「米の需給と価格安定の実現めざして」 学校給食においしいごはん |
生産者やJAが農産物を地元の学校給食に提供し、子どもたちに食と農の大切さを伝え、また、米消費拡大にも寄与する取り組みが各地で行われているが、大都市の東京でも生産者たちが地元の小学校に野菜や果樹を供給している例がある。さらに子どもたちにおいしいごはんを食べてもらおうと米どころの生産者とネットワークをつくって新米の供給に取り組んでいる。「食材がそのまま教材になる。生産者との交流も生まれ子どもたちが学ぶことも多い」と学校側も評価。生産者も「子どもたちのために作っているんだと思うと励みなる」と意欲的だ。 |
■給食の材料を子どもたち自身が収穫
東京都・保谷市の住宅に囲まれた果樹園に、数年前から授業を終えた小学生たちがときどきやってくるようになっている。次の日の給食に出される果物を子どもたち自身が収穫するためである。 「地元にも農業があるのになぜ食べてもらえないのだろうか」。
「私たち生産者が一年間に作ろうと予定している農産物を学校側に知ってもらい、そのうえで、その時々にできたものを必要な量だけ学校給食に使ってもらっています。無理して品目や量を増やさず長続きする方法がこれかな、と考えました」と本橋さんは話す。この取り組みを考えたころは市街化区域内農地の宅地並み課税が叫ばれたころだった。新しい経営の展望を模索するなかで学校給食とのつながりを思いついたという面もある。 一年を通して何らかの農産物を供給できているし、子どもたちとの交流も生まれた。注文に応じて学校に届けるだけでなく残さも回収、それを畑に還元しているというから、学校給食をきっかけに都市農業のなかで循環型農業も実現しつつあるといえる。 ■日本の食文化伝える米飯給食
平成5年には米不足をきっかけに、学校側から米の生産者も紹介してほしいと相談を持ちかけられた。そこで、本橋さんは青年部委員長時代に知り合った新潟の生産者に協力を依頼、今ではコシヒカリの新米を出来秋から翌年にかけて7校に供給するようになった。年間50俵程度の米を注文があればそのつど精米して学校に届けている。 そうしたこだわりをもつのも「子どものときに食の基礎を教えなくてはなりません。そのためにはきちっとした食材での食事が必要」という考えを持っているからだ。 ■「これは僕が刈ったお米かな」
目輝かす子どもたち 本橋さんたちのグループには、冥賀先生ら栄養士との交流から学校農園づくりに協力したり、保護者を招いての農業体験などまで活動の幅を広げる人もでてきた。 そんな取り組みの一つとして新潟での稲刈り体験参加を学級通信で呼びかけたところ、今年は一組の親子が稲刈りを手伝いに行ったという。そして新米が給食に出されると、「これは自分の刈ったお米かな」と目を輝かせてすごくうれしそうに食べた。 一方、本橋さんは「この取り組みは、大風呂敷を広げるのではなくて、ハンカチを広げるつもりでいいと思って始めた。しかし、4、5人のグループでも始めてみれば運動になる。今では新潟の米生産者と連携して都市農村交流も生まれています。JAでも都市部と農村部が提携すればもっと広がりがでてくるのではないかと思いますね」と話している。 |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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