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シリーズ 食糧法改正とJAグループの米改革 |
◆生産調整への不参加者増の懸念
昨年末に出た「米政策改革大綱」のなかで、生産者にとって最も大きな関心事は次の点であろう。当面はともかく、生産調整の配分を20年度以降には農業者・農協等で実施することになる。その場合、生産調整参加者に対するよほどの補償措置がないかぎり、実質的には生産調整の廃止につながり供給過剰による価格暴落がおこると予想される。また、生産調整参加者への助成措置として「産地づくり対策」や「米価下落影響緩和対策」、さらに、一定規模の認定農業者や集落営農に対しては、「担い手経営安定対策」による価格補償の上乗せが用意されている。ただし、多数を占める零細兼業農家に対しては助成水準が低いため、上述で懸念されるように生産調整の不参加者が大量に生じるかもしれない。 ◆経営体質の転換で所得確保はかれるか この新しいコメ政策改革について、米主産地の新潟県の反応や県下の実情に即してコメントしてみたい。新潟県の場合、平成15年度の生産調整のガイドラインは生産数量で57万8000トン、作付け面積で10万8000ha、生産調整目標面積では4万9000haになる。稲作に偏り、北海道に次ぐ米生産規模の新潟県農業にとって、政策転換の影響はとりわけ大きい。 ◆独自の営農計画立案に不安の声も ところで、新潟県にとっても、新たな助成対策の補償水準が大きな関心事である。特に「産地づくり対策」に関係することになったが、新潟県ではたまたま県農政の優先課題として、13年度から「地域農業システムづくり運動」に取り組んでいる。「運動」の趣旨は、これまでの行政主導的な補助金農政の弊害を反省し、農家及び地域住民、関係機関の主体的な立場から、地域農業の課題の明確化や営農プランづくりを支援しようとするものである。今回の「産地づくり対策」は、この「システムづくり運動」の追い風となる。 ◆計画外販売農家は生産調整に無関心 検討会ではまた、生産者・農協主体の生産調整方法への移行に対しても疑問が出された。もともと、生産調整配分の責任やその実務から解放されたいという市町村は多い。かつて、特定農家に対する青刈り助成に対して、市議会で追及されたある農林課長から、「もうこんなことまでして生産調整なんぞやりたくない」という本音を聞かされたことがある。ただし、「産地づくり推進交付金」の助成条件が生産調整目標の達成であれば、結局は従来通り市町村が調整配分推進の主役を担わざるを得ない。 ◆稲作の担い手の8割が兼業農家 魚沼で20haの水田を直営し、周辺農家からも集荷して米の独自販売をしているある農業法人は、魚沼米に対する高い市場評価から、生産調整撤廃以後の経営にも大きな自信を持っているという。他方、蒲原平野で酪農との複合で稲作経営を規模拡大してきた農家(法人)は、器械判定による高食味値のコシヒカリを魚沼米並の高単価で都市部の高額所得者に直接販売している。そのため、有利な販売ルートを確保している条件下で、一般市場米価の低落による離農増大は規模拡大のチャンスと見なす。 ◆経営安定対策の「対象」に左右される将来 問題は、生産調整参加によって経営を維持できるような助成措置が用意されるかどうかである。現行でも3割近い減反は、転作助成による所得補填があっても低米価の下で大きな減収を強いている。このような状況に加えて、さらなる米価下落は稲作上層農家の経営にとどめを刺すであろう。5ha以上層への県アンケート調査結果によれば、稲作撤退の下限価格は1万5〜6000円という回答が最も多かった。この価格水準は、今後の供給過剰の大きさによっては、新潟米といえどもあり得ない事態ではない。 |