シリーズ この人に聞く 参議院選挙・農政の焦点――4 |
|
|||
「食料、農業問題は日本の危機的な状況の一つ」と主張する日本共産党は、自給率向上を最大の農政課題と捉え、無秩序な輸入に歯止めをかけることや、生産者の経営を守る価格保障政策の充実が必要だと主張する。そのために今後本格化するWTO農業交渉では、国際的な連携のもとでWTO協定の改訂を実現すべきとの考えだ。同党衆議院議員の中林よし子氏に聞いた。 −−農産物価格が下落しています。とくに米価下落についてはどう考えていますか。 「WTO農業協定に身の丈を合わせ、価格保障を取り払うことにした新食糧法の施行、そしてその総仕上げとしての新基本法の成立、この流れとミニマム・アクセス米が原因だと思います。 −−稲作政策の転換は、市場原理の導入というこの間の農業政策の方向を象徴するものだったと思います。しかし、それも価格下落が続き今は経営所得安定対策が検討されていますね。 「このままでは日本から農業がなくなってしまうという危機感が自民党に新しい所得保障政策を考えさせたとは思います。ただ、その中身は過去3年平均をもとに一定割合を補てんするということのようですから、自分たちが破綻を認めた方式を追認するわけで、これはいただけません。 −−施策を担い手に集中するというのは必ず争点の一つになりますね。その点も含めどのような政策が必要と考えますか。 「農家の大多数が展望をもって生産に励めるようにすべきです。また、根本に触れないで対症療法的な施策をしても一層矛盾が拡大するということです。その根本的な問題とは、輸入を認めてしまっていること。それから米も含めてすべての農産物を市場原理に委ねていることです。そのいちばん基本を変えなければならないと考えています」 −−そうすると米政策ではもう一度価格政策を実施することが必要だということでしょうか。 「私たちは米の自由化の際、政府は最低でも60kg2万円で300万t買い上げるべきだと緊急提言し、備蓄も200万tは必要だと主張しました。米価の下支えがあれば自主流通米価格も上がっていくでしょう。今はさらに自主流通米価格は下がっていますが、せめて1万8500円ぐらいに入札の下限価格をし、これを守るために政府の買い支えも行われるべきです。やはり米の価格保障が今の農家の経営基盤を支えるうえではかけがえのない施策だと思いますね」 −−野菜についてはセーフガードが発動されました。 「これは非常に意義があると思っています。今までは日本は何でもかんでも輸入する国なんだというのが政府の姿勢だったわけですね。自由貿易、これは絶対に崩さないと。 −−一方、この問題は開発輸入にも原因がありますね。政治としてはどう対応しますか。 「日本政府もそこにメスを入れるべきです。たとえば、外為法にも国内産業に影響を及ぼすようなことがあればそれを制限するという条項がありますが、これまで日本は一度もその条項を使っていません。ですから、この規定などを使って農業に限らず繊維分野などの開発輸入の問題を、まず国内問題として解決していくことも重要です。 開発輸入規制ができればその時点で中国でも韓国でもそれぞれ農業生産の正しい方向を考えていただけるのではないか」 −−ところで、新基本法と基本計画については共産党はどう評価していますか。 「私たちは新基本法に対案を示し唯一反対した政党です。今、食料と農業に求められているのは自給率の向上であり、6割を外国農産物に頼っているのは危機的な状況です。ですから、自給率向上に本当に役立つ基本法でなければならないと思ったわけですが、私たちが反対したのは、まず自給率の目標値が書き込まれなかったこと、一定の輸入を食料供給のための義務という位置づけにしたこと、価格保障を一切なくして市場原理を導入したこと、株式会社の参入、家族経営の軽視などの問題があったからです。 −−今の新基本法をつくる枠組みとしてもWTO協定は影響を持ったと思いますが、今後の農業交渉では何を課題にしてどう主張していくべきでしょうか。 「政府が出した次期交渉に対する基本施策とは、今のWTOの枠組みは是認し、そのなかで若干自分たちの主張を入れていくんだというものですね。これでは日本農業は守れないと思うんです。 |