「21世紀に向けて
食料・農業・農村に新しい風を」 「アジアとの共生」に熱い想い |
私は、アジアの人たちの関わりの最前線にいます。最前線というよりむしろ最末端というところでしょうか。日々、アジアからの日本への賞賛、怨嗟、批判、期待、連帯・・・の声が聞こえます。そうした声と、前回のJA全国大会で胸躍らせて聞いた「アジアとの共生」をどのように結びつけるのか、私は悩みました。 アジアは急速に経済成長を遂げたとはいえ、まだまだ貧困や飢餓、環境汚染や疫病などの悲惨な状況を目の当たりにします。洪水などの自然の大災害が頻繁に起こっています。都市には高層ビルがそびえ、人々は喧騒のなか、携帯電話、パソコンに熱中しています。しかし一方、農村で稲穂がたわわに実り、額に汗して働く生き生きとした、そして人なつっこい農民の人たちと出会うと、なにかしらほっとします。どちらもアジアの現実です。
カンボジアでは全人口の53%を占める女性の内、農村人口に占める女性の割合は65%と高いが、75%は文盲かまたほぼ文盲という状態で、その多くが貧困線上にあります。その上、女性は暴力をうけるなど非常に困難な状況にさらされてもいます。 「貧困緩和」を現在最優先する観点から、わが国は食料安全保障を重視しており、食料自給率の向上を模索していますが、そのためには、どうしても女性の力が必要です。
群馬県沢田地区は山間地帯であり、その谷あいに集落が点在し、水稲、野菜、畜産、養蚕、きのこ等を組み合わせた複合経営が多くなっています。管内には、四万温泉と沢渡温泉の2つの温泉郷があり、産業は農林業と観光業が主なものです。
薬草と漢方、そして人とのふれあい空間をテーマにした薬王館ゾーンの中にある八角堂が薬王館で、漢方薬の原料の展示館となっています。設立にあたっては、中国北京中医薬大学及び中国医学科学学院薬用植物資源開発研究所の全面協力を得、その関係から、当JAと中国とのビジネススタートの面で協力活動が始まりました。 北京中医薬大学からは、副教授クラスの方々を講師として招へいし、薬剤師の資格を持つ当JA職員に講義をしていただいたり、健康食品の共同開発に携わったりしていただきました。また、当JA役職員が中国の県営食品加工工場を視察訪問した際に、日本と比べ加工技術があまりに未熟であったので、当JAに中国からの研修生を受け入れ、加工施設でジャムやジュースの製造技術習得のための3ヵ月にわたる研修を実施しました。
モンゴルでは1990年の民営化政策により、それまでの国営農場は旧農業生産組織の解体等に伴う民営化の波に巻き込まれ、肥料、飼料等の入手困難、農耕機械の修繕困難、旧流通物流組織の解体、農業金融の問題等に伴う混乱などの要因によって、穀物生産は壊滅的な打撃を受ました。
急激な民営化政策によって、農業部門ばかりでなく鉱工業生産も大打撃を受けており、GDPに占める農業部門のシェアが増加し、GDPの約3割を農業部門が担うようになっています。就業構造についても同様で、農業部門の従事者は約50%に達するなど農業部門に経済のウエートが高まってきているのが現状です。 前述した経済危機や貧困問題が深刻さを呈しており、国民の基本的ニーズである食料確保が極めて重要性を帯びてきている中で、わが国の政府は食料自給を経済政策の一つの柱として、「食料の国内生産」を優先課題として位置付けています。わが国にとって農業は伝統的な基幹産業であり、その根幹を担っていた旧農協組織であるネグデルを改変し、新たにモンゴル全国農協連合会(NAMAC)を1992年に発足させました。しかしながら、改革はしたものの農牧民にとって、農協組織は社会主義時代のネガティブなイメージがあり、農牧民の組合員参加率が高まらないという問題を抱えています。こうした固定観念を払拭すべく、NAMACは近年、JA全中やIDACAから農協運営や農民組織育成方法に関するノウハウを得るため、関係者を日本に派遣するなど日本の農協組織との交流を深めています。 こうした“農協づくり”への技術協力を中心にアジアの中でさらに共生の輪を広められるよう、日本JAグループのリーダーシップを期待しています。
ネパールでは急速な勢いで森林が消滅しています。私が所属している国際ボランティア団体「ラブ・グリーン・ジャパン」(LGJ)はネパールの森林破壊を回復しようとするネパール人によるNGO「ラブ・グリーン・ネパール」(LGN)とともにネパールの自然回復にわずかなりとも貢献しようと、1991年に設立されました。
この10年間で約80万本の苗木が植えられ、村人によって育てられました。この間、私たちは植林を通じてたくさんの問題に取り組んで来ました。それは学校の建設、貯水槽の建設、安全な飲み水の確保、試験植林場の設置、苗床の整備、牛の糞を発酵させてメタンガスを発生させ、それを燃料として使うバイオガスプラントの設置、有機農法への取り組みなど、単に植林にとどまらず、村の自立や村民の生活向上、つまり村おこしへと発展していきました。
JAグループとの関わりも少しずつ広がっています。パンチカール村の子どもたちは「家の光」主催の国際児童画コンクールに93年の第1回から今日まで毎年欠かさず参加していて、コンクールへの出展は子どもたちの大きな励みになっています。そして、今年1月、家の光の「地上」が主催した「アジア交流の旅2000」がネパールを訪れ、パンチカール村での私たちの活動を視察しながら、農民と交流を図りました。 今、JAグループはアジアとの共生をスローガンに掲げて、アジアの農民との連帯と国際的貢献を模索しています。私たちの小さな経験から思うことは、JAグループの歴史と経験とノウハウはネパールはもちろんのこと、アジアやその他の発展途上国の農民の自立と生活向上にとても大きな役割を果たすことができるということです。私たちの活動へのJAグループの関心や支援が広がることを期待しています。
平成8年度から年1〜2回の割合で、イダカ(IDACA)研修員の山口県現地研修を受け入れています。引き受けた当初は、2年間だけの予定でしたが、イダカからのリクエストにより、現在まで多くの研修を受け入れています。
買い物好きはどこも同じようで、観光地に行く度に、バスを少し待たせるようになってしまいます。ある時、研修員の一人が足が痛いというので靴のディスカウント店に寄ったときなどは、日本人の客は誰もいない店内で外国人ばかりと、何とも異様な感じでしたが、ほとんどの人がお土産に2〜3足買っていたのには、びっくりでした。 国際化時代ということで、世界の出来事は瞬時に駆けめぐり、外国との交流も盛んになっています。21世紀を迎え、JA全中では「農」と「共生」の世紀づくりに向けて取り組みを進めようとしていますが、こうした研修の受け入れは、お互いの相互理解を進め、協同組合組織発展のためにも、益々重要になってくると思います。 見知らぬ土地で、風土、文化、人情に触れられることは素晴らしいことであり、それを、遠い異国から来られた人たちに味わっていただくことが、地元の務めであるという思いで、これからもイダカ現地研修のコーディネーターを行いたいと考えています。
マレーシア政府は1999年の第3次国家農業開発計画の中に、新食糧政策として「国内食料自給率向上計画」を明確に謳いました。その理由は、近年の食料輸入増加による国家予算支出への負担増や1997年に起きた経済危機によりマレーシア経済が圧迫されてきていることに起因しています。そのため、食料自給率向上を目指した持続的な食料生産を図ることにより、それまでの工業化にシフトした政策から農業部門の充実、特に、食料生産部門の活性化によるバランスのとれた経済発展を打ち出したところです。次の5つの柱は農業開発計画に明記された食料安全保障確立のための具体的振興方策です。 @ 食料生産向上を目指した政府保有地の開発及び利用。 こうした政策を通じ、政府は増大する食料輸入を減らすことや農民の貧困対策として、「国内食料生産の自給率向上」を国家政策として重要な位置付けを行っています。こうした観点から、私は『農産物貿易自由化』は国内食料安全保障が脅かされない程度に行われることが望ましいと考えています。その意味で、今年8月に横浜で開催された食料安全保障に関するアジア・太平洋FAO-NGO/CSO地域会議は大変意義があり、今後の継続を強く期待するとともにWTOへ積極的に提言するよう希望します。 |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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