん)があります。コープとJAとの協同組合店舗同士らしい企画提携をすすめるべきだと言ってきたのですが、どうですか。 大谷 提携の気持ちはずうっと持っています。地元にそれぞれの機能が協同してお役に立ちたいという考えは変わりません。今は協同の取り組みはないが、いずれやれればと思っています。 ◆事業連合はどうなる 今野 今回の生協の政策討論集会にも、事業連合見直しがありますね。みなさんのユーコープと首都圏北半分のコープネット。さらにコープネット事業連合と日生協が一緒になって全国商品の共同開発をやろうという部分もあります。 大谷 日生協の場での共同開発は積極的にすすめたいと思っています。しかし、すべてのコープ商品を日生協に集中しようとは思っていません。それはユ−コープエリアでロットをまとめれば共同開発と変わらないか有利な場合があるからです。 ◆社会的なポジションは 今野 さて、食品衛生法改正運動を含めて、これからの社会活動をお聞きしたいのですが。スーパーと違って、厚生労働省が生協対応ですから。 大谷 食品衛生法の改正は、われわれ生協の働きかけが大きく影響し、社会的な生協の価値を発揮したひとつだと思っています。 今野 最後に、全国各地農業・農協へのメッセージを。 大谷 なんといっても、昨年全農の協力を得て、青果物のセットセンターを設置することができたこと。全農が、野菜の鮮度、価格対応など、一層努力してもらったことを評価したい。 今野 10年前の提携事業がゴタゴタになった時、私は現役だったから、今回の前進はうれしいですね。そこで、協同組合間提携という国際原則との関連ではどうですか。かつてこれが全国モデルでしたから。 大谷 まず県内、地域で実際の事業で関係を深めることが大切です。今、神奈川県内の45店舗くらいで地元産の野菜を扱っています。店舗によっては青果物の構成比で地元産が10%になってきました。鮮度が良いから組合員に支持されています。これこそ組合員の目に見える提携です。もっと伸ばしていきたい。経済連や単位農協もここにもっと目を向けて欲しいですね。 |