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 平成12年における
 水田営農対策の課題と対応方向

   JA全中 食料・農業対策部次長 冨士 重夫



● 水田営農対策の課題


◆計画上回る在庫の増大

 12RYの需給状況は、政府米との協調販売のもとで、自主流通米の販売は比較的順調に推移しているといえるが、政府米の販売は極端に不振であり、需給計画を大幅に下回る水準で推移しており、こうした状況を踏まえると12RY末(12年10月末)在庫は、基本計画の219万トンを35万〜50万トン上回る255〜270万トン程度となることが予想される。

 生産調整を96万3千ヘクタール実施しながら、こうした計画を上回る予期せぬ在庫増大の要因としては、(1)10年産米の11RY販売予定の12RYへの繰越し等により、流通在庫が積み増しされたこと、(2)11年産米の新米早食いの減少により、11年産米の販売が12RYへずれこんだこと、(3)計画外流通米出回り量が増加したことなどが考えられ、米の需要量の大幅減少などの構造的要因は小さく、主として流通上の要因による12RYの事情ではないかと考えられる。

 いずれにしろ、12RY末の在庫が計画より大幅に増大したこと、政府米の売却不振で期末までに25万トン以上売れなければ、備蓄運営ルールにより12年産の政府買入れは、ゼロとなることを併せて考えると、12年産計画流通米全量を自主流通で、250万トンを越える在庫をバックに販売して行くこととなり、12年産米の価格状況は大変厳しいことが予想される。

◆需要に応じた米の計画的生産

 昨年の「土地利用型農業活性化大綱」の決定に基づき、産地毎の需要と価格・販売動向等に基づく米の計画的な生産に取組むため生産調整目標面積ではなく、米の生産数量に作付面積に関するガイドラインを配分することになった。この配分方法については、前年産の面積を基礎としたうえで、価格・販売・計画出荷の動向等を考慮して行うこととなり、生産者団体の意向を取りまとめることになった。


● 対応方向の基本的考え方


◆土地利用型農業定着化対策の確立

 自給率向上に向け、生産努力目標を実現して行くためには、米以外の麦、大豆等も含めた水田における地域ごとの水田農業振興計画を策定し、ニーズに対応した生産・販売の実践に取り組む必要がある。
 そのためには、地域農業を支える多様な担い手の育成確保、これを支援する対策や、農地の利用調整の推進、共同利用施設や機械、土地基盤整備などの対策の充実強化が必要。

 また、水田における麦、大豆の定着化対策として、麦においては、麦作経営安定資金、良品質麦支援対策、入札による販売価格の安定をはかる必要があるし、大豆についても、輸入大豆との競合の中で、販売価格水準が心配であり、新たな大豆交付金、大豆作経営安定対策の充実・強化が必要となる。

◆需給改善に向けた対策

 12RY計画を上回る在庫増大分については、政府の支援とJAグループの取り組みにより在庫処理対策をやる必要がある。また、11年産自主流通米の在庫が発生した場合は、その在庫対策も必要となる。
 一方、在庫処理対策をやるとしても、需給の大幅緩和がなおつづく中で、生産調整面積をどうするかを検討する必要がある。

 現行96万3千ヘクタールの緩和はなく、むしろ、自主流通米の価格と需給の安定を考えると生産調整面積の強化も検討テーマとなりうるし、需給事情からすれば少なくとも現行面積に継続して取り組むことが必要になるのではないかと考えられる。
 また、12年産の作況によっては、昨年前倒し実施した、豊作分を主食以外で別途処理することに取り組む必要が出てくる。その際、豊作の程度と1500円基金の財源状況、政府の支援等をふまえ、具体的水準を検討する必要がある。

◆ガイドライン配分

 ネガからポジへの配分となること、またこれからは各県の販売残の処理リスクが各県ごとになり、在庫の金倉、新古格差等の負担は結果として農家の負担、ひいては所得の減少となる実態をふまえ、需要に応じた米の計画的生産に取り組む必要があるといえる。
 面積の基礎は、生産調整面積のこれまでの歴史的積み重ねを尊重せざるをえず、不公平不満があるが、現在の面積を前提とせざるを得ないのではないかと考える。その上で配分方法は、大綱にあるように、価格・販売・計画出荷の動向を要素にとり、透明、公平性の観点からルールを設定する必要がある。ただし規模や営農上の配慮なども十分考慮する必要がある。

 13年産ガイドラインの具体的な適用については、生産調整面積の変動がない場合は、生産者の理解や、組織的混乱、計画流通米集荷への影響等から実施すべきでないとする考え方があるが、米を取りまく環境変化、シグナルを産地に発信する観点から、面積変動がない場合でも適用実施して行くことが基本になるのではないかと考える。

 ただし、実施する前提がキチンと確保できなければ、到底困難といえる。前提とする対策としては(1)政府米買入れによる各県の在庫対策、(2)稲経の充実・強化対策、(3)麦・大豆対策等の充実・強化、(4)行政との推進体制の整備等があげられる。このような適用実施の円滑対策が総合的に確保することが必須条件といえる。

◆WTO交渉含めたMA米対策

 現行MA米については、主食として出回る割合が高いSBS米の拡大をさせない対策が必要であり、今後のWTO交渉における我が国の交渉提案に対し、キチンとした関税も含めたMA米に対する措置を盛り込むことが必要である。

◆円滑な集荷・流通対策

 政府米の販米凍結など自主流通米と政府米の協調販売の継続や、計画流通米の集荷対策、精米表示適正化の対策が必要。

◆米の消費拡大対策

 「食生活指針」に即した食生活の改善や朝ごはん推進、米飯給食への取り組みを通じた対策の強化が必要である。

◆検査実施の民営化の支援対策

 食糧事務所の支援、機器や資材、検査員研修や体制整備などへの支援対策が必要である。


 以上のようなポイントの具体的対策のあり方や考え方について充分議論、協議を重ねながら、今秋に向けたJAグループのスタンス、対策の内容を詰めて行かなければならない。



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