|
||||
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
JA米で信頼される産地づくりを−2 |
||||
座談会
「JA米」はJAグループ結集のためのブランド
|
||||
|
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
JAグループ米穀事業の今後の大きな柱となるのが「JA米」への取り組みである。銘柄が確認された種子により栽培基準どおりに生産され、栽培履歴記帳も行うなど、このJA米は安全・安心を確保した米を提供するというJAグループの優位性を発揮するものと期待されている。 取り組みは16年産から各地で本格化する。そこで座談会で今後の課題などを探った。焦点となったのは生産者、JA役職員の意識、「制度が変わったからJA米に取り組むのではない。安全・安心の確保は当然のことと受け止めるべき」、「JA米は全国の産地、JAグループ結集のためのブランド」といった、現場で推進するためのキーワードが随所で語られた。 |
◆多様化する米へのニーズに応える
まず最初にそれぞれの現場で感じている米をめぐる状況の最近の変化についてお話いただけますか。 千葉 20年ほど前、野菜担当の営農指導員でしたが、当時、そのうち米も野菜のようになると思うという話をしたことがあったんですが、まさにそれが現実になってきたなと率直に感じています。そのころ、たとえばスイートコーンはピーターコーンじゃなきゃだめだとか、野菜でも品種での差別化ではなくてさらにそれに何かを加えないと受け入れられない状況でしたが、今は米も同じような感じです。 大林 最近、米卸や外食産業、生協の米担当者と話をする機会がありましたが、それぞれ産地に対する要望が違っていました。たとえば、外食産業は簡単にいえば安い米を何とか供給できないかということでしたし、生協はやはり安全・安心なものを会員に供給したい、そして大手米卸は値段はそこそこで大量に供給してほしい、ということでした。同じ米でもこれだけ要求が違うということに、米流通の状況が凝縮されていると痛感しました。 北出 米に対する要望が非常に多様になってきているなかで、生産者にもその意識が浸透しつつあるということですね。そういうなかでJA米の取り組みを進めていくわけですが、JA米とは何か、現場に改めてきちんと伝えられる必要があると思います。 ◆「JA米」で独自性・優位性の発揮を
五十嵐 JA米には3つの要件があります。一つは栽培基準に基づく栽培をして、栽培履歴記帳が行われその内容が確認されていることです。もうひとつは、種子更新100%です。その意味は銘柄が確認できた種子ということですから、DNA鑑定で銘柄が確認されていればいいということでもあります。それから、当然ですが登録検査機関による農産物検査を受けるということですね。 北出 JA米は独自性、優位性をもった米だというお話でしたが、生産者の方々にはどう認識されていますか。 千葉 まだ地域のなかで温度差はあるかもしれませんが、食の安全・安心の確保は、絶対条件、最低条件だという大きな流れは間違いなく現場に浸透していますね。 大林 われわれのJAでも15年産米から約8000人の生産者全員で栽培履歴記帳に取り組むことを目標にしました。また、JAとして独自に農薬や肥料の栽培ガイドラインも設定し、そのガイドラインを守ってくださいよという呼びかけもして集落座談会などで推進してきました。 ◆生産者に浸透する「安全・安心」の確保
五十嵐 すでにJA栗っこやJAグリーン近江のように15年産からまずは生産履歴記帳に取り組もうといった先取りしている地域もありますが、率直に言ってまだ取り組むという方針も決めていないという地域もあります。 北出 みなさんのお話を伺っていると、JA米を確立していく基礎というものは現場に存在としていると感じられます。そこで問題は今後どういう運動を打ち出していくかだと思います。16年産の具体的な推進方法についてお聞かせください。 大林 推進方法は昨年も全地域を対象にしていますから今年も同様です。やはり取り組むのであればJAあげて行わなければ値打ちがないと考えています。JAの取り組みとして、いわば「JAの売りをつくる」ということの一つですから、地域や銘柄を限定しないで全地域、全銘柄を対象にしてJAグリーン近江から出荷される米は、すべてJA米です、という方向にするということです。 千葉 管内は10町村あってJAは8支店ありますが、私たちも全地域、全銘柄、全生産者を対象に栽培履歴記帳を進めます。 ◆「制度が変わったから」取り組むのではない
大林 われわれは1職員あたり20〜30戸ほど毎月1回訪問することになっていますから、栽培履歴については昨年は栽培期間中3回、確認をしました。訪問したついでに栽培履歴を見せてもらい、記入していなかったら書いてもらうように呼びかける。また、きちんと記帳されていたら職員が確認印を押すという欄もつくりました。 北出 職員の定期的な訪問を栽培履歴記帳の確認にするというのはいいシステムですね。自分たちの力で売れる米を作っていこうということですから、JA米の取り組みも地域にあった対応をしていくということが大事でしょうね。 千葉 大事なのは、米の流通制度が変わるからJA米の取り組みをするのではなく、食の安全・安心の確保のためにJA米に取り組むんだという認識だと思います。 ◆地域に応じた米づくりも進める 北出 ところで、JAグリーン近江では、管内の自然環境にかなり違いがあり米の質も異なるようですね。それぞれの地域によって米づくりも変えていこうということも取り組みのなかにあるわけですか。 大林 そうです。大きく3つ、琵琶湖に近い地帯、山間地に近い地帯、そしてその中間地帯に分けて考えることにしています。 ◆高まるJA検査員への期待 千葉 宮城県では農産物検査員が生産履歴記帳の確認の仕事を兼務しているJAもあるんですね。検査員の仕事は米だけでなく麦も大豆もありますが、ずっと検査の仕事があるわけではない。では、検査の仕事がない期間に何をしたらいいかということから考えたわけです。私のJAでも業務が重複しているのが実態です。 五十嵐 農産物検査については国が民間に任せるという方針を打ち出して、JAによる検査を認めたわけですから、言ってみればJAは信頼されているわけです。その信頼が保たれるような検査が大切だと思いますが、検査員の方がJA米の確認もするというのは大きな意味があると思います。 千葉 どう生産されたかが分かったうえで検査されるのはこれまでになかったことだと思いますね。ですから、JA米の取り組みにJA検査員もきちんと関わることで非常に強力な体制になるんじゃないかと思います。 ◆課題は種子更新率100% 北出 さて、JA米の要件のひとつである種子更新についてはどうでしょうか。 千葉 管内2か所に採取ほ場がありますが、そこから供給する種子で間に合う見込みです。この問題にも16年産から全量、全域で取り組む方針です。一部では自家採取という生産者もいますが、その場合にはDNA鑑定をして銘柄を確認することにしており、地域全体で全量種子更新しましょうということは周知されていると思います。 大林 われわれのJAでは種子更新が実はいちばん大きな問題だと思っています。現在の種子更新率は65%程度。東北にくらべると低いですね。しかし、県内では100%種子を供給できないという実態です。JA管内にも採種ほ場がありますが、管内全体をまかなえる規模ではありません。ですから、100%という目標を掲げるには採種ほ場の整備からスタートしなければなりません。県内で全量確保する体制をつくることが先決です。 五十嵐 種子更新率の全国平均は約70%です。更新率が低い地域にとっては急に100%に、といわれても確かに採種ほ場の問題があると思いますから、まずわれわれとしては供給体制の整備が課題だと思っています。 千葉 たとえば、宮城ではある地域で種子が不足しているという話があれば、すぐに私たちのJA管内で転用種子として種子を確保してその地域に供給するという体制があります。転用種子でもDNA鑑定して銘柄に間違いがないということが証明されればいいわけですから。まず転用種子を確保する体制整備も各地で必要なんじゃないかと思いますね。 五十嵐 そうですね。そういう取り組みも視野に入れながら種子更新の問題に対応していきたいと思います。現場では今年は間にあわないけれども、17年産では種子更新100%をということで、各地で種子の手配が増えているようですから今後はもっと進むと思います。 ◆「JA米」は全国共同販売が基本 北出 この種子更新という問題は、JA米の取り組みを掲げてようやく第一歩を踏み出したということのようですね。 五十嵐 経済事業改革のなかでJAの直接販売の拡大という方向が示されていますから、そうした取り組みが米でもあってしかるべきだとは思います。 北出 それでは最後にJA米の取り組みを進めるにあたってのお考えを改めてお聞かせください。 ◆消費者にまで「JA米」浸透させよう 大林 やはり消費者が求めていることは食の安全・安心だと思います。なかでも安心が重要で安心できるものをどういうシステムで届けるかがいちばん大事だと思いますし、消費者に目に見える形でアピールできることになると思います。そこに全国あげて強力に取り組む必要があると思いますし、JAグリーン近江でも100%JA米となるようがんばっていきたいと思います。 千葉 ある実需者から物語のある米がほしい、そして顔の見える米がほしいということを言われたことがあります。キーワードは安全・安心で、さらにできれば顔を見せたいということだと思います。そのためには栽培履歴も必要だということになると思います。そこでわれわれとしていちばん課題なのは全農、JA、そしてJAの支所レベル、生産者までこの取り組みに温度差があってはいけない。そこをどうなくしていくかということだと思いますね。 五十嵐 われわれの役割は生産者と消費者との橋渡し役だと思いますから、生産者の方々が一生懸命作った米を届けるというのがこのJA米の取り組みでもあると思います。 北出 ありがとうございました。
(2004.3.29)
|
特集企画 | 検証・時の話題 | 論説 | ニュース | アグリビジネス情報 | 新製品情報 | man・人・woman 催しもの | 人事速報 | 訃報 | シリーズ | コメ関連情報 | 農薬関連情報 |
||
社団法人 農協協会 | ||
|