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『広辞苑』 口蹄疫の記述変更を検討
 −農水省が「人にも感染」を削除要求 (5/18)


 人間には感染しないとされている口蹄疫について、複数の国語辞典に「人にも感染することがある」などと記載されていることが分かった。このため5月18日、畜産物の風評被害につながりかねないため、玉沢農林水産大臣は国会で「書き直してもらうことは 当然の仕事」と答弁した。また、この件について同日、高木勇樹事務次官は定例会見で「学問上、厳密にいえばきわめて特殊な状況下でのみ起こり得るということ。ウイルスを人体 に意図的に注射するというような特殊な状況」と話し、社会的にも混乱を生じると判断、 4月18日 に岩波書店の『広辞苑』編集部に畜産局から口答でその記述を削除するよう依頼していたことを明らかにした。
 同編集部は専門家の意見を聞いて次の機会に訂正を検討したいと回答したという。

●『広辞苑』編集部の話
 農水省からは、人への感染率は低く感染したとしても軽微な症状であり専門辞典では ないので取り立てて書くのはどうか、と指摘された。一理あると受けとめ専門家と相談することにした。検討の時期ははっきり申し上げられないが重大な事態になれば、新版改訂のときではなく、現在(5版)のものを増刷する時期に検討することになるかもしれない。

 同編集部によると広辞苑に「口蹄疫」の項目が掲載されていたのは、1969年発行の第2版から 。それ以来、最新の5版まで「人にも感染することがある」という記述も含め変更されていないという。第5版は98年11月に発行された。
 口蹄疫については、厚生省も過去に食肉、牛肉を原因とした感染事例報告はなく、公衆衛生上の問題はないことを確認する文書を出している。


 
出版社別 国語辞典での「口蹄疫」の記述
岩波書店 『広辞苑』 家畜法定伝染病の一。有蹄類、特に牛・豚・羊などの急性疾患。病原体はウイルス。感染獣は発熱・流涎(りゅうぜん)し、口腔粘膜・蹄部皮膚などに多くの水疱を生じる。人にも感染することがある。
学研 『国語大辞典』 記述なし
角川書店 『国語大辞典』 記述なし
講談社 『日本語大辞典』 ウシ・ブタ・ヒツジなどがかかるウイルス性熱性伝染病。口の粘膜やひづめの間に水疱(すいほう)ができ、乳牛は乳を出さなくなる。伝染力は強いが死亡率は低い。家畜法定伝染病。
foot and mouth disease
三省堂 『大辞林』 ウシ・ブタ・ヒツジなどの偶蹄類が感染するウイルス性の家畜法定伝染病。発熱・流涎(りゅうぜん)とともに多数の水疱(すいほう)が生じる。人間に感染することもある。
小学館 『国語大辞典』 口粘膜や蹄の間の皮膚などに水疱を生じる家畜の法定伝染病。牛、羊、山羊、豚などの偶蹄類を犯すウイルスを病原体とし、人間に感染する場合もある。
小学館 『大辞泉』 家畜の法定伝染病の一。ウイルスの感染により、牛・羊・豚・ヤギなどがかかり、口腔の粘膜やひづめの間の皮膚などに水疱が生じる。人間に感染することがある。


 

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