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「稲作経営の安定とJAグループの米穀事業改革
 

米消費拡大を考える
鮮度のよい情報で、消費者と生産者のネットワークづくりを

・・・ お米ギャラリー銀座から

 日本人の主食であるコメを取巻く情勢はあいかわらず厳しく、明るい話題が少ない。やや上向いたと思われた消費も、6、7月と再び前年同月対比マイナスとなったが、消費を拡大するためには、どうすればいいのか。JA全中の米消費拡大・食生活対策室の久保信春室長に聞くとともに、コメのアンテナショップ・お米ギャラリー銀座に取材した。


◆20〜30歳代が消費拡大のキーマン

「お米ギャラリー銀座」
の正面入口

 日本人の主食であるおコメの消費量が、毎年減少してきている。食糧庁が毎月発表する「米の消費動向調査」によると、全世帯統計で平成8年4月以降、49ヶ月間前年同月比でマイナスを記録。今年の4月に久しぶりに0.4%のプラスとなり、5月も1.3%プラスとなったので、「コメの消費がやっと回復したか」と、関係者の期待が高まったが、6月マイナス0.5%、7月マイナス1.2%と再びマイナスとなり、依然、消費減退傾向に歯止めがかかっていないのが現状だ(図1)。

 8月に発表された食糧庁の「平成11年度第2回食糧モニター定期調査」によると、図2のように女性を中心に若年層ほどおコメは「太る」というイメージをもっている。最近は、ご飯を中心とした日本食が健康に良いと、欧米でも評価されてきているが、日本の若い女性層にはまだ十分浸透していないといえる。
 実際に消費している量をみても20〜29歳女性の883g、15〜19歳女性の954gと図2のデータを裏付けている(図3参照)。また世帯主の年齢階層別にみた家族1人当たり消費量でも、世帯主の年齢が20〜29歳918g、30〜39歳906gと若年世帯の消費量が少なくなっている。
 日本人の平均寿命からみれば、この世代の人たちはこれから50年、60年とコメの消費者となる人たちだ。また、子どものときに食べた味がその人の一生の味覚を決定するという。そうだとすれば、この世代が次の時代を担う子どもたちの食生活に大きな影響力を持っているということになる。
 こう考えてくると、20歳代、30歳代の人たちに、ご飯の良さをどう理解してもらい、どう食べてもらうかが、今後の「日本のコメ」のありようを決める鍵だということになる。

 おコメに関するさまざまな情報、コメ加工品から調理方法までを提供すると同時に、消費者のおコメに対する思いやニーズを探ろうとしているのが、JAグループのコメのアンテナショップ「お米ギャラリー」だ。
 「社会的経済的な構造から難しい面はあるけれど、コメ消費拡大の鍵を握る20〜30歳代の人たちに、日本の食文化を理解してもらえるような提案をどうしていくのか」が、お米ギャラリーの使命だと、お米ギャラリー銀座の神長暉所長。
 10月3日に東京駅とお米ギャラリー銀座で「『日本標準。新潟米コシヒカリ』宣言」を行ったJA新潟経済連の伊藤苗米穀部長は「21世紀を迎えて新しい気持ちで、消費拡大に取組もう」と県と一緒にイベントを企画したが「若い人にコメをどう理解してもらうか、どう食べてもらうか」が、今後のテーマだという。

◆「ごはん亭」が銀座の人気スポットに

繁盛している銀座の「ごはん亭」

 お米ギャラリーが銀座通りに進出して1年が経とうとしているが、いま一番の人気は、店の2階にあるおコメの本当のおいしさを食べて知ることができる「ごはん亭」だろう。この8月からは、12年産米の宮崎コシヒカリ、千葉コシヒカリ、新潟コシヒカリ、宮城ひとめぼれ、あきたこまち等を月替わりでご飯として提供している。席数は60席しかないが、昼食時には近所のOLやサラリーマンだけではなく、噂を聞いて来た人たちで列ができ、待たなければならない状況もしばしばだ。「値段も安いけれど、なにしろご飯がおいしいから、週に3日くらい通っちゃいますね」と、近所のOLがおいしそうに食べながら絶賛した「ごはん亭」は、銀座の隠れた人気スポットだ。

100種類以上ある
レシピカード

 そして、旬の野菜や食材を使った料理教室と100種類以上あるレシピカードも人気だ。料理教室はいつも満員になるというが、10月は通常の教室のほかに「収穫祭inお米ギャラリー」として「全国炊き混ぜご飯料理教室」、「ハレの日もち米クッキング」が行われた。
 レシピカードは和・洋・中華さまざまな料理が取り揃えられており、無料ということもあって、今日の献立に悩む主婦の強い味方になっている。

◆コメの情報もとめてギャラリーへ

 そしてここでは、炊飯用のコメからさまざまな米加工品も展示販売されている。そこからも、いまの消費者ニーズを確実に読み取ることができる。
 炊飯用のコメは、場所柄もあって2kg袋だが結構売れている。銀座で買わなくても住まいの近所でも買えるのではと思い聞いてみると「有名な食品スーパーだからと信用して買った銘柄米がおかしいので専門家にみてもらったら3等米がたくさん混入されていたんです。ここならそういうことがなく安心だから、面倒でも銀座で買うんですよ」という。そして「あのスーパーでは2度とおコメは買いませんし、そのとき買った銘柄米も買いません」とも。側にいた主婦も「どういうおコメを、どういう基準と値段で買えばいいのか私たちには情報もないし、分かりません」。だから、おコメに関するいろいろな情報が欲しくて、ここに来るのだという。

◆簡便性ニーズに応えるコメ加工品

 加工品でいま注目は、無洗米だ。図4のように、若い人を中心に「炊飯するのが面倒だ」という人がかなりいる。「面倒だ」という理由を聞くと「コメを研ぐこと」と答えた人が男性81%、女性88%と圧倒的に多い。そして、コメの消費を増やすためには「米飯が他の食品より、簡便で安い主食となるよう工夫すること」と27%が答えている。360g入り無洗米をいくつか買っていく女性の姿が目についたが、簡便性・利便性を求めるニーズにあっているからだろう。
 簡便性ということでは、レトルト食品のお赤飯・栗ご飯・ひじきおこわ米・とり五目なども「便利だ」と主婦に人気がある。

◆健康志向には玄米関連商品が

 もう1つのニーズは「健康」だ。とくにいま人気があるのが「玄米関連商品」だと神長所長。白米と同じように炊飯器で普通に炊ける玄米、白米と混ぜて炊ける発芽玄米から温めればすぐに食べられる各種玄米がゆ、そして玄米胚芽の粉末、玄米ふりかけ、玄米使用の菓子類など多様な玄米加工品があることに驚かされる。

 JA全農など民間4社が共同で設立した研究会社AFT研究所が、品種改良から取組み開発した低アレルゲン米「AFTライス」が話題となっているが、コメアレルギーの人を対象にしたコメ。さらに古代へのロマンを感じさせる黒米・赤米・香り米などの古代米など、新形質米も今後注目されていくだろう。
 コメの加工品分野は、消費者ニーズの多様化を考えれば、まだまだ広がっていくだろうし、コメの消費拡大を考えるときに、もっと重視されていい分野ではないだろうか。そしてそれぞれの加工品にあったコメの生産がこれからも求められていくことだろう。

 神長所長は「生産サイドの情報を消費者に伝え、消費者のニーズを生産者に伝えることで、生産者と消費者のネットワークがお米ギャラリーの存在意義だ」であり、そのために「情報の鮮度アップをしなければいけない」と考えている。
 産地の思いを直接消費者に問いかける場として、お米ギャラリーの存在価値はますます大きくなっていくのではないだろうか。  



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